第1章 3-1 刀がほしい
いろいろ情報を整理しようとしたが、目を覚ました時に横の台へ横たわっていたスティーラの顔だけがやたらと脳裏に浮かんだ。
あの、無表情に半目と口を半分開けた、少女の死に顔を。
(魂を移植してこんな人形まで動かす魔法がありながら、明りの魔法ってねえのかよ)
関係ないことを考えて忘れようとしたが、全然頭から離れなかった。
(クソッ……なんで……なんでおれなんだ)
あのまま死んだほうがマシだったのか。こうして、まったく違う世界で生きていることのほうがマシなのか。
分からない。
無理に毛布を頭からかぶったが、まるで眠くならない。
拷問だった。
3
(こりゃ、精神的におかしくなるぞ……博士に相談してみよう)
考えすぎて疲れたので、再び瞑想状態の無我の境地に目覚めかけた。気がつくと朝で、クロタルが迎えに来る。
「先日は失礼しました。もう大丈夫です」
「はあ……」
「どうしましたか?」
「いえ……いや、もしよかったら教えてください。気分を害したのなら無視してください」
「なんですか」
「クロタルさんは、どうしてお……あたしの世話係に?」
無視された。
まあそうだよな、と思いつつ後について行く。食堂で飯を食っているとあの三人が現れ、イェフカを無視して離れた席で和気あいあいと食事をし、またイェフカより先に出て行った。
食事の後、再び武器庫へ連れてゆかれる。
「今日はもう、武器を決めてください。時間がありません」
「時間」
「七選帝侯国代表選手権まで、二か月半です」
「二か月半……」
桜葉は昨日よりさらに真剣な表情で、並んでいる武器を長い時間見つめた。
(刀がほしいなあ……)
どう考えても、そこへ行き着く。刀とは、もちろん日本刀だ。しかも、やや軽めの居合刀である。居合刀は、たいていの流派の初手の一刀が「片手斬り」なうえ、女性にも愛好者がおり比較的鑑賞刀や試し斬り用の刀より軽く作られる。
(どう見ても西洋の剣ばっかりだ……)
なまじ居合の鍛錬を積んでいるだけあって、逆に使いこなす自信がない。同じ居合や剣術でも別の流派を一からやるのですら苦労するというのに、流派どころかまったく違う武器を最初から使いこなせというのでは、身についた居合の
試しに、今はもう振るうことのできない自分の刀と似たような長さの剣を手に取ってみたが、重心も違うし、反りの無いまっすぐな剣は振るう感触も違うし、なにより両刃なので納刀すらできぬ。
「片刃の武器ってあります?」
「片刃ですか」
クロタルが部屋の奥より、サーベルのような武器を持ってきた。桜葉はオッ、と思い、早速手にする。鞘口近くにベルトへ結ぶ金具があり、やはり腰へ
(つかいづれー)
いちおう、抜いてみる。反りはまあまあ。思ったより刀身が幅広く、その割にちょっと薄い。重ねがないのだ。鍛造ではなく、鋳造だった。重心が切っ先にあるのは太刀と同じだが、桜葉の習っていた流派は太刀居合ではない。
(だめだ)
桜葉は決心した。
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