魔法から近代産業の黎明期へ。222歳の魔導士が生きる!(たまに15歳)
- ★★★ Excellent!!!
個人は単体で生きてるわけではありません。
家族があり地域があり国があり、この世界がある。
キャラクターと世界。一点と無限大は常にリンクしています。
その繋がりを行き来しながらサラリと読ませることが書くことの醍醐味かもしれません。
この物語は魔法の時代から科学の時代への移行期。近代産業の黎明期です。
国は混乱のただ中。拡大する産業の労働に駆り出される子供達。流入してくる移民者。チンピラの縄張り争い。ハチの巣をつついたような様相。
主人公は二百年ものあいだ魔法の力で弱小国を外敵から守ってきた魔導士。
国の英雄です。
隣国との和平によりお役御免となった彼女が、王宮を出て旅に出るところから話が始まります。
精霊石によってもたらされるルツの濃度で変化する彼女。時には少女に時には老婆に。ただ話っぷりはいつも姉御口調(笑)
高慢さはかけらもなく、自分が守ってきた国を大切に思っている一人の人間として描かれます。
出会う人物たちもとても魅力的です。
重要な役どころは、孤児でありながら好奇心旺盛でとても賢い子供。
この物語のワトソン役の小説家。狼の顔をした人狼卿。誠実な青年車掌。
夜の闇を切って進む蒸気機関車。人里離れた作家の家。廃墟となった図書館。
九龍城砦を思わせる雑多な街。
どこかノスタルジーを覚えさせる国で、過去の英雄が今の時代を生きる。
変わりゆく時代のなかで、彼女がどう変わり何を変えていくのか。
堅実でありながら軽やかな筆致と、抜群の構成力を持つ作者の作品。
今後の展開が楽しみな作品です。