高進之3 霍光か、曹操か 

徐羨之じょせんし傅亮ふりょうらが劉義符りゅうぎふ

廃立しようと目論んだとき、

檀道済だんどうさいを抱き込もうと召喚、

計画を打ち明けた。


檀道済、このことを高進之こうしんしと相談。

すると高進之が言う。


「どちらになりたい? 霍光かくこうと、曹操そうそう

 前者なら、乗れ。

 後者なら、退けろ」


ファッ!?

どういうことだ、と檀道済が問う。


「あなたは、宋を支えたいのか?

 ならば言おう、今上をそのままにし、

 劉義隆りゅうぎりゅう様のような方に

 指揮を取らせなければ、

 この国は間もなく落ちぶれるぞ。

 故に霍光のように、国のため、帝廃立に

 踏み出すか? と言ったのだ。


 しかるに、暗愚の帝を奉っておれば、

 国内は否応なく乱れゆこう。

 そんな愚君の下であなたが徳を広め、

 恩恵をもたらしてみろ。

 漢の中に魏国ができたのと、

 全く同じ展開になるだろうよ。

 故に曹操のように、お飾りの皇帝を

 奉じ続けるか? と言ったのだ」


言いながら、高進之は腰に履く刀に

手を掛けていた。


檀道済に万が一、

宋転覆の気持ちがあるのなら、

この場で切り捨てよう、と考えたのだ。


高進之の振る舞いを前に、

檀道済、突然逃げ出す!

そして階段を下り、

何度も地面に頭を叩き付け、叫ぶ。


劉裕りゅうゆう様が天より我を見ておられる!

 愚臣が、何故異心を抱けようか!


 何だ、決まりきったことではないか!」


高進之のもとに戻ってきた檀道済は、

改めて方針を相談、決定する。

それは廃立に積極的に加わらず、

さりとて彼らの邪魔もしない、

というものだった。




徐羨之、傅亮等謀廢立,招道済,道済謀于進之,進之曰:「公欲為霍光乎?為曹操乎?為霍,則廢;為曹,則否。」道済驚問,進之曰:「公欲輔宋,則少帝不廢,瑯琊王不立,天下非宋有也,故必廢。如欲自取,則長亂階,逢愚君,脩德佈惠,招羅腹心,天子非公而誰,故必不廢。」進之此時案腰間刀伺道済,有異言,則殺之。道済趨下階,叩頭曰:「武皇帝在上,臣道済如有異心,速殛之。」迺與進之定議,不為戎首,亦不相阻也。


徐羨之、傅亮らの廢立を謀るに、道済を招じたらば、道済は進之と謀る。進之は曰く:「公の欲せるは霍光為らんか? 曹操為らんか? 霍為らば則ち廢し、曹為らば則ち否すべし」と。道済は驚き問わば、進之は曰く:「公の宋を輔さんと欲さば、則ち少帝を廢さず、瑯琊王を立てざれば、天下は宋の有すに非ざるなり、故に必ずや廢されん。自ら取らんと欲せるに如かば、則ち亂階長じ、愚君に逢い、德を脩め惠を佈し、腹心を招羅さば、天子は公に非ざらば誰ぞ、故に必ずや廢されざらん」と。進之は此の時、腰間の刀を案じ道済に伺い、異言有あらば、則ち之を殺さんとす。道済は下階に趨り、叩頭して曰く:「武皇帝の上に在りたるに、臣道済に異心の如く有らん、速や之れ殛まらん」と。迺ち進之と議を定め、戎首を為さず、亦た相い阻まざりたるなり。

(三十國-3_規箴)




霍光

前漢の名宰相。武帝の信任厚く、息子の昭帝の補佐を託され、これを全う。しかし昭帝が夭折してしまったため、昌邑王しょうゆうおう劉賀りゅうがを帝位につけた。かれの行いがあまりにひどかったため即廃立、そして前漢中興の祖と呼ばれる宣帝を帝位につけた。


曹操

献帝陛下だーいちゅき!(なお、皇后は)

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