第70話 in the case of Miku Rui

Miku


ピコン


先輩だ


先輩「Mikuちゃん最近


俺のこと避けてる?」


避けてるか避けてないかと聞かれたら


確かに避けてる


Miku「避けてないですよ」


まさか避けてますとは言えない





「ほんとに?じゃあ俺の気のせいかな」


「避けてないですよ


そういえば、受験勉強どうですか?


先輩そろそろ試験ですよね?」


「明後日からはじまる」


そっか、もう試験はじまるんだ


そんな時につんけんしてる場合じゃない


先輩どこの大学行くんだろう





「明後日からなんですね


どこ受けるんですか?」


「俺?俺は星南一本だよ学部は経済と国際」


星南、さすがだな


私には難しそう


「俺の受験終わったら


水族館に行くって約束まだ覚えてる?」


もちろん覚えてる


「覚えてますよ」


「良かった、終わったら行こう」


中野さんとはあれから


どうなったんだろう





「中野さんとはどうですか?」


訳の分からない質問をしてしまった


どうって聞かれてもって感じだよね


ピコン


「中野さんとは誘いを断ってから


それっきりだよ」


中野さんと結局出かけなかったんだ


ピコン


「Mikuちゃん来ないって言うから」


そういう風に言われると、期待してしまう


「ごめんなさい、予定があって」


「まぁ、いいんだけど


じゃあ、受験とっとと終わらせてくるね」


そうだ、明日行かなきゃ





ガランガラン


先輩が星南大学に受かりますように


それからそれから


いや、欲張らない


今日は先輩の受験合格祈願に来たんだから


今日日曜日で良かった


明日は試験の日


お守り渡せるかな





Rui


ガラガラ


母親「Rui」


Rui「よう」


「嬉しい、Rui来てくれて


Rui、髪の毛伸びてきたね


やっぱり若いって素晴らしい」


「そうか?また剃ろうかな」


「Rui前の髪型の方が似合ってるよ


顔が洋風だから坊主は似合わない」


俺に気を使ってくれてるんだよな





Rui「はい、いつものいちご」


母親「ありがとう


今の時期いちご売ってないでしょ」


「探したよ、母さんのために」


「フフ、ありがとう」


おばぁちゃん「Rui、今日塾は?」


「今日は休み」


「どう?塾の成果出てる?


回数増やしてもいいんだからね


お母さんに遠慮しないで」


「塾は毎日行くもんじゃないから


だいたい聞けばあとは


自分でやった方が効率がいい」


「できる子ってのはそうなのかしら〜


いたたたた」


「大丈夫か?


呼吸も苦しそうだし


看護婦さんに来てもらうか」


「大丈夫、ちょっと横になる」





前より話す時間が減ってきた気がする


抗がん剤治療には限界があると思う


俺なりに民間療法も調べた


今日はその話をしようと思ったんだけど


今はタイミングではないのかもしれない





Miku


星南大学の正門前


時刻は8時


そう、先輩を待っている


私のお守りを渡したところで


先輩の合格が決まるわけではないんだけど


ここ最近避けてしまっていた


せめてものお詫びに


先輩は中野さんと仲良くしているんだと


思ってたから


中野さんの誘いを断ったと聞いて


またこうやって会いにいく私


現金なもんだ


これが人ってものなんだね


昔の自分からは考えられない





最近ふと思う


おそらく、間違いなく先輩はここの世界の人


私は特別missionのために降りてきた


だからmissionを進めていったら


上の世界に戻らなければいけない


先輩はこの世界で一生を終えるけど


私にはそれができない


普通転生者ならそれが叶う


あんなに帰りたかったのに


先輩に出会ってからは帰りたくないと


思う自分がいる





「.....kuちゃん」


ほんと現金なもんだ


先輩「Mikuちゃん」


「えっ」


「やっぱりMikuちゃんだ


どうしたの?真剣な顔して」


「いえ、何でもないです」


「どうしたの?こんなところで」


「あっ、そうだった、先輩これ」


「もしかしてお守り?」


「はい、あっでも先輩すでにお守り


たくさん持ってますね」


「親とか親戚とかね」


「じゃあもういらないですね」





「いや、Mikuちゃんの御守が


一番効果ありそう、ありがとう」


そう、先輩はこういうことを


サラッと言う人


「試験、頑張ってください」


「ありがとう


Mikuちゃんのお陰で頑張れるよ


行ってくるね」


「はい、いってらっしゃい」 




 

Rui


ピコン


おばぁちゃんからだった


おばぁちゃん「今日もMiki辛そうだから


病院泊まるね」


「大丈夫か?」


「大丈夫よ、いつものだから


あなたは心配しないで


今できることをするのよ」


「分かった」





きっと母親も俺に見られたくないことも

 

あるだろう


頭痛、倦怠感、吐き気、痛み


さまざまな症状が日々母親を襲う


少し前におばぁちゃんに民間療法のことを


伝えた


通いで他の病院も通うのは


今の母さんには辛いだろうということと


今の病院に見捨てられたら終わりとも


言っていた





今の病院は、民間療法をどちらかというと


否定している


考え方が違うんだろう


でも良くなってるとは思えない母親を


黙ってみているのは辛い


手術ができないなら


手術以外の方法で助かる方法を


探すしかない


明日母親の状態を聞く予定になっている





「.....山くん」


無力な自分に嫌気が指す


先生「栗山くん」


「えっ」


「栗山くん今お母さんが大変な時期だから


受験どころじゃないかもしれないけど


もともと勉強できるんだし、頑張ろうね


悩みとかあればいつでも相談に乗るから」


「はい」


「栗山くん第一志望は


星南大学の宇宙航空学科でいいんだよね」


宇宙航空学科


宇宙航空学科


そこで俺は何を.....


「いや、今変えました、医学部にします」












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