第168話 修業編11



「師匠 何しているんですか」


「この本の解読だ 貴様が見ても分からんさ」


「へぇ~ エン道具と完全通訳の指輪を作った英雄の話ですか」


「はぁ 何を言っている まさか 読めるのか」


「えっ 師匠は読めないんですか」


「凄い 智王様も読めないのに」


「うっ 読めるなら読んでくれ」


「えっ はい 2万年以上前の2人の英雄が書いた本みたいですね この本は タロウという英雄が発明したエン道具の話で そっちの本がスミスという英雄が発明した 完全通訳の指輪の話みたいですね」


「完全通訳の指輪だと こっちを先に読んでくれ」


「え~っと あっ こっちは俺には無理ですね」


「はぁ 読めないのか」


「はい こっちは無理ですね 英語で書いてます これなら日本語なので読めますよ まあ2万年前以上の英雄なら 俺の世界とは違う世界の英雄でしょうけど」


「英語 日本語という言葉で書かれているのか 英語とは何だ」


「俺がいた世界でブームになっていた言語ですよ 後10年くらいで通訳の指輪のような物が出きて 母国語の日本語のみで大丈夫になるのでブームは終わるようでしたが」


「読めないのか」


「たぶん 他の3人の英雄なら読めると思いますよ」


「んっ どうして 貴様だけが読めないんだ」


「え~っと」


「はぁ~ 馬鹿だからなのか」


「ふっふっ」


「まあ そういうことかな」


「じゃあ このエン道具についての本の内容を聞かせてくれ」


「え~っと ちょっと待ってくださいね」


・・・





「エン道具の発明で 魔道具で利益を出していた人々 そして 魔法使い達と揉めるようになってしまったと書いてますね 魔法使い達の地位が大きく下がる原因になってしまったと 魔法使いになりたりたい人達が減ってしまったそうですね 魔力がなくても 誰でもエンをセットすれば使えるエン道具の人気で魔道具は売れなくなってしまったんみたいですね」


「そうだな エン道具は誰でも使えて便利だからな 魔法使い達と魔道具で利益を出していた人達と揉めたってことか こっちの完全通訳の指輪の本の方が気になるんだが 英語っていうのか 少しも読めないのか」


「はい まったく無理ですね ここにタロウが書いたスミスの本の紹介が少しあるだけですね」


「はぁ~」


「ふっふっ じゃあ 昼食にしましょう」








完全通訳の指輪


凄い発明だと思われた


あらゆる生物と話が出来るようになる指輪


争いがなくなる可能性が出て来たと英雄と一緒に開発していた人達は喜んだのだが


・・・


全ての王達は開発を禁止した


禁忌のアイテムとして 記録を全て抹消したのだ


・・・


なぜ


・・・


すべての種族と平和になれば 素晴らしいと 最初は誰もが思った


しかし 争いがなくなるとはどういうことになるのか


・・・


安全になる


・・・


豊かになる


・・・


最初は そう思った


・・・


ゴブリンは言った 襲わないから 襲うなと 俺達の領土に入ってくるなと


・・・


家畜の豚は言った 食べないでくれと 俺達を解放してくれと 自由にしてくれと


・・・


木は言った 俺達を傷つけるのは止めてくれと


・・・


草花は言った 踏み荒らすのは止めてくれと


・・・


不都合な事実


・・・


知ってしまったのだ


・・・


全ての生物に魂があることを


・・・


魔物にまで魂があるなんて


・・・


魔物は人族を襲う


それは 魔物が住むエリアに人族が入るから 人族が仲間を殺すから


魔物は食料であり 資源 エネルギーである


たとえ他の食料 資源 エネルギーが見つかっても 人族の王達が自分達の主張する領土を魔物に分ける等 考えられない


食料 資源 エネルギーが必要なくなったとしても 全ての生物で世界を分けると


人族の住める領土はかぎりなく狭くなる 


・・・


完全通訳の指輪は全ての生物と会話が出きる素晴らしい指輪だと思ったのに


全ての生物に人間と同じ魂があるという知ってはダメな事実が


生きるとは食べること 肉を 魚を 野菜を


豚と 鯵と キャベツと 話が出来るようになって 人と同じ魂があると分かったらどうなるのか


家畜が食べないでくれ っと 仲間を殺さないでくれと 自由にしてくれっと 言ってくれば どうするのか


・・・


犬が 猫が 豚が 牛が 人と同じ権利を 領土を求めたらどうなるのか


魔物が 人と同じ権利を 領土を求めたらどうなるのか


植物が 人と同じ権利を 領土を求めたらどうなるのか


1つの種族と仲良くなれば 領土が減り 資源が減る


仲良くなる種族が増えるほど 領土は減り 資源は減るという結論になってしまった


・・・


獣族とだけなら


それも無理だった


人族の王達は獣族の領土を欲していた


獣族と人族が争う前の人族の領土は今の領土の半分もなかったのだ


獣族の領土を奪い 人族の領土は拡大していた


争いを止めて 奪うのを止めるのも多くの王達は反対するだろう


奪った領土を獣族に返すことなど 考えられない


・・・



全ての王達は完全通訳の指輪の記録を抹消した


・・・


研究に携わっていた人々は


・・・


2人の英雄も罪人として


・・・



魂とは人族にだけあるのだと 決めたのだ 


権利は人族にだけあるのだと 決めたのだ


・・・

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