第61話 ここはどこだ?


 ここはどこだ?


 俺は辺りを見渡すが、暗くて何も見えない。


「こ、こんにちは」


 遠くから、誰かの声が聞こえてくる。


「こんにちは。妹の、ひなです。東條とうじょう、雛」


 雛? どうして、雛が自己紹介しているんだろう?


「私は依代よりしろしずくです。ナル君にはお世話になってます」


 雛に言葉を返したのは雫だった。


 まどろんだ意識で、あり得ない二人の組み合わせに少しだけ笑った。


 突拍子とっぴょうしのないことが起きている。


 声しか聞こえないけれど、これは夢なのだろうか?


「あのっ。雫さんは、お兄ちゃんの――なんですか?」


 声が、遠い。


 断片的にしか聞き取れない。


「――どこか人を寄せ付けない所があるよね。だから――我儘わがままを続けるのも今日までだから。今日だけ――許して。お願い」


 いったい、何の話をしているんだろう?


 意識が沼に沈んでいるようににぶい。


「お兄ちゃんは、すごいもん!」


「知って――変わってなかったし――これ以上、ナルに迷惑をかけたくないの。でも、弱い私には――貸しておいてくれないかな?」


 声がさらに遠のいていく。


「あなたは、どうして――好きになったんですか?」


 気付くと、何も聞こえなくなっていた。

 

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