第23話 対決


「お、俺がきらりん☆失格だとっ!?」


 くずちそうになってから、ふと気づく。


「……まてまて? 俺はきらりん☆である必要はあるのか?」


 考えてみれば、俺はきらりん☆になりたいと願ったことは一度もない。


 こうして変身しているのだって、しずくおそわれていると思ったからだ。


あおられてるかと思ったけど、どうでもいいわ!」


 少しだけ落ち着いてきた。


 冷静に考えれば、話し合える相手なら戦う必要なんてないはずだ。


「よくわかんねぇけど、ゆらりん♪さん? 戦う気がないなら退いてくれないか? こんなことをするよりも、俺は瀧本たきもとを探さなきゃいけねぇんだ!」


 俺の言葉に、ゆらりん♪は目を細める。


宿主やどぬし様は、すでにこの世には存在せぬよ。この体はすでに私のモノだ♪」


 嬉しそうなゆらりん♪の言葉に気づかされる。


「もしかして――お前の正体は、瀧本なのか?」


「くっくっく!」


 俺の答えに、ゆらりん♪は満足そうに笑っていた。


「ご名答だ! 私は貴様と同じで生まれ変わったのだ! しかし、不完全な貴様とは違うぞ! 私は人格も与えられた正真正銘、完璧な魔法少女マジカルゆらりん♪なのだっ!」


 ゆらりん♪の挑発するような言葉に眉を寄せる。


「瀧本はどうなっちまったんだ?」


「くっくっく! 宿主様は私の奥底で眠っているよ。そもそも、私がこうして生まれてこられたのは、力を欲した者に、疑似ぎじしんが力を与えたからだ。全く、神とは気まぐれなものだ。これじゃ悪魔の契約に近い。いや、待てよ。精神的負荷だけではなく、きらりん☆に敵を作ることも疑似神の目的だとすれば、私が生まれたことも必然なのか?」


 一人で悩み始めるゆらりん♪にSTARスター LIGHTライトを向ける。


「一人でよくわかんねーこと言ってんじゃねぇぞ! 瀧本を返せ!」


「全く、これだから魔術の心得のない者は嫌いなのだ。よーく聞けよ? 私の存在理由はみっつある。ひとつめはうつわとなった瀧本という少年の願いである、くずどもへの復讐。ふたつめは疑似神の願いである、目覚めるための術式の開放。そして、みっつめは私の願い。原作で叶わなかった――永遠のライバルであるマジカルきらりん☆に、正面から勝利することだっ!」


 ゆらりん♪が杖を構えて叫ぶ。


SOUNDサウンド CONNECTコネクト! バトルモードッ!」


 それが、ゆらりん♪の持つ杖の名前らしい。


 杖の先端に付いた音符型の宝石が割れ、左右に開いたかと思うと、そのまま巨大化して刃先を生み出す。ゆらりんの持つSOUNDサウンド CONNECTコネクトは、瞬く間に両刃のついた斧へと姿を変えていた。


STARスター LIGHTライト! バトルモードになってくれっ!」


 俺の言葉に、STARスター LIGHTライトも呼応する。


 STARスター LIGHTライトの先端にある星型がそのとげの数を増やし、大きくなってが伸びた。その姿は槍状のモーニングスターに似ている。


「私が戦い方を教えてやる」


 ゆらりん♪は巨大な斧を片手で振りかぶる。


 そこから赤い斬撃が生まれ、俺に向かって飛んできていた!


STARスター LIGHTライト! 守ってくれ!」


『了解です』


 STARスター LIGHTライトが俺の前面に魔法陣を生み出し、赤い斬撃をはじいてくれた。


 しかし、目を離したせいで、ゆらりん♪の姿を見失ってしまう。


『マスター、後ろです』


 振り返った時には、すでにゆらりん♪が斧を振りかぶっていた。


「真っ二つにしてやるっ!」


「くっ……やらせるかよ!」


 俺は無理な体制のままモーニングスターを突き出す。


 魔力を帯びた両者の得物えものがぶつかり合い、火花が散る。


「私の攻撃を受け止めるとはなかなかやるじゃないか? だが、その程度で防ぎ切れると思うなよ? SOUNDサウンド CONNECTコネクトッ! 押し切れっ!!」


 SOUNDサウンド CONNECTコネクトの音符が呼応し、その輝きを更に増した。


「何っ!?」


 均衡きっこうしていたバランスが崩れて吹き飛ばされ、背中が校舎の壁に叩きつけられる。


 それだけで衝撃は収まらず、俺は壁を突き破って教室に転がった。


 体を抱くようにして息を整えるが、体の節々ふしぶしが痛みを訴えてくる。


 息苦しさから胸を押さえていた指先に、生暖かいぬめりとした感触を覚えて視線を向けた。




 胸を押さえていた手が、真っ赤に染まっていた。


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