第36話古代遺跡

「準備はできたかのぉ?」


 俺達は爺さんの問い掛けに、頷きで答える。



……

 今、俺達は王宮の中庭に集まっている。


 昨日、条件として依頼された、龍の爪でのモンスター討伐クエストを達成して、がっぽり褒美を貰う為に、魔法士長である爺さんが開いてくれた、空間転移の中に、これから入る所だ。


 今回のメンバーは、俺、ティファ、メリッサ、レア、レン…そして、シャーロットだ。

 シャルの参加には、国王や俺を始め、皆で反対したんだけど、

 メリーとティファが、「こんな事になった責任を取らせて同行させる。」と、聞いてくれなかった。


 逆に、俺は危ないから残れと言われる始末で、分かっていた事だけど、扱いの差は様々なんだよなぁ…


 結局、シャル本人が同行を承諾したので、メンバーが決まった。

 もちろん、俺も留守番は無しだ。


 ただ、ルサリィは危ないから絶対にダメだと言い聞かせて残ってもらった。

 こればかりは涙ぐまれても、ルサリィの為だと頑張って拒否したんだ。

 「…分かった」と言いながらも、イジケて部屋に閉じこもってしまったので、帰ったらベロンベロンに甘やかしてやろうと思う。



 シャルの同行について、国王は最後まで反対していたけど、アールヴ爺さんに説得されて仕方なく同意してた。

…なかなか過保護な親父だぜ


 だけど実際、今から向かう場所は遺跡だし危険だから、俺もシャルには遠慮して欲しいんだが…

 とてもそんな甘い事を言い通せる空気じゃなかったんだよなぁ


 …女性は難しい、怖い。



「…では、行くと良い。無事を祈っておるからのぉ。」


 気の抜けた声援を背に、開いてくれたゲートに入る。


「…転移系の巻物使った時と同じだな。」

「はい。そのようですね。」


「少し暗いですわ、レア?」

「…まなライト……」


 レアの魔法で俺達の頭上に、小さな太陽の様な物が浮かぶ。

 かなり明るくて、前後5mくらいは真昼のようだ。


「ここは、遺跡の入り口を入ったばかりらしいから、隊列を組んで進もう。」


 俺の言葉に皆が、事前に決めた持ち場に着く。


  ● ● ●レア

 メリー ●俺 ● ティファ

  ● ● ● シャル

  ● ● ● レン


 こんな感じになって進む。


 幸い、通路の幅も広いので、レベルやHPの低い俺とシャルを守ってもらいながら進む形になる。

 …俺がお荷物くさいな。



「このフロアにも、特に何もございませんわ。」


 罠や仕掛けは色々あるが、メリーがスキルで探知して解除して行ってくれるので、まったく問題にならない。

 頼もしすぎるぜ!


「ジィさんがゆうとったけど、変なモンスターが住み着いて、遺跡から弱いモンスターが逃げ出しとるらしいで。」


「どんな物が現れようとも、ユウト様には指一本触れさせません。」


「…ごめんな。俺の力が戻れば、迷惑掛けないのに。」


「…これも…その一環…」


「おーおー、ええのぉ。俺かて、甘やかしてくれる人が欲しいわぁ」


「うるさいですよ、バカレン。」


 遺跡に入ってから、何も起こらないので、全員少し気が緩んでいった。

 たわいない話をしては、突っ込んで笑う…

 それは、まるで…あの頃は、全然楽しくなかった遠足のようだった。

 昔も、こんなのだったらな…



「…しっ。何かいるようですわ。」


 メリーの反応に、緩んでいた空気が引き締まる。

 パッと見たところは何もなさそうだ。

 攻撃が飛んで来る仕掛けでは無いようで、メリーを先頭にゆっくりと進む。


 …ビーッ

「なっ!なんやっ!?」


 変な音と、レンの声が響くと、両サイドの壁からゴーレム兵が現れた!

 サイズは2m級位のが6体、3m級が2体いる。

 デカイ方は天井スレスレだ。


 …ゴゴゴ


 壁から抜け出たゴーレム達は、近場の仲間を襲い出す。


「はぁっ‼︎」

 メリーとティファが小さいのを2体ずつ吹き飛ばす。

 か、動きが止まらない!


「皆、ゴーレムは核を破壊しないと止まらないんだ!点での攻撃は反撃を喰らうぞ!」


「…ふりーじんぐ」


 俺のモンスター解説ページからの情報を聞いて、レアが範囲魔法を唱える。


「…ホーリープロテクション!」


 自分達も巻き添えにするレアの魔法に、ティファが防御魔法を掛けてくれる。


 …ギギギッ……


「!動きが鈍っとる!一気にぶっ壊すで!」

「…あなたの号令では、テンションが上がりませんわ。」


 そんな軽口を叩きながら、近接ジョブのある三人がゴーレムを粉々にしていく。

 最後に残ったデカイ方のゴーレムの様子がおかしい…


 目の位置にある光点が点滅して…

「ヤバイ!爆発するぞ!奥に走れ!」


 俺の言葉に反応して、全員で通路奥にあるフロアスペースを目指して走る。

 並走しながら、シャルに入り口で障壁の展開をお願いする。

 そうすれば、爆風も入ってこないはずだ。


 シャルにやらせるのは、気がひけるんだけど…


 お願いした手前、俺も入り口付近でシャルの後ろに待機する。


 …ブゥワァン

「これは!転移魔法陣!!」


 後ろでメリーの声が聞こえ、振り向くと地面に無数の魔法陣が発光しているのが見える。


 メリーとティファが、俺の所に

 レンがシャルの元に走る



 ……が、



 次の瞬間には、視界が暗転して

 …別の何処かに飛ばされた。



 目を開けると、重力により落下していくのを感じる…えぇっ!?

「きゃぁぁあっ!!」

「シャルっ!」


 暗さに少し慣れると、俺と一緒に落下するシャルが見えた…

 ヤバイ!

 この高さから落ちたら、二人共死んでしまう!!


 焦りから、障壁を展開すれば、何て事はまったく思い付かず、ただ手を伸ばしてシャルを引き寄せる。

 …どうやら、恐怖で気絶してしまっているようなので、そのままシャルが上になるように抱きしめ



 ……落ちた。




 ……ドーンッ!!



「…」


「……うぅ」


「いてて……たくない。痛くないな…」


 100%死んでたであろう高さから落ちたが、どうやら、防御の宝珠のお陰で助かったみたいだ。


「あっ、シャル!」


「…んぅぅ…」


 はぁ、どうやら無事みたいだ。

 普通なら、衝撃が突き抜けて死んでるかもしれない所だけど、地面に激突した衝撃ごと守ってくれたみたいだ。



「良かった。シャルが無事で…怪我でもしてたら、俺の心が死ぬ所だったな。」



「……はっ、はい。ありがとう…ございます。」

 

 …起きてたのかよ!


 俺の心からの呟きを聞いて、顔を赤くするシャルを見て、俺はもっと顔を赤くする。

 周りが薄暗くて良かった…


 シャルの無事と、ダサい表情を見られない事に安堵するが、このまま座っている訳には行かない。


「…シャル、歩けるか?」

「はい。」


 永久の灯(エターナルライト)を取り出して、辺りを照らす。

 前と後ろに、それぞれの通路か…


 よし!後ろに進もう!


 俺は野生的な直観を信じて、後ろ向きに進む。


「…あの、何してるんですか?」

「あ、いや、今までの人生後ろ向きだったから…」


 シャルに溜息をつかれたので、ムーンウォークをやめて、ちゃんと進む。

 一応、俺が前だ。

 姉妹達の時みたいに、守られて当たり前じゃ、カッコつかないからな!


「…進むの遅すぎません?」

「い、いや、メリーが居ないから慎重に…あ。」


 俺はバッグから先見の眼鏡を取り出した。


「これで大丈夫だった…」


「い、以外と眼鏡似合いますね…」


 シャルに褒められた!

 もっと!もっと!と、俺のワンコのような性格が欲しがるが、何とか堪える。

 …ここで、何か言うと絶対引かれるし


「…あ、ありがと。」


 

……

 眼鏡のお陰で、問題無く進むと…


 一際大きな部屋に出た。



 …

 ……


「ゴルルルゥ…」



…これ、絶対ボス部屋ですやーんっ!

やーんやーん…



 心の中でエコーをかけていると、横でシャルが顔を引きつらせてる。


 …あれは、

【エンシャントドラゴン】

 だっ…


 胴体だけでも10mくらいあるぞ…

 これは、絶対無理だって!


 シャルの断罪の輪だって効くかどうか、

 しかも俺には、スキルを使ってる間、彼女を守るチカラも無い。

 くそっ!


 俺は唇を噛みながら、アイテムを取り出し使う。


「リロードオン!」

 ーゴーレムの心ー

 ・使用した土地にあったゴーレムが召喚できる

 ー召喚笛ー

 ・ユニコーンを召喚できる笛


「ゴーレムで気を引くから、コイツに乗って逃げよう!」


 俺がシャルをユニコーンの背に引き上げると



 ゴォォォォオオ!!

 ドラゴンのブレスで、ゴーレムが消し飛んだ…

 しかも瓦礫で。出口が塞がれた!


 もう一つの出口は、ドラゴンの後ろだよ…



 俺とシャルは絶体絶命の状態の中、ユニコーンを操り、ギリギリで逃げ回る。


 遠くにいるとブレス、近くなると牙、爪での攻撃、後ろに回ろうとするとシッポ…


 何度か喰らった攻撃は、シャルが障壁を広げて守ってくれるけど、消耗が激しそうだ。


「…はぁはぁ、はぁ…」


 息の荒いシャルを見てると、そう連発できないのは容易に想像できる。

 そうだ、ポーションだ!


「シャル!俺のポーチからポーションを!」

「はっ、はい!」


「…全部割れてる!」


 両手が塞がってアイテムが出せない時ようにポーチに入れておいたのに、さっきの落下で全部割れてしまったみたいだ…



「グルゥゥ…ゴォァァアアッ!!」

「絶対障壁!」


 バキンッ!

 障壁が音を立てて割れる…


 ユニコーンから振り落とされたお陰で、何とか凌いだけど、次は無い。


「何とかしないと!」

 俺はシャルを抱き起こして、走る。

 ……ゴウゥウ!

 先程までいた場所に、ブレスが通る

 まずい、まずいまずい!


 遠くにいちゃダメだ!

 ブレスの餌食になるくらいなら、爪を躱す方が!


 ドゴッ!

「ぐぅっうぁぁあ!」

 い、痛くない!

 何とかシャルも守った!


 中間距離で時間を稼ぐ、みんなが来るまで!


 ゴゥウ!

 グゥアァウッ!

 巨大な腕と爪が迫る…かわせた

 大きな口が、俺達を噛み殺そうと迫る…転がり躱す


 くっ…

 はぁ…はぁ…


「ユ…ユウトさ、ん。私を置いて逃げ」

「バカ言うな!シャルは絶体に死なせない!…俺の命に代えても守ってやるっ!!」


 グオン!

「うわぁっ!」 「きゃあぁ!」


 ドスン…ドスン……


 やばい、また攻撃を喰らった…宝珠だって、後一撃しか持たない!

 …パリンッ



「えっ?…そうか!落下した時か!」

「は、早く逃げて!」


落下の衝撃から守った分、宝珠の耐用回数が減って、焦る俺にシャルが自分だけでも逃げろと伝えてくる。

 ダメだ…シャルは置いていけない、奴がそこまで来てる。

 …くそっ、もう、終わりなのか……


 俺は、自分達の最期を悟って…


 思い切り叫んだ!


「…ティファァアッッ!!」










 ーーーーーーレン&レア サイド

「くそっ!転移魔法陣とか、ありえんわ!」


「…早く、ご主人様を探す!」


「分かっとるわ!多分、近くのヤツと飛ばされとるから、ユウトとシャルは一緒やろ。」


 この遺跡は地下10階層になっていて、レア達は5階層に飛ばされていた。

 レンの獣の感により、前方の通路へと進み、下の階層へ向かって走る。


「おい、嬢ちゃん!お前さん、魔法で罠とか探知できるんか?」


「むり…ファイアーボール」


 ガキンッ! ドゴッ… ドンドンドンッ!


 レアのファイアーボールが通った先で、罠が次々と発動されていく。


「やるやないかっ!」


「…いそぐ……」


 ファイアーボールを連発しながら、さらにスピードを上げて進んでいると…



 …ビキッ!ミシミシ……


「おい!嬢ちゃん、上や!」


 レンとレアが上を見上げると、通路の天井にヒビが入り、今にも落ちて来そうだ。

 急いで進むか、待つかを二人が悩んでいると、さらに亀裂は広がり…



 ビキィッ!ドガーンッ……

 天井が崩壊すると共に、二つの影が落ちて来る。

 敵かと構える二人の前に現れたのは、


 …ティファとメリッサだった。




「二人は上の階に飛ばされてたんかっ!?」


「なかなか、床を抜くのは大変ですね…」

「まだ中層ですわ、お姉様。」


「…おねーさま…すごい!」


 ティファとメリッサは、レアを見つけて、今一番必要な存在を見つけたと歓喜する。


「……?」


「レア、あなたの攻撃魔法で、床をぶち抜いてくださいませ!」

「おそらく、ユウト様は下層にいると…思います。」


 恐ろしい発案をするメリッサと、ティファの持つユウトレーダーの反応を信じて、床をぶち抜いて一気に下層まで進もうとする。


「いやいや、そんな無茶な!」


「…あなたは黙っていなさい。私達でも破壊出来たのです。この子に出来ない訳が無い。」


「……!…やってみる…」


「ふぉーりんぐだうん!…まきしまむ!

「ふろすとのゔぁ!まきしまむ」

「うぃんどふぉーる!…まきしまむ」


 レアの高出力魔法に抵抗虚しく、床は耐久力を失い崩れ、落下していく。


「…んな、無茶苦茶な……」





 …レンの呟きと破砕音だけが、響続ける。

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