第3章 3-2 慢心

 「そぅれッ!」


 ガズ子が防壁を支えに空中で踏ん張り、尾の威力も加えて一気に跳びかかった! グン! と加速したガズ子が、位置を取ろうと横へ流れていたランツーマへ迫る! 


 「……クゥ!」

 慌てて防御楯を展開したランツーマだが、

 「うぅうああああ!!」


 裂帛の気合で迫った桜葉が、それを突き破ってランスチャージをぶちこんだ! バッグゥアッ! ガガガ、ガン! ズァア……! エフェクトの光と煙が流れ、ランツーマが三割ほどダメージを食らってバランスを崩しつつ落ちる。やはり、ダメージが少ない。四割を超えるはずだった。楯で防がれたか。


 「もう一丁!」


 間を開けさせない。桜葉がランツーマを追って下降する。ランツーマは両手を構えて遠距離用の光線を放つも、一瞬、その手が光るので軌道予測で避けることは可能だ。ただしそれは放つほうも分かっている。そこが駆け引きだ。


 ランツーマの光線は、この距離の遠距離用ビーム砲みたいなやつ、ユズミとの最後の一閃で見せた中距離用、短距離用はあのマジックミサイルだ。遠中近、とりそろえている。実弾じゃあるまいし、具体的に距離によって効果がどう違うのかは分からないが……とにかく使い分けている。と、いうことは……。


 (打つ前に、距離を測ってるってこった!!)

 桜葉は、一直線にチャージし、ランツーマへ間合いを測らせない。

 それを、読まれたと云ってよい。


 ランツーマがアークタばりに急降下して迫る桜葉めがけ、両手の構えをグルリと捻って光線を放つ。すると細かい攻撃が八方に飛び散った。散弾!? 拡散砲!? その類であった。


 「こんなもの!」


 桜葉はかまわず突っこんだ。この程度の拡散砲を多少食らったところで、ダメージはたかが知れている。自分のランスのほうがでかい!


 「……!?」


 ところが……その拡散砲が桜葉の周囲で細かな爆発を繰り返した。バン、バン、ババッ、バンッ! グラグラとガズ子が衝撃で揺れる。ドラゴンはこの程度でなんら傷を負わないが、衝撃で自然とブレーキがかかり、降下速度が落ちた。


 桜葉はここで、これは散弾ではなく対空弾であることを悟った。


 速度が落ちれば威力も落ちる。桜葉はこのままつっこむか、いったん諦めて再上昇するか判断に迷った。


 その迷いに、ランツーマが逆吶喊とっかん!! 

 「アッ……!」


 という間に間合いに入られ、桜葉が硬直する。槍が届くような間合いで、ランツーマの光線が炸裂!! ブァガアアッ……! 桜葉は衝撃でガズ子からふっとばされた。高度があまりなかったので、ガズ子が体勢を立て直して桜葉を救う間もなく地面へ転がった。これは超クリティカル!


 「……やられた!」


 起き上がって自分のゲージを見ると、上ゲージは真っ赤。全体で七割近く減っている。これ以上食らうと動きが鈍る! ランツーマがすかさず地面へ降り、桜葉へ駆け寄った。槍を放り投げ、桜葉も刀へ手をかける。


 そのまま、ランツーマめがけて長大な歩幅でつっこんだ。一歩、二歩……見る間に距離が詰まる。ドラムの反射速度とパワーで無くてはできない芸当だ。十メートル近くあったが、数歩で到達! まさに縮地しゅくち! ランツーマへ近距離攻撃用の魔力光線を出させる余裕も与えなかった。


 「ウゥアア!!」


 桜葉の流派は無声が基本で気合声は掛けないのだが、思わず声が出た。それほどの気合で小柄なランツーマの首めがけ、横真一文字に斬りつける。後ろ足で踏みこむ……いや、もう跳びこみざまに抜刀し、上体を捻って左手は豪快に鞘引き、右手が柄を握りこんで剣先が走る!! 居合の生命であるしょ太刀だち! これは完全にきまった! 実戦ならランツーマの細い首が飛ぶ勢いだ。桜葉そう感じた。

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