第3話 憧れ


 おさない少年というものは怖いもの知らずで、良くも悪くも世界を知らない。


 小学三年生の時まで、俺は正義の味方にあこがれていた。


 しかし、ある日、正義の味方に憧れていた少年は、近所の公園で複数人の同い年ぐらいの子供たちがめていることに気付いた。


 当時の記憶は曖昧あいまいで、今となってはそれがいじめだったのか、ただの喧嘩だったのかは分からない。しかし、複数人でよってたかって攻め立てるその行為を、少年は見逃さなかった。


 そして、正義の味方に憧れていた少年は戦いを挑み、ボコボコに――されていた。


 正義の味方は負けないはずなのに、現実は非情だった。


 それは見るも無残むざんな敗北だった。


 鼻血も出ていたし、り傷は痛くて、頭にはたんこぶもできた。悔しくて泣きじゃくりながら帰った家の前で、鍵をなくしていることに気付いてさらに泣いた。


 こうして現実を知った少年は、目立たず平穏へいおんに生きることが正しいと知ったのだ。

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