第63話 Every day -in the case of Rui and Miku
Rui
母親「いたた」
Rui「大丈夫?」
「うん、体ひねったみたい」
「大丈夫か?」
「手術して間もないし
今日会社休んだ方がいいよ」
「そういうわけにもいかないわよ」
手術して3か月
一応日常生活には戻ったけど
胃を切除したこともあり
食事は何回かに分けて食べるようになり
量も以前ほど食べられなくなり
味の薄いものあっさりしたものを
好むようになったり
明らかに痩せてしまった
仕方ない、手術をしたんだから
仕方ないと分かってはいても
虚しくなる時がある
Rui「ご飯は?」
母親「さっきお粥食べた」
「もう少し栄養のつくもの食べたら?」
「食べたくないのよ
手術前にこってりしたもの食べといて
良かった」
確かに手術前はよく食べていた
ステーキとか串カツとかお好み焼きとか
今じゃ考えられない
今思えば
手術するから食べていたのだろう
Rui「うん、今日は休んで
横になった方がいい」
母親「でも.....」
「家計が心配なら大丈夫だから
俺来週からバイトするから」
「えっ、お母さんそんな話聞いてない」
「だって今話した、はじめて」
「あんた、受験」
「もちろんするよ」
「受験生がだめよ、バイトなんて
勉強に集中しないと」
「俺をなめてもらったら困る
そんな程度で成績落ちるような
馬鹿じゃない」
「でも」
「もう決めたから」
「ほんとそういうとこ頑固
絶対に聞かない」
「母さんに似たんだよ」
「フッ」
俺と母さん、全く正反対
そんな俺らの唯一の共通点
もう一つ見つけた、頑固なところ
やっぱり親子だな
Miku
先輩と遊園地に行ってから3か月
あれから映画館にも行った
それからほぼ毎日メールを
するようになった
たまに学校の休み時間に話して
ほぼ毎日メールして
たまーにどこかに遊びに行く関係
これを世間的に友達と言うんだろうか
いや、敬語だしなぁ
何回かこの関係性を聞こうと思ったけど
なんとなく聞けないまま今に至る
なぜか昨日、今日と
いつも来るメールが来ない
だいたい夜の20時くらいに来る
2日連続で来ないのははじめて
どうしたんだろう
何かあったのかな
いや、単純に忙しいか
今日は気が向かないだけなのかも
先輩は中学3年生
来年には卒業して離れ離れになる
そこで先輩との関係は終わってしまう
Rui
母親が会社を休んで5日
相変わらず寝込んでいる
Rui「体調どう?」
母親「うん、なんとか」
「病院行った方がいい」
「えっ、ひねった場合
どこに行くの?整骨院?」
「いや
ひねったわけじゃないかもしれない」
「えっ」
「もう一回病院行ってみよ」
「手術した?」
「うん、俺電話してみる」
「Rui、学校」
「今日休む」
「学校から帰って.....」
「それじゃ遅くなるから
今電話してみる」
トゥルルルルル
「はい、桜山総合病院です」
「少し前にそちらで手術を受けた
栗山ですけど」
「はい」
「母の体調が良くなくて
一度診ていただきたいんですけど」
「分かりました
カルテ探しますので
診察券はお持ちですか?」
「はい、今手元にあります」
「診察ナンバーうかがってもいいですか?」
「はい、2020031705です」
「少しお待ちください」
チャララララ〜
優雅な音楽とともに保留にされる
Miku
先輩にメールしてみようかな
私からするなんてなんか負けた気分
いや、勝ち負けの問題じゃない
昔から勝ち負けで判断するのは
私の悪い癖
昔、小学校の時に村上くんと出会って
あの時は、あの頃は
変なプライドや勝ち負けばかり気にして
全く素直になれなかった
だからもう同じことは繰り返さない
「先輩、今何してますか?」
他にも何か入れようと思ったけど
いくら頭をひねっても出てこなかった
いつも先輩が何もしなくとも
盛り上げてくれていたから
Rui
チャララララララ
保留のまま忘れられてるんじゃないかって
ぐらい待たされている
軽く10分はたってるぞ
総合病院だから
ほんとに忘れられてるのかもしれない
仕方ない
一度切ってもう一回かけ直すか
「栗山さん
お待たせしてすみません」
何だ、忘れられてなかったんだ
「もしもし」
「すみません、カルテ探すのに
時間がかかってしまいまして」
「で、あったんですか?」
「はい、ありました」
「今日できれば
連れていきたいんですけど」
「今日ですよね
手術を担当した医師は今日はおりませんが
それでも宜しければ
代わりの医師が担当します」
「お願いします」
Miku
10分ぐらいして
ピコン
あっ、メール来た
「ごめんね、最近メールなかなか
できなくて
受験勉強本格的にするようになって
塾に通いだして
帰りが遅くなったりして
少しバタバタしてた
Mikuちゃんからメールくれるの
はじめてだね、嬉しい
たまにはしないでおいとくもんだ」
またさらっとこういうことを
そっか、そうだよね先輩は受験生
「塾に通いはじめたんですね」
.....そのあとの文章が思いつかない
私は今漫画読んでましたなんて
どうでもいい情報だよなぁ
「明日また学校で会えるの
楽しみにしています」
えっ、ずいぶん大胆じゃない
これじゃあまるで
私が先輩の事好きみたいじゃない
これじゃあ私が負けましたって
いや、変わるんだった
「塾に通いはじめたんですね
明日また学校で先輩に会うのを
楽しみにしています」
送っちゃった
Rui
タクシーを拾ってなんとか病院に到着
「大丈夫か?」
「うん」
「もたれかかってていいよ」
「うん」
「今日予約いっぱいで
予約の合間に
入れてもらうことになったから」
「そう、大したことないんだけどね」
「大したことかどうかは
まず医者に診てもらってからだ」
「坂口さん、3番の診察室に
お入りください」
まだか
Miku
すると間をおかずに
ピコン
来た
「Mikuちゃんからそんな言葉を
聞ける日が来るなんて嬉しい
俺も明日楽しみにしてる」
なんかすごい
何がすごいかうまく言えないけど
コミュニケーションとは
こういうことなんだって思う
いかに今まで自分が誰とも
コミュニケーションをとらないで
生きてきたかがようやく分かった
この世界に降りてきて4年
3次元の物質物体世界だからこそ
体験できる感情
今まではmissionの目的ばかり
気になってたけど最近思う
もっと大事なことがあるんじゃないかって
それを教えてくれたのは先輩
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