徐羨之10 怪異     

徐羨之じょせんしが幼いころ、一人の旅人が現れた。

かれは徐羨之に言う。


「私は、お前の祖先である」


何言ってんだこいつ。


とも、言える筈がない。

徐羨之、側に行き、拝礼した。


すると、男は言う。


「おまえには立身出世の相がある。

 しかし、その前に災いが振り掛かろう。


 家の四隅に、銭を二十八文埋めなさい。

 禍は免れられ、位は人臣を極めよう」


親と共に、とある県内で

過ごしていた徐羨之。

所用があり、しばらく県内を

離れることになった。


すると、その県に賊が襲来。

県内の人という人、家畜に至るまでが

皆殺しの目に遭った。


出かけていた徐羨之のみが、

命を長らえたわけである。



いとこの徐履之じょりし臨海りんかい樂安がくあん県の

県令になったという事で、

徐羨之、かれと共に

楽安に向かう事になった。


道すがら、山の中。


徐羨之の前に、2.5m強の

黒龍が出現した。


頭には角。

前足があり、しかし後ろ足はない。

尻尾を引くことで、移動していた。



徐羨之が司空を拝する時、

つまり、劉義符りゅうぎふ殺害の直後。

朝、彗星が危南きなんに見えた。


また二羽の鶴が、

太極殿たいぎょくでんの屋根の端に止まり、

しきりに鳴き叫んでいるのだった。




羨之年少時,嘗有一人來,謂之曰:「我是汝祖。」羨之因起拜之。此人曰:「汝有貴相,而有大厄,可以錢二十八文埋宅四角,可以免災。過此可位極人臣。」後羨之隨親之縣,住在縣內,嘗暫出,而賊自後破縣;縣內人無免者,雞犬亦盡,唯羨之在外獲全。隨從兄履之為臨海樂安縣,嘗行經山中,見黑龍長丈餘,頭有角,前兩足皆具,無後足,曳尾而行。及拜司空,守關將入,彗星晨見危南。又當拜時,雙鶴集太極東鴟尾鳴喚。


羨之の年少なる時、嘗て一なる人の來たる有り、之に謂うて曰く:「我れ是れ汝が祖なり」と。羨之は因りて起ち之を拜す。此の人は曰く:「汝は貴相有り、而して大厄有り、錢二十八文を以て宅が四角に埋むべし、以て災いを免るべし。此を過ぐらば位は人臣を極むべし」と。後に羨之は親に隨いて縣に之き、縣內に住在す。嘗て出でたること暫し、賊が後より縣を破る。縣內の人に免れたる者無く、雞犬も亦た盡きなれば、唯だ羨之のみが外に在りて全きを獲る。從兄の履之に隨い臨海の樂安縣と為らば、嘗て山中を經て行きたるに、黑龍の長さ丈餘にして頭に角有り、前兩足は皆な具えたるも、後足は無く尾を曳きて行きたるを見る。司空を拜せるに及び、關を守りて將に入らんとせば、彗星の危南に晨に見ゆる。又た當に拜さんとせる時、雙鶴は太極の東の鴟尾に集いて鳴き喚きたり。

(宋書43-10_術解)




ここにまで五行混入とか、どういう事なんだぜ……?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る