第30話 待ち合わせ2


 眉をひそめる俺に、しずくが口を開く。


「四期まであるからね。総集編の映画を飛ばしても十五時間ぐらいかかるかな」


「そんなに長いのかよ!? っていうか、それを土日だけで全部観る気なのか!?」


「二日もあれば大丈夫でしょ。早く観ないといけないって言ったのはナルだし、それに、一気に観たほうが面白いと思うよ?」


「……そうだろうけどさ?」


 俺はとんでもない提案を受け入れてしまったのかも知れない。


「ずっと観るために準備するの大変だったんだから! ちょうどナルの家族がいなくて良かったね。これなら寝る直前までずっと観てられるし」


「――ちょっと待て」


 聞き捨てならない言葉が聞こえた気がする。


「一緒に全部観るんだよな?」


 雫は小首をかしげ、


「そのつもりだけど?」


 と、聞き返してくる。


 俺と雫の間には大きな思い違いがあるらしい。


「雫はうちに、泊まる気なのか?」


 雫は迷いもなくうなずく。


「そうじゃないと時間足りないでしょ? 気合入れて行こう!」


「か、家族のいない男の家に泊まる事がどういうことなのか分かっているのかよ!?」


 きょとんとしていた雫は、瞬間的に胸を抱いて眉をひそめた。


東條とうじょう君はエッチなことを期待しているんですか? マジカルきらりん☆とそういう低俗な趣味を一緒にしないでください」


「……距離感覚えるから敬語にするのを辞めてください」


 俺の敬語に、雫は花が咲くように笑う。


「ふふふ。冗談だよ? 私の正義の味方はそんなことしないもん」


「雫は前もそんなこと言ってたけど、俺は正義の味方なんかじゃ――」


 その時、不意に俺の尻ポケットから着信音が流れた。


 俺に連絡をしてくる相手なんて、高校に入ってからは家族ぐらいしかいない。


 携帯を取り出すと、LINEの着信があった。その相手が電話帳に登録されていなかったから不審ふしんに思ったけれど、添付てんぷされた写真に驚く。


「どうしたの?」


 雫が俺の携帯を覗き込んでくる。


 その画面には、自撮りをしているアクアと、その横でちぢこまっているゆらりん♪の姿があった。アクアはいている手でピースをしていて、ゆらりん♪も渋々しぶしぶといった表情でピースを向けている。そこに書かれた本文は、いつもの饒舌じょうぜつからすれば簡素かんそにまとめられていた。


〝こっちも楽しくやっているから安心してくれ〟


「アクアはどこで俺の連絡先を知ったんだよっ!」


 俺のなげきをよそに、雫は笑う。


「そこは魔術師だし?」


 俺達の会話をさえぎるように、新しくメッセージが送られてくる。


 送信元は先ほどと同じで、本文には〝言い忘れたけれど、そういうわけだから、君たちは安心して乳繰ちちくってくれたまえ〟と書かれていた。


 俺は苛立ち混じりに返信する。


〝魔術ってだけで、何でも納得すると思うなよ!〟

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