第3章 2-7 ユズミの剣と弓

 桜葉が軽くパニくって半ば茫然としていると、一、二発くらいつつもユズミがついにランツーマへ肉薄! そのツーハンドソードを振りかぶって叩きつけた。ランツーマが両手の間へ楯のように青白い光線を出してそれを受け、反動で互いに離れたのちになんと右手へその光を束にして集め、剣というか棒のようにしてユズミへ反撃!


 (うわっ……ビームサーベルやんけ!)


 ユズミがツーハンドソードでその攻撃を受けながら下がり、また下段、中段と自在に剣を操ってランツーマと撃剣をやる。殺陣のような華麗さはなく、武骨で一撃必殺めいた、いかにも実戦という感じがよい。観客も興奮して、歓声の坩堝るつぼだった。


 桜葉は、戦いが得意分野へ移行したので、先程より落ちついてつぶさに観察できた。


 (……これなら何とかなりそうだ。やっぱり、この二人で厄介なのは遠隔戦だな)


 確信する。しかもランツーマはやはり接近戦が苦手のようで、押され始めた。


 (いや、ユズミがうまいんだ。正統派だ。剣捌きは、アークタよりうまいかもしれんぞ、あれは)


 ユズミの剣が、ランツーマの光剣を受け、かわしながらも的確にヒットしている。クリティカルではなく、その都度、細かくランツーマのゲージが減る。気がつけば、ランツーマは全体の七割が減っていた。ユズミはまだ半分近くある。


 「エヤアッ!」


 ランツーマの光剣を受けてから捻って押さえつつ、ユズミの左の蹴りがランツーマの脇腹へ入った。ダメージが七割を超え、ガクッとランツーマの動きに制限がかかった。好機! ユズミがクリティカル狙いで、一気に隙のできたランツーマの右肩めがけて剣を振り下ろす。


 瞬間、ランツーマの左手が光った。逆カウンター! ズァボガアッ……!! 爆裂がおき、両者ともに吹きとんで地面へ伏した。桜葉が思わず上を見てゲージを確認する。ユズミのゲージが一気に八割以上も減っている。だがランツーマはそれ以上だ。かろうじて白い部分が残っていた。九割五分ほど減ったか。


 「あれを食らいながらも、剣を当てたのはさすがですね!」


 クロタルも興奮していた。桜葉はもう、ユズミが凄いのかランツーマが凄いのかよく分からなかった。


 ダメージの関係か、ランツーマの動きがかなり鈍い。次の攻撃が繰り出せなかった。だが、ユズミは……。


 競技場が一気にどよめく。ユズミは、先ほど放り投げた弓を再び手にしていた。


 それが偶然なのか、戦いながら位置を調整して狙っていたのかは分からない。どちらにせよ、これで勝負はあった。


 かに、見えたが……。

 ランツーマも中距離用の一閃!!

 しかし、なんと!! ユズミの弓がその光線を真っ正面から捕らえた!!

 バッシシュう! 光線が霧散する!


 そして眼にも止まらぬユズミの連射! ランツーマが気づくと、自らの光線がかき消えたその向こうから二撃め!!


 それが深々と突き刺さり……効果音と爆発の光と共に、ランツーマは後ろにぶっとんで仰向けに倒れた。ユズミ勝利のファンファーレが鳴った。


 「……!? ……! ……!?」

 桜葉、声もない。



 3


 (ヤバイ、まずい、ヤバイ、まずい、ヤバイヤバイ、ヤーバーイー!)


 控え室で軽い夕食を摂って部屋へ戻り、桜葉は休眠モードも忘れてずっと明日のランツーマ対策を脳内シミュレーションした。


 (アークタばっかり対策練りすぎたああああ!!)


 要するに時間が無い。こっちへ来るのがもう二か月……いや、一か月早かったら。


 しかしもう、どうしようもない。一夜づけだろうと付け焼き刃だろうと、やるしかない。


 とにかく、接近さえすれば、あんなビームサーベルもどきはなんとかなる自信はあった。高名なスペースオペラ映画と比べても、動きが格段に素人だ。

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