沈林子7 後秦侵入    

襄邑じょうゆうという地で、董神虎とうしんこというひとが

数千人を引き連れ投降して参りました

劉裕りゅうゆう様は、こういった人物を

増やしていきたいと思われたのでしょう。

劉裕様付きの側近として将軍号を与え、

そのまま兵を率いさせました。


祖父はこの董神虎を引き連れ

倉垣そうえんを攻め、陥落させます。

すると董神虎は功績を誇り、

襄邑に戻ってしまいました。

そのため、祖父は襄邑に進軍。

董神虎を殺し、その配下たちを

慰撫いたしました。


後秦こうしん将の薛帛せつはくが近くの地、

かい県に駐屯しておりましたため、

薛帛に強襲をかけ退散させます。

そして、その軍資を接収。


また後秦将の尹昭いんしょう

蒲阪ほはんにおりましたため、

祖父はきょう城に詰めていた檀道濟だんどうさい様と、

共同して蒲阪を攻撃いたしました。

このとき、王鎮悪おうちんあく潼關どうかんを攻撃。


姚泓ようおうは東晋軍が迫っているのを聞くと、

その叔父である姚紹ようしょうを潼關に派遣。

後秦きっての名将です。


故に祖父は、檀道済様に進言いたします。


「蒲阪の守りは硬すぎます。

 十日程度では落とせますまい。

 攻めればいたずらに将兵を損耗させ、

 かと言って包囲では時を失うばかり。

 この城は諦め、潼關攻めの

 支援に回るほうが良いでしょう。


 それに潼關は守りにも、

 迎撃にも、共に適した地。

 そこに王鎮悪殿だけで行かせては、

 敗北の恐れもあります。


 そんな所に姚紹でも出てこられて

 守りを固められでもしたら、

 もはや苦戦、どころでは済みますまい。


 奴の到着よりも前に赴き、

 力を合わせて攻撃しましょう。

 潼關さえ落としてしまえば、

 尹昭も戦わずして降伏いたしましょう」


この進言を

檀道済様は採用されましたが、

時すでに遅し。


姚紹は潼關付近の兵力を動員し、

やってきた祖父、檀道済様、

そして既にそこにいた王鎮悪もろとも、

何重もの包囲網の中に取り込んだのです。




時襄邑降人董神虎有義兵千餘人,高祖欲綏懷初附,即板爲太尉參軍,加揚武將軍,領兵從戎。林子率神虎攻倉垣,克之,神虎伐其功,徑還襄邑。林子軍次襄邑,即殺神虎而撫其衆。時僞建威將軍、河北太守薛帛先據解縣,林子至,馳往襲之,帛棄軍奔關中,林子收其兵糧。僞并州刺史、河東太守尹昭據蒲阪,林子於陝城與冠軍檀道濟同攻蒲阪,龍驤王鎭惡攻潼關。姚泓聞大軍至,遣僞東平公姚紹爭據潼關。林子謂道濟曰:「今蒲阪城堅池深,不可旬日而克,攻之則士卒傷,守之則引日久,不如棄之,還援潼關。且潼關天阻,所謂形勝之地,鎭惡孤軍,勢危力屈。若使姚紹據之,則難圖也。及其未至,當竝力爭之。若潼關事捷,尹昭可不戰而服。」道濟從之。既至,紹舉關右之衆,設重圍圍林子及道濟、鎭惡等。


時にして襄邑の降人の董神虎は義兵千餘人を有し、高祖は綏懷せんと欲さば初に附し、即ち板じ太尉參軍と爲し、揚武將軍を加え、兵を領し戎を從わす。林子は神虎を率い倉垣を攻め之を克さば、神虎は其の功を伐り、徑ちに襄邑に還ず。林子が軍は襄邑に次し、即ち神虎を殺し其の衆を撫す。時に僞の建威將軍、河北太守の薛帛は先に解縣に據さば、林子は至り、馳せ往きて之を襲わば、帛は軍を棄て關中に奔り、林子は其の兵糧を收む。僞の并州刺史、河東太守の尹昭は蒲阪に據し、林子は陝城にて冠軍の檀道濟と與に蒲阪を同攻し、龍驤の王鎭惡は潼關を攻む。姚泓は大軍の至りたるを聞き、僞の東平公の姚紹を遣り潼關を爭據せしめんとす。林子は道濟に謂いて曰く:「今、蒲阪が城は堅く池は深し、旬日にして克せるべからざれば、之を攻むらば則ち士卒は傷つき、之に守らば則ち日を引きて久し、之を棄て還じ潼關を援くるに如かず。且つ潼關は天阻にして、形勝の地と謂いたる所。鎭惡は孤軍にして勢は力屈せるに危うし。若し姚紹をして之に據せしむらば、則ち圖は難きなり。其の未だ至らざるに及び、當に力を竝べて之を爭うべし。若し潼關の事が捷たば、尹昭は戰わずして服さるべし」と。道濟は之に從う。既にして至らば、紹は關右の衆を舉げ、重圍を設け林子及び道濟、鎭惡らを圍む。

(宋書100-14_暁壮)




林子さんの進言が冴えわたっていますね!

戦場の霧なんてなかったんや!

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