第38話 生い立ち


「魔術協会の出方は二つしかない。一つは、しずく君を直接探して始末しまつする方法。もう一つは、私を尋問じんもんして雫君の所在を掴んで始末する方法だ。つまり、魔術協会は私を狙う可能性も高い。先ほど言った通り、私はおとりとして時間を稼ぐつもりだから、私と一緒にいるナル君の方が危険なのを理解してほしい。このまま襲われればナル君の家族にも迷惑がかかるだろうし、場所を変えようか」


 雫を裂け目の向こうへ見送った後、アクアにそう言われて外出することにした。


 玄関を開けると、家の前でアクアがブーツをくのに手間取っていた。アクアは全てを魔術で解決してしまうのだと思っていたけれど、ようやく人間らしいな、と思う。


 時刻はまだ昼過ぎで、雲一つない空に太陽が輝いていた。


 魔法陣の裂け目から見えた世界は薄暗かったから、あそこは日本ではないのかも知れない。


「雫君の生い立ちについては聞いているかい?」


 当てもなく歩きながら、アクアが聞く。


「……交通事故で家族を失ったって」


「その詳細を、雫君は覚えていなかっただろう?」


 うなずく。


「雫君は覚えていなかったんじゃない。魔術協会によって記憶を封じられたのさ」


「封じられた? どうして?」


「順を追って話そう。まず、ゆらりん♪君の特殊な能力を知っているかい?」


 少し考え、


「知らない」


 そう答える。


 俺は『魔法少女マジカルきらりん☆』を視聴していたけれど、観られたのはまだ一期だけで、ゆらりん♪は登場もしていなかった。


「ゆらりん♪君の受け売りなんだが、彼女には地球の過去の記憶と繋がる能力がある。これを利用して、雫君の過去を調べてもらった。そして、全てが解った。雫君は、神になるべくして生まれた子供だったのさ」

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