第43話 協力ありがとう


「さて、魔術協会へのすじも通したし、そろそろ儀式も終わっただろう」


 アクアが杖を振り、新たな魔法陣とけ目が生まれた。


 そのままアクアが腕だけを裂け目へ通すと、向こうの空間から「うおっ」と驚きの声が聞こえてくる。


「そろそろ戻ってきたまえ」


 アクアが腕を引っ張り、強引に連れ戻したのはゆらりん♪だった。


「儀式は成功したかい?」


 アクアが聞くと、つかまれ宙ぶらりんのまま、ゆらりん♪はニヤリと笑う。


疑似ぎじしんは記憶のつい体験たいけんちゅうだ。目を覚ますには時間がかかるだろうが、目覚めた時には記憶が戻るはずなのだ」


「ゆらりん♪君の協力に感謝する。魔術は記憶を封じることはできても取り戻すことが苦手でね。記憶を戻せる能力を持ったゆらりん♪君を生み出したことも、しずく君が疑似神であることにおける偶然であり必然だった訳だ。後は私に任せてくれ」


 アクアはゆらりん♪をその場に下ろし、入れ替わるように裂け目の向こうへ歩いていく。


「アクア!」


 俺が呼ぶと、裂け目の向こうからアクアはにこりと笑った。


 聞きたいことや伝えたいことは沢山あるはずだった。


 でも、何から手を付ければ良いのかが、まるで分からなかった。


「ナル君も、今まで協力ありがとう。雫君も感謝しているはずだ。そして、これで君達は自由だ。雫君が神へと昇華しょうかすれば、君たちにほどこされている術式は失われ一般人に戻れる。術式から切り離された君達には魔術協会も手は出さないし、君達は今までの日常に戻れるだろう」


 アクアはそれだけ言って、空間の裂け目を閉じてしまった。


 気づけば、街の喧騒けんそうも戻って来ている。


 あまりにも呆気あっけない別れに、拍子ひょうし抜けしていた。


「では、私もやることがあるのでな♪」


「……やることって、俺との戦いか?」


 思わず身構えたが、ゆらりん♪は首を振る。


「きらりん☆のまがい物である貴様では、私の願いは満たせんよ。……疑似神が目覚めるまでに時間がないのだ。私はそれまでに、宿主やどぬし様の願いを叶えるまでなのだ」


 ゆらりん♪が杖を振り、


SOUNDサウンド CONNECTコネクト、飛行モード」


 ゆらりん♪の杖が変形し、蝙蝠こうもり型の大きな羽根を生み出した。


 ぱっと見だけでも、STARスター LIGHTライトより安定飛行ができそうだ。


 ゆらりん♪はSOUNDサウンド CONNECTコネクトまたがって浮かんでいく。


瀧本たきもとの願いって、アイツらへの復讐なのか?」


 瀧本に絡んでいた不良たちの姿が頭に浮かぶ。


「復習が正しいとは言わんが、私はその願いを叶えるために生まれたのだ」


 俺の言葉に、ゆらりん♪は振り返って続ける。


「これも因果いんが応報おうほう半神はんしんとはいえ神である私が罰を与えるのはおあつらえ向きだろう? 純粋に私自身が――胸糞悪い人間を許せないというのも理由だが」


 ――くっくっく。


 ゆらりん♪は、特徴的な笑い声を残して飛び上がる。


 俺は慌てて口を開いていた。


「お前も、無事に帰ってくるよな!?」


 その問いに、ゆらりん♪は少し考えてから答えた。


「あと少しで貴様には普通の生活が戻ってくる。貴様はもう、何もしなくていいのだ♪」

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