第19話:森へ進軍・・・って、あれ?(3) v0.0

_上陸部隊の1つ、第四海兵隊第1小隊視点



 小隊長が敵弓兵の攻撃により落伍したこの部隊は、先ほど到着した部隊とともにわずかな木漏れ日のみが差し込むジメジメした森の深部へと進んでいる。


 「静かだな・・・」


 奥の奥まで、木、木、木。敵兵が潜んでいる様子もない。そんな中を隊員達はゆっくりと叢を掻き分けながら、ラッピード装甲車は叢を押しつぶしながら進む。


 「各員警戒を怠るなよ!」


 臨時小隊長が言う。


 「あんた、それ何回言ってんのさ?」


 隊員の一人が言う。現に彼は森に入ってから数分しか経っていないのにもかかわらず10回以上は既に似たようなことを言っている。


 「いやいや。本当にどこから出て来るかわからないでしょ?」


 バサバサバサッ


 「ッ!」


 隊員達が鳥の羽音のした方向にある草むらへ銃を向ける。


 ガサガサッ


 「・・・今何か、音がしなかったか?」


 「奇遇だな。俺もそう思う」


 その時だった。


 「うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」


 先ほど物音がした草むらから敵兵が登場した。


 「敵だ!撃てッ!」


 バババッバババッ


 隊員達の持つDm-Depredador12.7が発射した12.7ミリ弾のバースト射撃で鎧を着た伏兵であろう兵士は即死する。


 「やっぱり伏兵がいるか・・・」


 隊員が呟く。


 ヒュンッ!・・・カンッ!


 敵兵の放った弓矢が装甲車の装甲に弾かれた音が響く。


 「こりゃ面倒だぞ!」


 隊員の一人が叫ぶ。


 ガサガサガサガサッ!


 「っ!」


 途端に上陸部隊の周りに1000名はいるであろう敵兵が現れる。


 「全兵、突撃ィッ!」


 敵指揮官のものと思しき声が森に響いた瞬間、敵兵達は無謀な突撃を開始する。あるものは盾を持ち、あるものは剣を片手に距離を詰めて来る。


 「各員射撃開始ッ!接近させるなッ!」


 『了解ッ!』


 隊員達が射撃を開始する。木漏れ日程度しか入り込んでいなかった森にはマズルフラッシュが連続して発生し、アサルトライフルとは思えない大きさの銃声が響く。そんな中を隊員達は冷静に銃のトリガーを引き発砲する。その数だけ敵兵達の数は減っていき、バタバタと喋らぬ骸が量産されていく。


 「リロードッ!カバー頼む!」


 隊員の一人がリロードに入る。それをカバーするように隊員達は展開、敵に隙を見せないようにする。が、


 「そこだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 敵兵はうるさい叫び声とともに剣を目一杯振り、隊員に切りつける。


 「ッ!」


 いくら兵士達全員がボディーアーマーを着ているとはいえ、あくまで銃撃から身を守るためのものだ。切れ味が以上な剣の横からの切りつけられる衝撃に耐えることはできず一瞬で切り裂かれ、隊員は一瞬で絶命する。


 「まずいぞ!全員後退!包囲されるな!」


 敵兵達が恐れも知らず肉薄して来る。さすがに量が多い。ここは後退すべきだろう。ラッピード装甲車を盾にしながら徐々に後退を開始する。もちろんその間も射撃を絶やすことはない。


 「くそっ!弾切れだ!お前、弾持ってないか!?」


 「俺も今のマガジンで最後だ!」


 ついに弾薬を切らす者が現れる。


 「小隊長!数が多すぎます!」


 隊員の一人が射撃しながら言う。


 「そ、そうだな・・・」


 同じく銃で応戦している小隊長は考える。


 「よし!各員グレネードもとスタングレネードをプレゼントしてやれ!その間に俺たちは上陸地点まで撤退するぞ!」


 『了解!』


 「グレネードッ!」


 ピンを抜いた音とともにグレネードが投擲される。


 「こっちはスタングレネードッ!」


 バァァァァァン!


 森の中に手榴弾やスタングレネードの炸裂音、敵兵の叫びなどが入り混じる。


 「よし!各員後退後退後退!」


 その掛け声とともに第二小隊は後退を開始した。



_ダーダネルス帝国領、西端のロング・ビーチに展開する警備隊



 「司令官!やりましたね!敵軍を後退させることに成功しましたよ!」

 

 帝国兵が言う。


 「あぁ。確かに我々は勝った。今回はな。おそらく敵は次の手を講じて来る。それに第一、今回の迎撃で兵を消耗しすぎた」


 司令官は呟く。実際今回の迎撃で帝国軍は数百名もの兵士を失っており、これは防衛する側からすれば決して無視できないのだ。


 「帝都に連絡をしようにも魔導師がいない!それに仮に連絡できたとしても援軍到着まで数日はかかる!」


 「で、ですが・・・」


 「ですがもこうもないッ!・・・おそらく、次戦えば負けるだろうな。敵の使っていた鉄でできた武器。あんな物は帝国でも見たことがない。実際、我が軍の損失のほとんどがそれだ」


 司令官はため息をつくと再度語り出す。


 「まぁ、次も勝てたとしても援軍が来なければ負けるんだがな」


 司令官は、悩むのだった。


  

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