【お急ぎの方へ☆サクッとネタバレ】Episode6 異世界オムニバスホラー3品

 今回の異世界オムニバスホラー3品(A、B、C)ですが、それぞれ独立しており、話は全く繋がっておりません。



A 『異世界へとさらわれた息子たち(全員、超美少年)を取り戻しに向かった6人の母』



 K県にて6人の男子中学生(全員超美少年)が忽然と姿を消す。

 異世界よりパ・スポートという名の白髪頭の老人がやってきて、驚愕の事実を告げる。


 6人の男子中学生たちは皆、パ・スポートがやってきた世界とはまた別の異世界にさらわれてしまっていたらしい。

 異世界が彼らをさらった理由であるが、単に男児の出生率が下がっていたため、別の世界から飛びきり美しく育った幾人かの少年を連れてくればいい、との自己中な考えによるものであった。


 長男・ハヤト(中学3年生)をさらわれてしまった母・マアコも、他の5人の少年の母親たちも、息子を取り戻しに件の異世界へと向かうことに。

 パ・スポートが操縦する船に乗り、(乗員できる人数の関係により)母親たちだけでアラビアンナイトな異世界へと到着した。


 5人の少年は、自分を迎えに来た母の胸で泣きじゃくり、母とともに元の世界に帰る以外の選択肢はないようであった。


 しかし、マアコの息子・ハヤトだけは違った。

 ハヤトだけは異世界にこのまま移住したいとの意志を示したのだ!

 「俺さ、この世界とすごく肌が合ってるんだ。なんていうのか、元の世界でなかなか入らなかった鍵穴に、ついにカチリと鍵が入ったみたいな具合でさ。俺ももう15才なんだし、俺自身で自分が生きていく世界は決めるよ。人間なんて、どの国にいても、いいや、どの世界にいても、どのみち死ぬ時は1人なんだから」と……

 ハヤトは年の割には大人びてドライな面があり、親は親、自分は自分と割り切って考えており、自分自身の選択による代償は自分自身で背負うとも。


 母6人、息子6人で笑顔で皆揃って、元の世界へと戻るはずであった。だが、元の世界へと帰還する船の中では、マアコの隣の席にだけ息子がいなかった。

 重苦しい空気へと沈みこんだ船内に、ただ1人、息子を異世界に奪われたまま取り戻すことのできなかったマアコのこらえ切れぬ嗚咽だけが響き続けた。




B 『30代独身、フツメンで今は無職の俺だけど、2つの異世界を股にかけて救世主やってんだぜ!』



 30代独身、フツメンな”俺”の語りによって、物語は展開する。

 主人公である俺は、2つの異世界を股にかけての救世主をしており、エネルギッシュで心身ともに充実した日々を送っていた。


 本来なら1つの異世界の救世主となるはずであった。

 救世主のスカウトにやってきたおばちゃん・キーコに、2つの異世界のオールカラーのパンフレットを明示され、どちらかの異世界を選ぶように言われていたのだが、どちらの世界の女の子も可愛くて美人なために選べず、俺は2つの異世界における救世主活動を掛け持ちすることをゴリ押ししたらしい。


 今、俺が掛け持ちしているのは「中華系ファンタジーな異世界」と「北欧系ファンタジーな異世界」である。

 勤めていた会社もやめて2つの異世界を行き来している俺は、元の世界には単に寝に帰るだけであった。


 ちなみに、元の世界での掃除洗濯などは全てキーコがしてくれている。もはや、俺とキーコとは熟年夫婦っぽい雰囲気も醸し出している。

 救世主活動開始から3か月経過し、上手くやれてると自負していい気になっている俺は「もう1つか2つかの異世界も救いたい」とキーコに言うも、一蹴されてしまう一幕も。


 2つのマンスリー手帳(それぞれの異世界用の手帳)を同時使用しながら、これといった問題もなく救世主活動を行っていた俺であったが、慢心からかついにとんでもないミスを犯してしまう。

 救世主活動のダブルブッキング。

 同じ日に救世主活動が重なってしまった。


 どうすればいいんだ、と俺はキーコに聞くも、キーコは今更どうにもできないと……しかも、このやり取りの際、キーコまでもが俺を愛していることが判明する!


 「どっちの世界の女も綺麗で可愛くて、30代独身&フツメンの俺をとてつもなく慕ってくれて、どっちかの救世主活動を優先して、もう一方はブッチするなんて俺にはできない。女たちに愛されし救世主たるもの、そんな薄情なことはできない」と、俺はどっちも選ぶことが出来ぬまま、物語は終わる。




C 『異世界の海賊の首領(ドン)が現代日本へと転生? そして、奴を撃った討伐隊の美しき女隊長も、同じ現代日本に転生してるんだけど!』



 私(性別はおそらく男、容姿や年齢は不明)の語りによって、物語は展開していく。

 この私とやらは、いわゆる神ではないが、世界をも超えて輪廻転生の途中にある魂の来世への願いを叶える仕事(?)をしている。


 そして、私は全ての魂の願いを叶えるというわけではなく、いわゆる”悪党”にカテゴライズされる生き様で今世を終えた魂の願いのみを叶えるというポリシーを持っている。


 「なぜだ、普通は”逆”じゃないのか?(優しく温かく愛情深く、周りの者への愛と調和を大切にしてその人生を全うした魂の願いを叶えるべきじゃないのか?)」と、問いたくなるポリシーだ。

 しかし、「今世にて愛情深く生きた者の魂は、来世においても愛情深く生きるに違いない。周りの者への愛と調和のスタイルを大幅に崩して、他人に害を与える者となる可能性は極めて低い。だからこそ、奴ら(悪党ども)の来世への希望を叶えて満たされた状態にすることで、奴らの中の悪魔の心が芽吹き出すのを事前に防ぐ。まさにこれこそ、世の中を安泰にする”鍵”である」との考えから来るポリシーであった。



 そして、今、そんな私の目の前にいる魂は、海賊の首領(ドン)として死した若き男――数多の略奪行為と殺戮行為を繰り返し、罪なき人々の返り血を”つい先ほど滅んだ肉体”に滝のごとく浴び続けてきた大悪党ジャック・シーフであった。


 奴の来世への願いであるが、なんと、奴は自分を撃った(自分の人生を終わらせた)討伐隊の女隊長ユージェニー・ポリスと同じ世界の同じ時代で、再び男と女として会わせてほしいと……


 それは復讐のためではなく、ジャック・シーフは美しきユージェニー・ポリスに惚れてしまっていたのだ。


 私はその願いを聞き入れる。

 ジャック・シーフたちが生きていた異世界ではなく、また違う異世界の日本という国にて、同じ年の同じ日に生まれ変わらせた。


 西暦2020年手前の現代日本。

 1980年代半ばに生を受けた元ジャック・シーフ(33才)と元ユージェニー・ポリス(33才)はついに再会した。

 しかし、婚活パーティーなどで平和に顔を合わせて、お付き合いが始まったわけではない。。 


 他人の家に空き巣に入ろうとしていた泥棒(シーフ)と、近隣で多発していた空き巣やひったくりの捜査中であった警察(ポリス)として。

 当然のごとく逃亡しようとした元ジャック・シーフであったが、元ユージェニー・ポリスが奴を追う。

 元ユージェニー・ポリスの背負い投げは見事に決まり、元ジャック・シーフは逮捕された。しかも、元ユージェニー・ポリスは既に既婚者であり、そのうえ子供までいたのだ。


 前世で悪党だった元ジャック・シーフは、私が願いを叶えてやったにも関わらず、今世でも悪党の道をしっかりと歩んでいた。

 結局、奴の魂の性根は全く変わっていなかったというオチに、(#゚Д゚)プンスコ怒る私であった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る