第30話:発令!オペレーション シュガール第一段階 (4)v0.0

 ダーダネルス帝国帝都まで通じる川で、数名の海兵隊員が川の中を歩きながらクリアリングを行なっている。


 『・・・クリア』


 無線越しに海兵隊員の無機質な声が聞こえる。


 「こっちもクリア・・・っと」


 マルティンも呼応するように周辺の安全確認を行う。


 「・・・よし、もうそろそろだな」


 マルティンは呟く。謎の光の発生源がもうすぐ確認できる距離まで近づいているからだ。


 『全員ナイトビジョンゴーグルを装着しろ』


 海兵隊長の命令が無線を通して周囲警戒をしながら進む海兵隊員達全員に伝わる。


 「・・・了解」


 マルティンは銃を構えた状態でヘルメットに取り付けられたナイトビジョンゴーグルを展開する。


 「・・・一面真緑だな」


 マルティンはへんなことを呟きながらクリアリングを続ける。


 『全員止まれ。敵を確認した』


 海兵隊長が静かに言う。それに呼応するように海兵隊員達も歩みを止める。


 『確認できるか?この先、だいたい100メートル先だ』 


 川の周辺に生い茂る草を手で払い、川の先を見る。


 「こちらマルティン、確認した。どうぞ」


 『敵兵は・・・だいたい十人くらいか。検問のようなものだと考えるのが妥当だな』


 海兵隊員達の目線の先には全木造の川岸に建てられた小屋と桟橋、小さな船が係留された桟橋の併設された施設が確認できる。小屋の中にはおそらく8名、桟橋の上には2名がいる。


 『どうする?敵は俺たちに気づいてないみたいだが・・・』


 海兵隊員の一人が海兵隊長に指示を仰ぐ。


 『どちらにせよ俺たちはここを通るしか道はない・・・全員、一旦岸に上がれ。陸上から攻めるぞ』


 『了解』


 海兵隊長の指示で海兵隊員達は川から上がり陸路で敵施設を取り囲むように展開する。


 「こちらマルティン、展開完了。いつでも動ける」


 無線で展開を終えたことを海兵隊長に伝える。


 『よし、間を詰めろ。確実に射撃できる距離になれば奴らを撃て。絶対に逃がすなよ』


 『・・・了解』


 海兵隊員達は見つからないよう中腰で、銃を構えた状態で徐々に小屋との距離を詰めていく。


 「隊長、そろそろ撃ちますか・・・?」


 マルティンと小屋との距離はすでに5メートルを切っている。


 『各員射撃位置についたか?』


 海兵隊長は隊員達に最終確認をする。


 『・・・よし、各員射撃開始。生きて返すな』


 パシュパシュシュシュシュッ・・・


 海兵隊長の射撃開始の合図とともに隊員達の持ったMX-8が火を噴く。サプレッサーをつけたことにより発生する独特な音が鳴り響き、それと同時に小屋に使われている木材やガラスの破損する音、人のうめき声がミックスされたものが辺りを包み込んでいく。


 『こちらラモス。桟橋の敵を全て排除した』


 ラモスはいち早く報告を行う。


 「あいつ・・・手際がいいな・・・」


 ホロサイトを覗き小屋へ向けて発砲する中呟く。


 「・・・制圧完了か?」


 ホロサイトを覗くのをやめ、小屋を凝視する。


 『小部隊河川舟艇SURC班はすぐにこっちまで来い。射撃していた隊員は小屋にいた敵の生存確認を行え。生きている奴がいたらすぐに息の根を止めろよ』


 『了解』


 海兵隊員達は銃を両手に持ち走りながら小屋へと駆け込む。


 「小屋の中は・・・ミンチよりもひでぇや」


 小屋の中には木くずや敵の血がいたるところに飛び散り、窓にはめ込まれていたガラスが散乱していた。


 「生存者は・・・いないな」


 一人ずつ脈の有無を確認しながら呟く。


 「こちらマルティン。小屋の中の敵は全て死んだ模様」


 『でかした!すぐに小部隊河川舟艇SURCへ乗り込め。新手が来る前にここを離れるぞ』


 「了解」


 マルティンは小屋から出ると、すぐそばにある桟橋に向かう。桟橋の端っこの部分には先に到着していたのか、小部隊河川舟艇SURCがすでに待機している。何人かの海兵隊員はすでに小部隊河川舟艇SURCへ乗り込んでおり、この調子だとすぐにここから出発するだろう。


 「マルティン、戻りました」


 マルティンは小部隊河川舟艇SURCに乗り込むと、中で待機していた海兵隊長に報告を行う。


 「・・・よし、もう他にはいないな?」


 海兵隊長は確認する。


 「ラモスがまだ来ていません!」


 「っくそ・・・あのバカ!」


 海兵隊長は周囲を見渡す。


 「来たか・・・」


 桟橋の上を走りながらラモスが 小部隊河川舟艇SURCへと向かってくる。


 「ま、また遅れちまった!すまねぇ!」

 

 海兵隊長はラモスの様子を見て呆れた顔で言う。


 「ったく・・・時間が命だ。頼むから遅れないでくれ」


 懇願にも似たような声で海兵隊長は言う。


 「わかってますって」


 ラモスは反省していないような声で言う。


 「本当にわかっているんだか・・・。とにかくエンジン動かせ!すぐにずらかるぞ!」


 小部隊河川舟艇SURCのエンジンが動き出す。


 「いけいけいけ!最大船速だ!」


 海兵隊長は小部隊河川舟艇SURCを操縦している海兵隊員を急かす。


 「ば、バレますって!」


 「今はとにかく離れることが重要なんだ!」


 「・・・話聞いてくださいよ!」


 小部隊河川舟艇SURCを操縦する海兵隊員は仕方ないなぁ、と言うような顔で船の速度を上げる。


 「よしよし・・・」



_1時間後



 「海兵隊長!敵帝都らしきもの、確認しました!」


 周辺がすっかり真っ暗になった中、海兵隊員が少し控えめな声で言う。


 「よし!そこらへんの川岸に着岸しろ!船の欺瞞工作を行ったのち森の中に展開するぞ!」


 『了解!』


 海兵隊隊員達の乗る2艇の小部隊河川舟艇SURCは壊れない程度の速度で川の岸へと乗り上げる。


 「よしよし!すぐに荷下ろしだ!迷彩ネットもきちんとかけておけよ!」


 海兵隊員達は迅速に行動し、作戦機材の荷下ろしを開始する。


 「間に合ってくれよ・・・」


 海兵隊長の願い通り何事もなく荷下ろしは終了。船の欺瞞工作も終了し彼らは上陸部隊司令部からの第二段階発令報告を待つこととなる。

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