劉裕53 韓延之
古くから司馬休之に仕えており、
その有能さは
そこで劉裕、
韓延之に密書をもたらしている。
「俺はお前たちを
分け隔てなく受け容れたい。
いまこうして俺が近くにやってきた、
このタイミングこそが、
正しき主に仕えるチャンスだ。
このまま戦にでもなってみろ、
その時には、もはやその戦火の中で
誰を殺し、生き延びさせるかなど、
検討はしておれん。
故に、こうして俺の意思を
示しておくことにした。
どうかこの書を、同じような
賢人たちにも示してくれんか?」
この密書に対し、韓延之は回答する。
「劉裕くん、国じゅうできみの本心、
すなわち簒奪の意図を
知らないものはいない。
だというのに、この期に及んでまだ
国士をたぶらかそうというのだな。
そんなことを天地が許すはずもなし、
また、誰がきみに従おうか。
先ごろの手紙には
分けへだてなく受け容れたい、
と書かれていたな。
いまきみは、
真に君たるべきお方を討たんとし、
一方では人を利害で
釣り上げようとしている。
なるほどなるほど、その手口には
まさしく分けへだてがないな!
私は愚物でしかない。
が、君主に仕えるべき道理、
というものは弁えているつもりだ。
三國志の時代にいた人、
かれは、主君のために義を貫き、
義に殉じていった。
仮に天がきみの支配を望み、
この世に再び混乱をもたらそう、
と言うのであれば、
私は臧洪と共に、死後の世界で
義について語り合うであろうよ。
これ以上の議論は無駄だ。
あとは、剣で示したまえ」
韓延之からの手紙を読んだ劉裕、
ため息をつき、手紙を配下に見せる。
「人に仕える者の気概とは、
まさにかくあるべきだな」
休之府錄事參軍韓延之,故吏也,有幹用才能。公未至江陵,密使與之書曰:「吾處懷期物,自有由來。今在近路,正是諸人歸身之日。若大軍登道,交鋒接刃,蘭艾吾誠不分。故具示意,并示同懷諸人。」延之報曰:「劉裕足下,海內之人,誰不見足下此心,而復欲欺誑國士!天地所不容,在彼不在此矣。來示言「處懷期物,自有由來」。今伐人之君,啗人以利,真可謂「處懷期物,自有由來」者矣。吾誠鄙劣,嘗聞道於君子。假令天長喪亂,九流渾濁,當與臧洪遊於地下,不復多言。」公視書歎息,以示諸佐曰:「事人當如此。」
休之が府の錄事參軍の韓延之は故吏にして幹用なる才能を有す。公の未だ江陵に至らざるに、密かに使いて之に書を與わしめて曰く:「吾が期物を懷きたる處、自ら由來を有す。今、近路に在らば、正に是れ諸人が身を歸する日たり。若し大軍の道を登り、鋒を交え刃を接さば、蘭艾を吾れ誠に分かたず。故に具さに意を示し、并せて諸人に懷きたるの同じきを示さん」と。延之は報えて曰く:「劉裕足下。海內の人、誰が足下が此の心を見ず、而して復た國士を欺誑せんとさんかさんか! 天地の容れざる所在らば、彼れ、此に在らざらん。示し來たる「處懷期物,自有由來」が言、今、人が君を伐たんとせるに、人を利を以て啗いたるは,真に「處懷期物,自有由來」と謂いたるべきならん。吾れ、誠に鄙劣なれど、嘗て君子が道を聞く。假に天をして喪亂を長ぜしめ、九流を渾濁せしむらば、當に臧洪と與に地が下にて遊ばんとす、復た多きは言せず」と。公は書を視て歎息し、以て諸佐に示して曰く:「人に事うるは、當に此くの如きなり」と。
(宋書2-8_直剛)
韓延之
その名声が知られていた、という事以外宋書は何も紹介しようとしない。そう言うとこだぞ宋書さん。それにしてもこの人の手紙は実にロックである。うちの主君じゃアンタに勝てない、だから何だ? 何でそいつを理由にお前なんぞに仕えなきゃいかんのだ? なんて、そうそう言えるセリフじゃないだろう。そりゃ劉裕も感嘆しますわ。
臧洪
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