沈林子1 逃亡生活
懐伯 沈林子 全15編
既出:徐羨之4、沈穆夫、沈田子5
宋書編纂者、
この辺りで、そろそろ我が祖父、
祖父は、あざなを
若くして大成を予感させる風格を持ち、
祖父を見、
「この子は
ある時祖父は友と連れ立ち、
多くの財宝が打ち捨ててある場に
遭遇致しました。
この時友たちは先を争い宝のもとへ
駆けつけたそうでございますが、
祖父はくるりとその場から立ち去り、
宝を一顧だにせなんだそうです。
そして、祖父が13歳の時。
祖父の一門は皆殺しの憂き目に遭いました。
逃亡生活の中、祖父は昼夜なく
泣きくれておりました。
その様子を見かねた、沈警様の奥様、
つまり、我が高祖母が仰りました。
「いまは死ぬべき時ではありません。
どうしてただ座して
死を待ってなどおれようね?」
すると祖父は答えます。
「家門がズタズタになったのです、
いたずらに生き永らえようとは
思いません。
沈預めに復讐を遂げるまでは、
何としてでも生き延びます」
五斗米道に参与した沈穆夫様と
その一門が法に伏して処刑され。
残った者は逃れ、草木の間で息を殺し、
見つからぬよう、じっと潜む。
そのような中、勢力を伸ばす
沈預とその一門。
どうにかして、彼らを滅ぼさねば
収まりがつきません。
祖父とその兄上がたは、
昼はじっと身をひそめ、
夜に食糧調達などに動かれました。
またその住まいを売って墓を建て、
沈警様、沈穆夫様以下そのご兄弟を
弔われます。
状況が状況であるため、
つつましやかな葬儀しか上げられません。
その分、哭礼を尽くされたそうです。
しかしながら、
逃亡生活にも限界があります。
持ち合わせは既に尽き、
老いたる者、幼き子も多いというのに、
この頃の京口近辺は、
打ち続く争乱で食物調達にも事欠く有様。
遂には、自分の子と、兄弟の子とを交換、
その子を喰う、と言うところにまで
追い詰められました。
外に出れば官憲の追跡網。
内では同じ沈氏からの追手。
もはや、これまでか。
そう、祖父が思ったのも、
やむを得ぬことでありましょう。
林子,字敬士,田子弟也。少有大度,年數歳,隨王父在京口。王恭見而奇之,曰:「此兒王子師之流也。」與衆人共見遺寶,咸爭趨之,林子直去不顧。年十三,遇家禍,時雖逃竄,而哀號晝夜不絶聲。王母謂之曰:「汝當忍死彊視,何爲空自殄絶。」林子曰:「家門酷橫,無復假日之心,直以至讎未復,故且苟存爾。」一門既陷妖黨,兄弟竝應從誅,逃伏草澤,常慮及禍,而沈預家甚彊富,志相陷滅。林子與諸兄晝藏夜出,即貨所居宅,營墓葬父祖諸叔,凡六喪,儉而有禮。時生業已盡,老弱甚多,東土饑荒,易子而食,外迫國網,內畏彊讎,沈伏山草,無所投厝。
林子は字を敬士、田子が弟なり。少くして大度有り、年數歳なるに王父に隨い京口に在り。王恭は見て之を奇しみ、曰く:「此の兒は王子師の流なり」と。衆人と共に遺寶を見、咸な爭い之に趨れど、林子は直だ去り顧みず。年十三にして家の禍に遇い、時に逃竄したりと雖も、哀號は晝夜に聲を絶えず。王母は之に謂いて曰く:「汝、當に死を忍びて彊視すべし。何ぞ空しく自ら殄絶を爲さんか?」と。林子は曰く:「家門の酷橫なるに、復た假日の心無し、直だ以て讎の至れるの未だ復さず、故に且つ苟くも爾れの存したるを」と。一門は既にして妖黨に陷ち、兄弟は竝べて應に誅に從い、逃れ草澤に伏し、常に禍の及びたるを慮れど、沈預が家は甚だ彊富なれば、相い陷滅せんと志す。林子と諸兄は晝には藏れ夜に出で、即ち居したる所の宅を貨し、墓を營み父祖諸叔を葬り、凡そ六喪せるに、儉ましかれど禮を有す。時に生業は已に盡き、老弱は甚だ多く、東土は饑荒し、子を易し食し、外には國網迫り、內には彊讎を畏れ、山草に沈伏し、投厝せる所無し。
(宋書100-8_仇隟)
王子師
王允のあざな。漢末、
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