第45話 魔法少女にな~~れ♪


瀧本たきもと親御おやごさんは泣いてたよ。いじめに気付けないなんて、親失格だとおっしゃっていた。仮に気づけなくても、相談してもらえるほど自分が信頼されてなかったって、さらに泣くんだよ。あんな風になげかれるなら、虐めは教師の責任だって怒鳴り散らされた方がマシだ。虐めなんて学校での出来事だし、担任の俺こそ、生徒から信頼して相談されるようにならなきゃいけなかったんだ。俺は教師失格だよ」


 船頭せんどう先生のうなだれる様子に、思わず口を開く。


「隣の席の俺ですら気づいてなかったですし、難しかったと思います」


 しかし、船頭先生は首を横に振った。


「俺が悪いのは間違いない。だから、今からでもできることがあるならやりたいと思ってる。東條とうじょうが何か知ってるなら、俺に話してくれないか?」


 船頭先生の真剣な目が、俺を見つめていた。


 俺は、ようやく船頭先生が瀧本のことについて話した理由が分かった。


 船頭先生は〝俺の知っていることは話したから、お前も知っていることを話してくれ〟とうったえている。


 それを俺に聞いたのは、ただのかんだったのかも知れない。


 しかし、俺は船頭先生よりも、確かに瀧本に近い所にいた。


 大きくなる鼓動こどうをごまかすように、深呼吸して口を開く。




「瀧本が虐めの犯人に復讐するとしたら、先生は止めますか?」




 船頭先生は〝何を当たり前の事を〟と、逆に不思議そうな顔をして、


「俺なら止める」


 そう言い切り、理由を続ける。


「瀧本は被害者ひがいしゃだ。だから、俺は瀧本を守ってやるべきだと思う。その上で、俺がしっかりと加害者におきゅうえるのが良いやり方なんだ。ただでさえ辛かった瀧本が、相手の罪に対する責任まで負う必要なんてないだろ?」


 俺はそれを聞いて立ち上がった。


 自然と手に力がこもって、右手に持っていた空の缶がひしゃげる。


 目線をやると、その缶は指の跡が残り、曲がると言うよりもねじ切れてしまっていた。切れて断面がのぞいている空き缶を、俺は初めて見た。缶がこんなにも柔らかいものだろうかと思ったけれど、そんなことに気を取られている場合じゃなかった。


 俺は小さくつぶやく。


STARスター LIGHTライト


『準備はできています』


「マジカル輝くミラクルるん! 魔法少女にな~~れ♪」


 瞬時に光の粒が生まれ、俺の体をおおっていく。


 その光が収まった頃には、しょぼくれた高校生はいなくなっていた。


 そこにいるのは、どこからどう見ても完全な、魔法少女マジカルきらりん☆の姿だ。


 突然の発光に驚いたはとが飛び立っていく。


 何かのずり落ちた音に目をやると、地面には目を丸くした船頭先生が転がっていた。


「瀧本は、俺が連れ戻します!」


 俺は萌えボイスでそう口にして走り出した。


 俺は横目でとらえたゴミ箱に空き缶を投げる。


 走ったままにも関わらず、俺の手にあった空き缶は、そのまま綺麗にゴミ箱に収まった。


 きらりん☆の身体能力があれば、俺にもできることがあるはずだ。

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