第150話 平石



「ぐはっ げはっ どはっ」


ユウの木剣が俺の腕に 腹に 頭に


「ほら もっと真剣に 攻撃が当たると死ぬと思って本気で避けないと 実戦では死んじゃうよ」


「ぐはっ 避けようとしてるって ぎゃは」


「口答えしないの 私の剣の動き 手の動き 足の動き 顔の動き 目の動き ちゃんと見ているの」


「うん 可愛いよ ぎゃはっ ぐはっ」


「もう 真剣に ふだんの稽古でも本番のように戦わないと すぐに死んじゃうんだからね」


いや 真剣に避けようとしているのに 速すぎるよ 幻影を出しても 効かないし 巨大盾を出しても 蹴られて逆に巨大盾でダメージ食らうし


「もう少し手加減してよ」


「これだけ攻撃を食らえば 木剣の間合くらい掴めるでしょ 私との間合 武器との間合を掴めば避けれるはずだよ」


そんなこと言ってるけど ユウはアイテムボックスに木剣を収納して 長さの違う木剣を取り出しながら戦っている 


「いや 無理だから もう限界 抱きしめてくれないと死んじゃうよ」


自動回復の指輪のB級ポーションも既に空に


「まったく 成長してないんだから ほら おいで 回復してあげるから」


ユウが俺を優しく抱きしめ 回復を


「仲がよろしいのですね」


俺とユウが宮殿の庭で一緒に稽古をしていると 乙姫がやって来た


ユウはにっこりと微笑みながら「もちろんだよね」っと


「この世界に来て最初に出会ったのがユウなんですよ ユウには大切なものを沢山教えてもらいました ねぇ」


「お強いのでしょうか もしかしたら 英雄様よりも」


「当然だよ 私のほうがお姉ちゃんだからね」


出会ってから2年以上経つが まだまだ あどけない見た目のユウ 大きな目に 大きな瞳 丸顔で どう見ても子供のように見える 年上の幼い女の子


「でしたら 魔物退治も出来るのでしょうか 英雄様にふさわしい鎧が宝物庫にあるのですが 魔物がいるために誰も近づけなくなっています」


「面白そうだね いいよ 私が倒してあげるよ」


「はぁ ユウ 危ないんじゃないの 誰も近づけないってことは海人族では倒せないほど強いってことだろ」


「そうです 普通の攻撃が効かない魔物です 人族達は指名手配魔物と呼んでいる魔物ですよ」


「邪神の国の魔物なのかな」


「もう 聞いてなかったでしょ 魔物は全て邪神の国から来たんですよね」


「そうですね そういうことになってますね 正確に言えば資源としての魔物は 魔物を発生させる力でこの世界で生まれた魔物です 指名手配魔物達はこの世界の人々を滅ぼすために邪神の世界から連れてこられた魔物なんですよ 強い上に神の力がないと倒せない魔物です」


「ふぅ~ん で 近くなの 私が真っ二つにしてあげるよ」


「あそこの部屋の魔法陣から宝物庫のある山に転移出来ます 本当に強いですよ 山を7巻きするぐらい大きな百足の魔物です」


山を う~ん 戦わないのが一番だね


「ユウ 無理はよくないよ」


「大丈夫だよ 私も智王様を倒せるように毎日稽古して来たんだよ 魔物くらいどうってことないよ」


「ふっふっ 楽しそうな話ね 私達も一緒に行ってもいいよね」


スノウとフレアがいつの間にか後ろに


スノウとフレアがいれば問題ないのかな


スノウは世界最強の氷の魔法使い フレアは世界最強の炎の魔法使い 師匠の元で稽古することで更に強くなっているらしい


まだ行くって言ってないのに いいから いいからと 俺はユウに手を引かれ 魔法陣に


俺達4人は暇つぶしに魔物退治に






転移の光が消えると海の中ではなく山の中に 道の先には宮殿のような建物が見えるが その前に巨大な魔物が


どこまでも続く魔物の長い体 頭と尻尾は見えない 巨大すぎて全てが見えない


ユウが「じゃあ 私からいくね」っと剣を取り出し上段に構え振ると もの凄い力が魔物目掛けて飛んでいく


音もせずに巨大な魔物の体が真っ二つに


えっ 凄すぎるんだけど もう終わりなのか


斬られた魔物の左の体がうねり頭が現われれ 右の体がうねり尻尾が現れた


2つに斬られても生きているのか それともすぐに


バタバタとうねっているだけなのだが もの凄い振動が 巨大地震の揺れのような振動が俺達を襲う


いや スノウとフレアは飛んでいるので衝撃はないのか


俺は倒れそうになってるユウを抱き抱えてジャンプ 岩を出しながらジャンプして空中に留まることにした


フレアが「ユウ この振動だと まともに剣が振れないでしょ 倒してもいい」


ユウはほっぺを膨らませて「仕方ないなぁ~ 私が倒したかったのに」


フレアがクスクスっと笑うと 巨大な魔物が真っ赤な炎に包まれた


いや ちょっとやりすぎのような 山全体が燃えてるよ 隣の山も その隣の山も


周りの木々も熱風で枯れていく 俺達の周りにはスノウの巨大な結界があるのでなんともないのだが すべてが炎で焼き尽くされていく世界の終わりのような光景が広がる


うねっていた魔物の頭 尻尾が力尽き どたんっ っと倒れると炎は一瞬にして消えた


地面に降りると振動は消えていたが 亀裂が走り山は崩壊寸前


あっ 宮殿がない


「もう 私が最後まで倒せばよかったよ」


「ふっふっ でも ユウにはまだ早いかな もう少し強くならないとね」


いや 十分に強いと思うけど ユウの持っている剣 もの凄い力を感じるけど 鑑定しても表示が出ない


「んっ どうしたの」


「ユウの腕も凄いけど その剣も凄そうだなぁ~ って思っただけだよ」


「ああ この剣ね 君から貰った箱の金属と宝石で作って貰った剣だよ 12宝剣 って言うんだよ いいでしょ」


「へぇ~ あの箱から作ってもらったんだ 今まで見た剣の中でもダントツに凄いね」


「でしょ 作ってくれたユミル様も最高の出来だって言ってたよ たぶん これ以上の剣は作れないってね 智王様もびっくりしていたよ」


へぇ~ さすが神様から貰ったおみあげの箱 中身の宝石はSSSSS級って言ってたけど 箱も凄かったのか ユミルって やはり ドワーフの う~ん 神から貰った箱で作ったのなら


「もしかして その剣はSSSSS級なの」


「そうだよ 剣だけでもSSSSS級の力があるって 更に12の宝石が魔那を吸収してくれるんだよ 智王様は中身の宝石より箱のほうが凄かったのかって言ってた」


へぇ~ こんな剣でいったい誰と戦うつもりなんだ


俺とユウは宮殿のあった場所に


崩れた山の下の方に宮殿の一部が


ユウが「ちょっと見てくるね」っと言って 飛び降りていく


高さが100メートル以上もあるのに 風魔法を使っているのだろうけど


仕方ないので俺も飛び降りる 岩を出して蹴り 勢いを殺し地面に


ユウは剣で宮殿の屋根を破壊して中に


「う~ん こっちかな」っと言って 埋もれてしまっている宮殿を剣で破壊しながら進んでいく


「ここだね」っと剣を振り扉を破壊すると中に散乱した宝石等と大きな宝箱が


ユウは宝箱を開け「たぶん これだよ」っと言って 俺に鎧を渡してくれた


んっ この鎧は・・・


「凄いね その鎧 まったく力を感じないね」


やっぱり そうなのか だとすると俺にも


「まあ 装備は後で 先に宝石等を拾って戻りましょ」


ユウと手分けしながら宝石等を全て拾い ユウをおぶって 山の上に戻る


スノウとフレアを探していると俺達に気づき 遠くの方から飛んできた


スノウが「どう」って言うと ユウがにっこりと微笑み「見つけたよ」っと


俺が鎧を出し 着てみると 重いが反発力がまったくなく装備することが出来た


おおっ 凄い 俺に装備出来る鎧があるなんて


フレアが「う~ん その鎧は石だけで出来てるのね 魔力を感じないけど 生命力を感じるわね まるで心臓で出来ているような」っと


スノウも「うんうん」っと ユウは「ふぅ~ん」っと


生命力って 心臓って 生きてる鎧なのか う~ん 呪われてないよね このまま装備しても大丈夫なのかな


フレアとスノウが「はい」っとエンを


んっ 100億以上あるけど


フレアが「百足が50億落としたのよ」っと


げっ めちゃくちゃ強い魔物だったのか って 50億?


スノウがクスクスっとわらい


「ついでに 周りにいた魔物も倒しておいたからね」っと


短時間でどんだけ倒したんだろ って ここはどこなんだろ 人が住んでいないのかな


「スノウ達はお金要らないの」


「ふっふっ 使う機会がないわよ それは君のお小遣い 美味しいものでも食べてね」


「だね」っと微笑むユウ スノウとフレアはクスクスっと笑い俺に抱きつき キスを


俺達は光に包まれ転移した


光が収まると 目の前に乙姫が フレアかスノウが転移の魔法を使ってくれたのだろう


「どうでしたか」


「これかな」っと俺が鎧を取り出すと


「そうです 海人族に伝わる秘宝 避来矢です」


「えっ そんな大事な物なんだ 俺が貰ってもいいの」


「ええっ その鎧は英雄様にこそ ふさわしいと思います」


「俺には分からないけど 生命力を感じるみたいなんだけど」


「そうなんですか 言い伝えでは 邪神族の世界から来た 行き場のない魂が宿っていると言われています」


げっ お墓じゃないよね う~ん 可愛い子の魂ならいいけど


俺が嫌そうな顔をしていると 乙姫がクスクスと笑い


「あくまで 言い伝えですよ 私達は子供を産むことが出来るので 亡くなった人達の魂はちゃんと転生出来ていると思いますよ」


う~ん なら問題ないのかな 俺が装備出来る鎧なんて他にはないからありがたいけどね この世界の装備でなければ俺も剣 鎧 盾 兜を装備出来るってことなのかな







乙姫が部屋に来て たまには私と っと


ユウが微笑みながら じゃあ一緒に っと


乙姫は真っ赤な顔で後ずさり 部屋を出ようとしたが


メルが私も っと部屋に入ってきて


乙姫の手を引き 一緒にベットに


俺達はみんなで仲良く楽しむことにした


・・・

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