第39話 魍魎少女、恋語り
牡丹を含めた数人の魍魎の少女たちは、何やら楽しそうに話している男の魍魎たちを木の陰からこっそりと眺めていた。
皆の視線の先にいるのは
「やっぱり緯澄さまはいつ見てもかっこいいわ。長の側近になられてから一段と凛々しくなられて」
「そうね、素敵ねぇ」
「あっ、そういえば
突然話を振られた明野は、「え?」という顔で皆を振り返った。
皆の視線が彼女に集中すると元々の紅い顔を更に紅潮させて、
「な、何よ、急に?」
「ここ最近珂源とよく一緒にいるじゃない? この前も二人で月を見に行ったんでしょ?」
ニヤニヤしながらそう口にした別の友人の
「何で知ってるのよ? 確かに、一緒に月を見に行ったけど……」
「どちらから声を掛けたんです?」
その会話に牡丹も加わる。明野は更に顔を紅潮させた後、視線を逸らして、
「……珂源の方から」
その言葉に驚きの声が上がる。
「へえ、意外ね。てっきり
「私も同じこと思ってたわ。あんまり積極的な印象もないし」
その後もわいわいと話が盛り上がる中、ふと牡丹が顔を向けた先には二羽の雀が小川の近くで毛づくろいの真っ最中。
毛づくろいをされているもう一羽の雀は気持ちよさそうに目を細めて微動だにしない。
よく見ると、二羽とも少しその見た目が違う。
一羽は頭の色が濃く、もう一羽の方は頭の色が薄い。それに毛づくろいをしている雀の羽は黒くて長いだけでなく、幅が広く色も濃かった。
二羽の見た目が違うことから恐らく雄と雌なのだろう。
頭の色も羽の色も濃い方が雄だ。
毛づくろいが終わると、すぐ傍にある小川に仲良く移動して水浴びを始めた。
そんな二羽の仲睦まじい光景を見ていた牡丹の脳裏にある考えが浮かんだ。
(もしかして、清流……)
「牡丹さま、どうしたの? 考え事?」
雛百合に呼ばれて牡丹は我に返った。彼女は覗き込むようにこちらを見ている。
「いえ、何でもないです。大したことではありませんから」
明野たちに視線を向けると、いつのまにか恋愛の話からこれから本格的に来るであろう梅雨の話に話題が変わっていた。
梅雨時期に悩まされる髪の手入れについて真剣に話している。
牡丹と雛百合もその話題に混ざるべく、彼女たちに顔を向けた。
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