第25話 契約

 

 きらりん☆を守るように現れた白髪はくはつの魔術師を、ゆらりん♪はにらみつける。


「貴様は何者だ? ついでに私の敵か味方かも聞いておこうか?」


「私は魔術師のアクアだ。これが名刺。これでも四大元素の水をつかさど真名まなを与えられた魔術師として、魔術協会での地位もそれなりに高いんだ」


 アクアはローブから名刺を取り出すが、ゆらりん♪はそれを一瞥いちべつしただけだった。


 SOUNDサウンド CONNECTコネクトの銃口をアクアへ向ける。


「私は敵か味方かも聞いたはずだぞ? 回答によっては貴様も始末しまつしてやる」


 引き金に指をかけるゆらりん♪に、アクアはやれやれと首を振った。


「私はナル君の様に無鉄砲むてっぽうでなく準備も万全だよ。私はゆらりん♪君の固有こゆう魔術まじゅつも調べてあるし、君はまだ生まれて間もないから、この世界の魔術法則にはうといのだろう? 君の転生前の世界と、この世界の物理法則はなる。ナル君が出血で倒れたのも君にとっては誤算だったんじゃないか? 君の世界では、血が流れるなんて表現は無かっただろうからね?」


 アクアの回りくどい言葉を、ゆらりん♪は咀嚼そしゃくする。


「つまり、貴様――アクアは、私の知りえない魔術で戦えるということか」


「正解」


 ゆらりん♪は『魔法少女マジカルきらりん☆』では魔術協会のトップ、教王きょうおうの一人娘であり、卒業すら困難とされる魔法学校を歴代最年少で卒業したエリートだ。弱冠じゃっかん十二歳にして飛び級を重ねたその実力は計り知れず、魔術に関する知識で引けを取る相手など存在しない。


 しかし、それは転生前の世界での話に過ぎない。


 この世界に独自の術式が根付いているのであれば、不意を突かれ苦戦する可能性は高い。


「私を言葉だけで退けるとは大した奴なのだ。良いだろう! 先ほどのSTARスター LIGHTライトの心意気にもめんじて、今回は手を退いてやる」


「そう言ってもらえると助かるよ。それじゃ、ここから契約といこうじゃないか?」


「……契約だと?」


「人間の世界に法律があるように、魔術師の世界にも法則がある。言っておくが、君の存在はすでに魔術協会に把握されている。その力を使うのなら、魔術協会は黙ってないよ?」


「私は、私の生み出された願いを達成するためならば、道など選ばない」


「だから、それに協力しようといっているんだ。私と共に来ないか? 私は魔術協会にも顔が立つし、私がゆらりん♪君を保護したと報告すれば、君も自由に動きやすいだろう。それに、君の願いのひとつは、私の願いと同じだ。ゆらりん♪君の魔術を提供してくれるのであれば、私も君の願いを叶えよう」


「魔術協会を裏切ると言うのか? それに、私の願いは失われてしまっている。本物のきらりん☆はこの世に存在しないゆえに、私はきらりん☆との決着どころか、戦う事すら叶わぬのだぞ?」


「……そもそも、ゆらりん♪君は自らの目的の本質を理解したほうがいい。そこも含めて、私が最大限に力になるよ。悪い話ではないだろう?」


「くっくっく」


 ゆらりん♪はSOUNDサウンド CONNECTコネクトを杖の状態へと戻し、不敵に笑う。


「私がこの世界にめいを受けたからには、私の願いを叶える方法は必ずこの世界に存在するはずなのだ。その方法を貴様が知っているというのであれば――契約成立だ♪」

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