第25話合流と遭難

 …シャ~

 シャ~、シャシャ~


 …

 乗り継ぎ所を出発してから、一時間以上は経っただろうか?

 俺はサンドスネーク達のご機嫌な歌を聴きながら、

蛇車ソリを走らせている。


 あれから何度か、小型のモンスター…

 サンドラビットや、サンドウルフに、梟のようなモンスターマジックオウル等を見かけたけど、サンドスネーク達の方が強いのだろうか、襲いかかってくる事は無かった。



「ユウト様、そろそろ御者を代わりましょうか?」


 後ろの幌からティファが顔を出しながら、聞いてくる。

 たった一時間で、すでに二回目だ…笑


 どうやら、俺が働いているのに自分は、のほほん…としているのが、歯痒いようだ。


 そんな働き屋なティファには、ルサリィの相手をお願いし、俺は前を向く。

 ルサリィはティファお姉ちゃんに懐いてるようで、幌の中は二人の笑い声に満ちてる。

 俺が代わって気を遣わせるよりは、ルサリィも楽しいだろうし、揺れない御者台は結構快適なのだ。


 砂は飛んで来るけど…




 ーーーードガガガッ!


 「…なっ!?」

 突然、ソリが地面にハマって舵がとられる!


 先見の眼鏡が足元を赤く表示している。

 しまった…二人の事に気を取られていて、モンスターの張った罠を見落としたようだ…


 サンドスネーク達が、必死に這い出ようともがいているが、蟻地獄のようにソリが吸い込まれていくため、そう簡単には抜け出られそうにない。

 異常を感じたティファが幌から出てこようとするのを、俺は右手で止めると反対の手で取り出したアイテムを使う。


「リロードオン!」

 ー氷狼の牙ー

 ・対象に3~4本の氷塊を降らせる


 アイテムを使うと、青色に淡く光る牙は、手の中から消え去る。

 それと入れ替わりで、蟻地獄の中心にいるサンドスコーピオンの頭上には、氷柱のように大きな氷の塊が現れて、スコーピオンを串刺しに潰していく。


 「…ギィィギギギ……」

 サンドスコーピオンが倒れると、砂の流れは収まったけど、車輪の部分まで埋まってしまっている…


「…シャ~シャシャー!!」

 スネーク達が頑張ってくれたお陰で、ようやく蟻地獄を脱出する事ができた。

…感謝、感謝だ、偉いぞ!


「さすが、ユウト様です!」

「…お兄ちゃん凄いです!」

 元の体制に戻って走り出そうとすると、幌から体を半分出して、ティファが俺を称賛してくれ、さらに、そのティファの下からケモっ子のルサリィが顔を出して、同じく称賛してくれるのだが…


 …ティファの胸にケモ耳が悲鳴を上げているでわないかぁぁっ!

 おぉぉ、ルサリィよ…

そのポジションニングは萌えるぜっ!




……

 俺はエロい事を考えているのを悟らせない様に、

 爽やかな笑顔を意識して「二人共、大丈夫だったか?」と、返しておくのを忘れない。

 …また変態返しのフォローするのはシンドイしな。



 気を取り直して進み始めると、後ろから、

「ユウトお兄ちゃんは凄いんですね!」

「…そうなの、ユウト様は凄い御方なのよ!」

 と、俺をベタ褒めする声が聞こえてくる。


 …て、照れるじゃないか。



 …思えば、現世では人と関わる事が少なかったから、褒められる事なんて皆無だったな…

 あ、そういや昔、工場勤務の時に残業したくないが為に、超スピードでライン作業をしていると、金髪の関西弁が五月蝿い奴に、「作業が早くて正確だ!」と、褒められた事があったな。

 コミュ障全開だった俺は、それを華麗にスルーしたんだけど…ちょっと嬉しかった思い出だな。




 少し、おセンチな気分で蛇車を走らせる事、さらに一時間ちょっと。

 四度目のティファの交代発言をスルーしていたら



 …遠くに砂塵が上がっているのが見えた。


 今回はしっかり、先見の眼鏡で辺りと進路を見渡す。

 …うん。

 どうやら、罠などは無いみたいだ。

 確認が終わると、ティファに声を掛けて異常を知らせる。


 顔を出したティファが、どうやら誰かが戦っているようだと言ってくるのだが、この距離だと俺には全然分からない。

 …良くあんなに遠くの影が何か分かるもんだ。


 そう関心しながらもスピードを上げていくと、確かに、結構大きめのモンスターと…人のようなシルエットが戦っているのが分かった。

 …一人だろうか?


 あのサイズ差だと、だいぶ実力差が無いと厳しそうに見える…美女の冒険者とかなら、助けて、是非お知り合いに…

 と思って、近づきながら目を凝らしてよく見ていると見知った顔に気付く。

…レンだ。


 …何でこんな所にレンが?

 確か、王都に帰った筈じゃあないのか?


 レンが必死にモンスターの周りを右往左往しながら攻撃している姿が見える。

 それに障壁が見えるから、シャーロットもいる…

 それに気付いた俺は途端に心配度が跳ね上がり、二人の元に進みながら声を張り上げる。




「…あぁ!?おぉ、ユウトやないかっ!頼む、助けて…うわっ」

 火炎のブレスを間一髪のところで躱してるレンに「任せろ!」

 と、カッコよく伝えると、アイテムを発動する。


「リロードオン」

ー氷狼の牙ー


 モンスターの頭上に現れた氷塊を…

「ブレスで相殺しただとっ!?」


 横からちょっかいを出した俺に気づくと、デッカイ鳥頭がこちらをロックオンして、魔法を打ち込もうとしてる…

このままだとティファやルサリィに被害が及ぶと判断して、俺はすぐに蛇車から横っ飛びすると、賢明の盾を召喚して構える。


 ーーーーガガ…ドガーン!!



 盾に直撃した雷撃は、アイテムの効果で俺にダメージを与えられないが、効果を発揮した盾は脆く崩れ去る


「ティファ、グーロだっ!厄介な奴だけど、三人ならなんとかなるはずだから殺るぞっ!!」


 …バッ!

 俺の声に反応して、すぐにティファも幌から飛び出してくる。


「サンドスネークはルサリィを安全な所に運んでくれ!」


「…シャシャー!」

 俺の言う事を理解してくれたのか、はたまた本能なのか二匹はグーロの射程外へと離れて行く。

 …お利口さんだ!


 俺達はレンに近づき、シャーロットを含め四対一の状況になる。

 …ん?グーロの横に人が立ってる…


 俺の視線に気付いたのか「あれは敵や!」と、レンが叫ぶので、「なるほど、召喚士か?」と俺は納得する。

 …その割に様子が変だけど



 ティファが敵の注意を引きながら攻撃を仕掛けてくれていると、レンが経緯を掻い摘んで説明してきた。


「…すまんユウト!助かったわ。」


「一体、何があったんだ?」


「詳しい説明は後や…グーロの回復が早くて苦労しててんけど、あの綺麗な姉ちゃんが居ればなんとかなりそうやなっ!」


 さらにレンは、自分が考えた作戦を伝えてくる。


 …ふむ。

 ティファが囮になって、シャーロットのスキルで輪切りにして倒す、か。

 確かに成功率は高そうだけど、倒しきれるのだろうか?


 俺は少し考えてからティファに指示を出す。


「ティファ!奴の注意を引きつけて、断罪の輪が発動されたら、直ぐに離れて距離を取ってくれ!」

 ティファが目線と頷きで、了解の意を示してくる。


 俺はレンに、追加で範囲アイテムを使うから巻き込まれないようにと注意し、それで倒しきれ無いようなら、トドメは頼むとお願いする。


 レンは頷くとシャーロットの前に立ち、スキルを使う間の守りに入り。

 障壁を解除したシャーロットが、タイミングを見て断罪の輪を発動した。


 ティファに意識を向けていたグーロは、自分が光の輪に包まれて、突然、身動きが出来なくなった事に驚いているようだ。



「…ウゥグゥアアァァア!!」

 発動された断罪の輪は、グーロの体に喰い込みその巨体を侵食して行く。

 絶叫を上げながら、紫色の血液と悪臭を辺りに振りまくグーロ…


 俺が握りしめていた炎龍の牙を発動しようとした瞬間、グーロの上に載っている、三つの頭の内の一つが動いた…

 ボロのフードを被っていたので良く分からなかったんだが、どうやら"ソレ"は人間の頭部で、俺にはシスターのように見えた。


 その頭部が絶叫すると、俺達は体が動かなくなり、俺を含めた周りにいた全員が砂に吸い込まれて行くのが見える。


「リロードオン!炎龍の牙ぁぁ!」

 吸い込まれる前にグーロだけでも倒そうと、素早く周囲を見回して、効果範囲に味方が居ない事を確認し、アイテムを発動させる。



 …ゴォォォ!!

「…グゥアゥゥオォォ」

 グーロは激しく燃え上がって崩れ落ちていく…



「…やったか?」

 頭が吸い込まれる前に見た感じだと、おそらく倒せた筈だ。



 …だけど、落下は止まらず砂に呑まれた。







 …

 ……


「…ここは?」

 次に眼が覚めると、辺りは真っ暗だった。

 どうやら死んだ…訳では無いようだな。


「おーい!…誰かいるかぁ!?」


 ……


 返事は無いので、どうやらバラバラに落ちてしまったようだ。


 …しかし、最期のアレは何だったんだろう?

 モンスターの持つ、特殊スキルとかだろうか…

確かにグーロは頭部にある頭の力で適正レベルが変わるけど…それでもあんなのは見た事も戦った記憶もないな。


「そういや、グーロの横に居た奴も燃えてたっぽいけど……まぁ、敵だったみたいだし良いか。」

 誰もいない洞窟に俺の独り言が辺りに響く。


 辺りは暗く3m先になると人がいても気づかなさそうだ…取り敢えず暗闇を何とかしないと。


「リロードオン」

 ー永久の灯(エターナルカンテラ)ー

 ・消そうとしても光が消えないカンテラ


 辺りが、カンテラの光でポワッと明るくなるり辺りが見えてくる。

 やっぱり周りは砂の壁で覆われている…砂の地底ダンジョンとかなんだろうか?

 周りに見えるのは砂の通路が伸びているだけだ。


 …とにかく誰かと合流しなければ。

 遭難したのに動き回るのは良く無いそうだけど、このままじゃジリ貧だしと覚悟を決めて歩き出す。




 ……ザッザッ…ザッ


 あれから、だいぶ歩いたのに誰とも会わない…

「う~ん…引き返した方が良いのだろうか?」

 俺はかなり不安になっていたのだが、前方にようやく大きなドーム状のスペースを見つける事が出来て、喜びながら通路を通り中に入り辺りを照らす…

 と、幼女が倒れていた。


「…ふむ。ルサリィルートに入ったか。」

 俺は某恋愛シュミレーションゲームを思い浮かべながら、しょうもない事を呟いてルサリィの元に忍び寄る。

 …レンルートじゃなくて良かった。



「おい…ルサリィ、しっかりしろ、大丈夫か?」

「ん…ぅ~ん…んん"?お、お兄ちゃん!?」

 …何で寝込みを襲われそうになった顔をしているのかな、ルサリィよ…ちょっとしかヤラシイ顔になってないやい!



 俺はイケメン顔を作って、モンスターを倒したら全員砂に飲み込まれてしまって、皆を探している所だと説明した。


「どっ、どうしよう!ティファお姉ちゃんが…」


「…大丈夫だって!俺達でも生きてるのにティファが死んだりするもんか。」

 頭をポンポンと撫でて、泣きそうなルサリィを安心させる。


 こっそりケモ耳を触っていたのは内緒だ。

 …モフモフ最高……




……

 俺が無言で耳の感触に感動していると、不思議に思ったのか、ルサリィが上目遣いで俺の顔を覗き込んでくる。


 …くぅおんのぉ!ロリカワイイなぁ…こんちくしょうっ!!


 俺は平静を装い直しつつ、ティファ達を探しい行こうと声をかけルサリィを起こすと、入った方と反対の通路に向かう。

そして、不安なのかそんな俺の服の裾をルサリィが摘み一緒に歩き出す。


 『…ルサリィが仲間になった。』


 脳内で素敵な効果音を鳴らしながら、ルサリィを連れてドーム状の部屋から出た。

 …他にめぼしい物は何も無かったしな。


 カンテラを照らしながら、転ばないようゆっくり歩いていると、通路の前方に"黒い何か"が、蠢いているのが見える。


 俺はルサリィを自分の後ろに守りながら、ゆっくり進んで行く…

 

「なっ!?デザートスパイダーかっ!…リロードオン!」

 ーシンドルの短剣ー

 ・第2~第5位までの魔法がランダムで発動


 召喚した短剣を振ると、ファイヤーボールが出るけど、威力が弱い…

 一応デザートスパイダーの弱点属性だったから、ソコソコの動揺は誘えたようで助かった。

 そしてその隙にもう一度、俺は短剣を振りかざした。


…バチバチッ……ドォゥン!

 次は、サンダースピアが出た!



……バヂチッ!…プス…プス…ドサッ

 デザートスパイダーは煙を上げながら、動かなくなり地面に転がった。


「ふぅ、何とかなったな…」


「お兄ちゃん凄い!」

 俺は額を拭うフリをしてカッコ良く台詞を言うと、手を叩いて褒めてくれるルサリィに振り向いた…


すると…

「ルサリィあぶないっ!!ぐぅあぁっ……」




…俺はデザートゴブリンの斧を受け吹き飛んだ。

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