王弘7  トバクチ貴公子 

王弘おうこうは若い頃、

公城子野こうじょうしやと呼ばれる場所で

さいころ博打に精を出していたそうだ。


後に大権を握るようになったとき、

王弘に取りすがり、

県令の地位を世話してくれないか、

としきりに頼み込んでくる人がいた。


そのひとは以前、さいころ博打の罪で

捕まったことのある人だった。


なので、王弘は彼をなじっている。


「あなたが銭を得たら、

 また博打にうつつを抜かすのだろう。


 官職で得た金を、

 何に使おうというのかね?」


すると、そのひとはやり返す。


「いやいや、無理ですよ、

 だっていま公城子野がどこにあるか

 わからないですもん」


えっちょっと待って?

なんで今その名前が出てくるの?


王弘さんとしては、どうも

公城子野でぶいぶい言わせていたことは

隠したい過去だった。


まぁ、犯罪ですものね。


なので、かれの返しには

黙り込むしかなくなってしまった、とさ。




少時嘗摴蒲公城子野舍,及後當權,有人就弘求縣,辭訴頗切。此人嘗以蒲戲得罪,弘詰之曰:「君得錢會戲,何用祿為!」答曰:「不審公城子野何在?」弘默然。


少き時に嘗て公城子野が舍にて摴蒲し、後に權に當るに及び、人に弘に就きて縣を求め、訴の辭の頗切なる有り。此の人は嘗て蒲戲を以て罪を得たれば、弘は之に詰りて曰く:「君は錢を得たれば戲に會さん、何ぞが為に祿を用いんか!」と。答えて曰く:「審らず、公城子野は何こに在りたるかを」と。弘は默然とす。


(宋書42-17_排調)

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