第3章 5-3 イェフカの戦略
気づいたときにはもう遅い!! ふいをくらったユズミがまともに食らい、爆発と共にゲージを二割半ほど減らして後ろへふっとび、地面へ転がった!
「よっしゃあ!!」
桜葉にとっては、これが本来のランスチャージだ。馬で行うのだから当たり前である。こっちの人間はドラゴンへ乗るので、ランスチャージは空中で行うものだという思いこみがある。それを利用した奇襲だ!!
歓声とブーイングが会場を揺るがす。桜葉はさらにガズ子を進ませ、ユズミのドラゴンを体当たりで押し退けつつ、横たわるユズミをガズ子でめちゃくちゃに踏みつけた。大昔は、こうして竜騎兵が歩兵を蹂躙していたのだろう。まるで象兵の象のように。その再現に、観客が一気に興奮の
ただし、ドラゴンにはハイセナキスの公式な攻撃魔法がかかっていないため、どれだけ踏みつけ、蹴飛ばそうがダメージはカスダメである。しかし桜葉の目的はそこではない。
バギン! ガズ子がユズミの弓を前足の爪で掻いて折ってしまった。これを待っていた! すかさず竜から降り、馬上槍を
桜葉は土まみれで転がっているユズミめがけ、バッシバシに槍を叩きつけた。これもカスダメであるが、五発も叩けば二割以上も減った。ユズミのゲージはもう、半分近く真っ赤だった。
たまらず、桜葉が槍を振り上げた瞬間にユズミが片膝を立てて器用にバスタードソードを抜き払い、叩きつけてくる槍を見事に下段から叩き切った。桜葉は槍の柄を捨て、刀の柄に手を添えて下がり、居合の構えのまま間合いをとった。
そこからユズミの反撃!
「……こぉの、蛮族があああァ!!」
ユズミが剣を握りしめ、怒り狂って
が、それすら桜葉の計略だ。怒れば怒るほど、ユズミのような正統派は剣筋が狂うはず。
桜葉は抜刀体制のまま膝を緩め、一歩、二歩……三歩目で間合いに入った。不用心に大上段へバスタードソードを振り上げたユズミの顔面めがけ、踏みこんで強烈な柄当て!! バガン!! 爆発と共にユズミがのけ反って下がる。ダメージはカウンターでまたも二割!
圧倒的な攻めで、桜葉、自身はノーダメのままユズミのゲージを七割も減らしてしまった。
(はまってる! はまってるぞ!)
ここで一気呵成だ! ユズミを冷静にさせてはならない!
柄を当てた位置から左手で鞘だけ引き、抜刀! パッと右の手首を返し、左手を添えて中段に構えるとユズミの胴体めがけて諸手突きを放つ!
ギャ、シュン! しかしその突きは、ユズミが剣道も真っ青の擦り下ろしを見舞い、防がれた。すごい力で刀が
(ゲッ……!)
まるで杖術の「引き落とし」だ。達人の手にかかると、モップの柄みたいな棒きれで真剣をひん曲げるという……。叩きつけるのではなく、擦り下ろすのである。
驚き、あわてて後退って間合いをとりつつ、無意識で納刀。しようとしたが、鞘の途中で刀がひっかかって納刀できなかった。今の一撃で、刀が少し曲がったのである。これを無理に入れると、鞘が割れる。
(なんだってえぇ!?)
仕方なく桜葉はまた刀を抜いて、中段に取りつつさらに間合いをとった。見ると、ユズミがフゥーと大きく息をつき、バスタードソードを似たような両手持ちで下段に構えている。
(クソッ……剣道だと五、六段の構えだぞ、こいつ……!)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます