第12話 修正力


 光と粉塵が収まった頃に目を開くと、そこに隕石魔人いんせきまじんはいなくなっていた。


 目の前には、巨大な斬撃ざんげきの形そのままに切り取られた廊下と、そこから覗く外の景色だけがある。隕石魔人を捉えた気はするけれど、あまりにSTARスター LIGHTライトの威力が強すぎて手応えはなかった。


「……た、倒したのか?」


「逃げたんじゃないかしら? 怪人を倒した時に爆発がなかったもの」


 冷静に考察するしずくに振り返る。


 興奮が冷めてないのは俺だけなのか?


「……怪人が爆発するのは、バイクに乗ったバッタとか、巨大異星人の敵じゃないのか?」


「詳しいのね?」


 目を見張みはる雫に詰め寄る。


「いやいや、今はこんな格好だけど、俺は普通の男子高校生ですからね!? ……魔法少女モノよりもそっちが守備範囲なのは当たり前だろ?」


「……ふーん。まぁいいわ。魔法少女モノに出てくる怪人も倒したら爆発四散ばくはつしさんするの。そこは正義の味方の共通点だから覚えておいて」


「……わかったよ。そこはそれでいいや」


 っていうかよ。


「それよりも、この惨状をどうすりゃいいんだよ!? 地球を守るためとはいえ、校舎を半壊にしちまったんだけど!? 弁償べんしょうできる気がしないんですけど!?」


「それは心配しなくていい」


 そう答えたのは、初めて聞く声だった。


 そして、目の前の廊下では不思議な現象が起き始めた。


 崩れたアスファルトの粉塵ふんじんが集まって元の形状になり、ねじ曲がった鉄骨も逆再生の映像のように真っすぐに戻っていく。そのまま穴の埋まった壁や床に残ったヒビも、徐々に薄くなって消えてしまう。


 さきほどまで崩壊していた廊下は、瞬きする間に見慣れた廊下へと直ってしまった。


「……何が起きてるんだ?」


修復力しゅうせいりょくが働いたのさ」


 いつからいたのだろう。


 俺達の前には、青く長いフード付きのローブを羽織はおった人物が立っていた。


 その人物はフードを頭から外し、白い長髪をかきあげる。


 その顔は鼻が高く、整った顔立ちで両目が青い。同じく青いローブには金色の模様が入っていて、素人しろうとからでも値が張りそうだ。彼女は魔術師のコスプレをした白人に見えるけれど、先ほどの現象から考えれば、一般人ではないだろう。


「初めまして。正義の味方を望む者達よ。偶然か必然かは分からないが、本来は敵である私を仲間へ取り込むとは面白い」


 俺の現実は、まだ戻ってはきてくれないらしい。

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