謝晦2  可無晦、不可無公

やがて謝晦しゃかい劉裕りゅうゆう直属の部下に。

そして司馬休之しばきゅうし討伐に従軍。


司馬休之戦と言えば、

劉裕が将来を嘱望した

娘婿の徐逵之じょきしを失った戦いだ。


この事態に、劉裕、めっちゃキレた。

なんか自ら甲冑を着て

あいつらぶっ殺すとか言い出してる。


いやいやアンタもう、

ろくに身体動かないじゃないですか、

慌ててみんなが止めに入る。


けど劉裕、むしろ火に油。

やばい。


そこに飛び込むのが、謝晦。

正面から、

がばと劉裕の腰辺りに抱き着く!


「っだっラ! すっぞ!」


剣を振り上げて怒鳴る劉裕。

謝晦も負けじと叫ぶ。


「私が死んでも世は回ります!

 けれども、公よ!

 あなた無しでは無理だ!


 私の命など、なにほどでしょう!」


そんなこんなで押し問答している間に、

部将の胡藩こはん

城壁にとりつき、進入に成功。


ここから一気に勝負が決まり、

司馬休之軍は総崩れに。


そして、

ようやく劉裕も落ち着くのだった。




 入為太尉主簿,從征司馬休之。時徐逵之戰敗見殺,高祖怒,將自被甲登岸,諸將諫,不從,怒愈甚。晦前抱持高祖,高祖曰:「我斬卿!」晦曰:「天下可無晦,不可無公,晦死何有!」會胡蕃已得登岸,賊退走,乃止。


入りて太尉主簿と為り、司馬休之を征せるに從ず。時に徐逵之の戰い敗れ殺さるるを見、高祖は怒り、將に自ら甲を被り岸に登らんとせるに、諸將は諫めど從わず、怒りは愈よ甚だなり。晦は前に高祖を抱持さば、高祖は曰く:「我、卿を斬らん!」と。晦は曰く:「天下に晦無くも可なれど,公無きは可ならず、晦が死に何ぞの有りや!」と。胡蕃の已に岸に登りたるを得たるに會い、賊は退走せば、乃ち止む。

(宋書44-2_言語)




胡藩

もと桓玄かんげんの配下将。桓玄敗走の際、その醜態を見て見切りを付け隠居、そこを劉裕にスカウトされた。その後にやけにいろいろな方面で活躍しているが、活躍の割にそんな出世していない。かれの遷官履歴を見ていると「桓玄のあとに入ってきた人たちの立場キツいな……」と実感せずにおれない。あと六十人くらい息子がいて、しかもみんなタチが悪かったとか書かれてて面白い。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る