第81話 in the case of Rui

3度目の抗がん剤治療


一つ変化したこと


通いで治療することにした


家にいたいという母親の意向で


日に日に痩せていく母


食欲もないのか食べれない日々が続く





季節は春


だいぶ暖かくなって


一年で今が一番過ごしやすい季節


外を歩いていると


新入社員が緊張した顔で歩いていたり


学年が上がった学生や


新しく幼稚園に上がったのであろう


子供たちの元気な笑い声で


外の世界はフレッシュなエネルギーで


溢れかえっている





世の中はこんなにも明るく


活気に満ち溢れているというのに


我が家の春はいつ来るんだろうか


確かに時は過ぎてるけど


俺と母親とおばぁちゃんの時間は


止まってしまっている





母親とあーだこーだ言い合っていた


あの頃が懐かしい


もうあの日には戻れないのか





ガチャ


Rui「ただいま」


おばぁちゃん「Rui、お帰り」


「母さんは?」


「今寝てる


今朝から寒い寒いって言ってるから


電気毛布をね」


「電気毛布、暑くないのか?」


「寒いらしいのよ」


「そっか」


「夜も痛みが強いみたいだから


先生に言って痛み止めもらわないと」





「通院にしたことだし


何か新しい治療試してみないか」


「Mikiがなんていうか」


「おばぁちゃんからも説得してみてよ」


「......iー」


「.....i−」


「Mikiが呼んでるよ」


「あぁ」





Rui「ただいま」


母親「お帰り」

 

「寒いんだって?」


「今は大丈夫よ


それより医学部受けるの?」


「えっ、なんでそれを


まだ決まってないよ」


「母さん反対すると思って黙ってたの?」


「いや


というより受かるかも分かんないし」


「あなたなら大丈夫よ


宇宙航空学科は?受けないの?」


「あー、一応受ける」





「そう、母さんあなたの人生を


変えちゃったから、ごめんね」


「何で謝るんだよ」


「お金のことは気にせずに


医学部受験しなさい」


「まだ決めてないんだって」


「Reiならできる


それで将来母さんみたいな人


助けてあげて....ほしい」


「いやいや、母さんを助けるんだよ」


「ふふ、ありがとう」





「それより、新しい治療受けないか?」


「.....」


「母さん?」


「.....」


寝てるのか


何も進まないまま時間だけが過ぎていく






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