第62話 1つの答え
Reila
おばぁちゃんが退院して3か月
骨折した足は治ってると思うんだけど
以前より体がいうことをきかないみたい
おばぁちゃんが入院中に
ほとんどの家事をできるようには
なったんだけど
平日は学校に行ってるから
どうしてもおばぁちゃん任せになってしまう
私がいない間に何かあったらどうしよう
例えば急に具合が悪くなったら
入院を経験してから常に心配
エゴかもしれないけど
おばぁちゃんにはせめて今の状態のまま
ずっと側にいてほしい
私がこの世界にいる間は
私は特別転生者だから
ずっとこの世界にはいない
本来の目的を果たしたら上の世界に帰る
ピコン
メールが来た
Seia
田中さんとはあれから
不思議な関係が続いていた
友達なのか何なのかよく分からない
何にも属さない新たな関係
一つ変化が田中さんが俺のことを
Seia と呼び捨てで呼ぶようになった
完全に田中さんのペースだ
というより田中さんと出会ってから
一度も俺のペースで
ことが進んだことはない
どう見ても釣り合わない
規定通りに着た制服に
これまた規定通りの髪型に眼鏡
それに対し田中さんは
規定通りではなく自分らしさと規定を
ギリギリ超えてる着こなしの制服に
これまた規定をギリギリ超えてる
若干の茶髪にコンタクト
どう見ても釣り合うわけがない
ピコン
メールが来た
Reila
メールが来た
相手は加山Norikoさん
そう、お父さんが昔付き合っていた
しかも結婚まで考えていたNorikoさん
ひょんなことから
昔住んでいた東京の自宅に行ってから
仲が良くなって連絡を取り合うようになった
不思議な関係
普通お父さんが昔付き合ってた人と
連絡を取り合うなんてことはしない
お父さんとお母さんが今も生きていたら
絶対に出会うことはなかった
Norikoさんとは不思議なことに
血縁関係はないのに
はじめて会った時から
はじめてではないような感覚
母親がいない私にとって
頼りになる相談相手
気がついたら色んなことをNorikoさんに
相談するようになっていた
きっと母親がいたら
こんな感じだったのかななんて思う
Norikoさん「あと15分で着くよ」
どういうことかというと
おばぁちゃんが大変ということもあり
月に一回ご飯を作ったり
掃除をしてくれたり
今日がその日
Seia
ピコン
メールが来た
「Sei、今どこ?」
相手は田中さん
Sei、さらに短くなってる
もうこの際SeiでもSeiaでも何でもいいや
今日は水曜日時刻は20時15分
この時間に中学生がどこと聞かれたら
大抵は自宅
俺は地味なんだから
夜遅くまで遊んだりなんかしない
田中さんも分かってるくせに
毎回必ず聞いてくる
「自宅だよ」
田中さんはアルバイトをしている
これまた規則を破って内緒で
これはギリギリではなく完全にアウト
でも田中さんはアメリカンで自由人だから
田中さんを前にすると
この当たり前のように守ってきた規則が
馬鹿馬鹿しく思えてくる
規則は破るためのものという田中さんが
カッコ良く思えてくる
「あと15分で迎えに来て」
田中さんは週3回、月・水・金
アイスクリーム屋さんで働いている
田中さんがアイスクリーム屋さん
なんだかかわいらしい
はじめ聞いた時はおかしかった
そのアルバイトのお迎えに
俺は週3回行っている
嫌々ではなく
むしろ必要とされてることが分かって
喜んでいる自分がいる
「分かった!」
Reila
ガラガラ
Norikoさん「こんにちはー」
Miku「あっ、おばぁちゃん来た!」
おばぁちゃん「みたいだね」
Norikoさん「Reiちゃん久しぶり
といってもしょっちゅうメールしてるから
そんな感じもしないね」
Miku「うん、でも会えて嬉しい」
Norikoさん「そう?
そう言ってもらえると私も嬉しい
ここに来るのが楽しみになってるから」
おばぁちゃん「Noriちゃん、よく来たね
疲れたでしょ?」
Norikoさん「おばさん、こんにちは
そうだこれ
おかずいくつか作ってきたんです」
おばぁちゃん「まぁ、こんなに
いつもいつも大変でしょ」
Norikoさん「全然
自分のためとなると
どうも作る気が起きなくて
Reiちゃんとおばさんが食べてくれると
思ったら
途端に作る気力がわくんです」
Reila「Norikoさん
今日も泊まってくよね?」
Norikoさん「いいのかな、毎回毎回」
おばぁちゃん「Reiちゃん喜ぶし
私も助かるから、是非そうしてって」
Norikoさん「じゃあ、お言葉に甘えて」
Seia
田中さんのバイト先まで15分
田中さんははじめから
俺が迎えにくることを想定して
田中さんの家と俺の家の中間地点で
アルバイト先を探していた
迎えに来るのに遠いのはかわいそうだからと
田中さんなりの優しさだった
これだけ聞くと
田中さんがわがままみたいに
聞こえるかもしれないが
俺も喜んで迎えに行っている
ある意味いいコンビではあると思う
でその中間地点がアイスクリーム屋さん
田中さん「あっ、来た、Sei!」
とうとうメールだけでなく
普段からSeiに変わったらしい
最後はさらに短縮されてSになってそうだ
Seia「ごめんね、待った?」
何に対して謝ってるのか
よく分からないがとりあえず謝る
「うん、待った」
そう返ってくると思った
Seia「帰ろうか」
田中さん「うん」
いつものように
田中さんがアルバイト先でもらってきた
アイスを食べながら帰る
今日はチョコミント
毎回食べたいアイスクリームを
聞いてくれる
唯一ここは俺の主導権で決めることができる
Reila
トントントン
Norikoさん「Reiちゃん、お味噌とって〜」
Reila「はい、わぁいい匂い」
Norikoさん「今日は豚汁とあと
ハンバーグ作るね」
Reila「ハンバーグ大好き」
Norikoさん「このハンバーグね
おばさんのレシピなの」
おばぁちゃん「Noriちゃん
まだ覚えててくれたの?」
Norikoさん「もちろんです
ハンバーグを作る時は
いつもおばさんのレシピですよ」
おばぁちゃん「そう、みほさ.....
Reiちゃんのお母さんも
いつもこのレシピだったって
Noriちゃんそんな話聞きたくないわよね」
Norikoさん「そんなことないですよ
良かった、Reiちゃんのお母さんの味を
食べさせてあげられる」
お母さんの味
私にはお母さんがいた時の記憶はないけど
お母さんの味を食べることができるんだね
「よし
じゃあReiちゃんハンバーグ作るよ
Reiちゃんもこのレシピ覚えなきゃね」
「うん、メモとる」
Seia
Seia「田中さん、お疲れさま」
田中さん「もう疲れたよ〜
今日ポイント3倍デーだし
シングルサイズの値段でなぜか
ダブルサイズの日だから
平日なのに大行列だよ
バイト20時までなのに
30分延長させられちゃうんだもん」
いつものように
バイトのあーだこーだを聞く
田中さん「しかも店長に接客業だし
飲食業だからネイルはやめなさいって
言われた」
Seia「田中さんいつの間にネイル」
田中さん「えっ、昨日」
Seia「バイトの規定で
ネイルは禁止だったよね、確か」
「なんかそんなこと書いてあったかも」
「さすがに飲食店だから
その規定は守らないといけないかもね
衛生面のこともあるし」
「えー、かわいいのに」
「ネイルしてなくても
田中さんは充分かわいいよ」
ずいぶん大胆なことを言ってしまった
Reila
Reila「Norikoさんと料理するの楽しい」
Norikoさん「私も楽しい
きっと娘がいたら
こんな感じだったのかもしれないね」
Reila「私もお母さんがいたら
こんな感じだったのかもしれない
Norikoさんともっと家が
近かったら良かったのに」
Norikoさん「ほんとね〜
でもこれからもお邪魔するね
迷惑じゃなければ」
Reila「迷惑なんかじゃないよ
ね、おばぁちゃん」
おばぁちゃん「私たちは助かってるよ
それにもう年だからね
ほんとに助かってるよ
ありがとうね、Noriちゃん何から何まで
ほんとにありがとう」
Norikoさん「おばさん
そんな.....お礼なんて」
おばぁちゃん「ううん、ほんとに
ありがたいと思ってる
私が亡くなってもReiちゃんのこと
よろしくね」
ドキン
おばぁちゃんからその言葉を聞くのは辛い
Norikoさん「何言ってるんですか
おばさんは長生きしますよ
私もできる限りお手伝いしますから」
Reila「そうだよ
おばぁちゃんはまだまだ」
Reila「おばぁちゃんいなくなったら
私一人になっちゃう」
おばぁちゃん「一人....」
Norikoさん「Reiちゃんは一人じゃないよ
私なんかほんとに天涯孤独みたいな
もんなんだから」
おばぁちゃん「もういっそNoriちゃん
私たちと一緒に住まない?」
Norikoさん「えっ」
Reila「おばぁちゃん、それいいかも
Norikoさんどう?」
Seia
田中さん「Seiにかわいいって言われても
全然嬉しくない」
確かに
Seia「そ、そうだよね
田中さんネイルは規定もあるし
せっかく見つけたアルバイト先だし
店長、ほら何ていうか
田中さんのその自由奔放なところに
わりと寛容でしょ
なかなかそういう店長とは
巡り会えないと思うんだよね
だから今回だけは田中さんが折れたら
また元通り」
田中さん「フフッ」
笑った
田中さん「分かったわよ
今日家に帰ったらネイルはとる
せっかくバイト代でつけたのに
これじゃあ
バイト代捨てたようなもんじゃない」
Seia「そうだよね、申し訳ない」
「何でSeiが謝るのよ
いつも言うけど
あんたに意思はないの?」
「えっ、そう聞かれても
あるはあると思うんだけど
こうやってお迎えに行ってるのも
田中さんの意思でもあり俺の意思でもあり」
田中さん「もういいや、細かいことは
こうなったら私たち付き合う?」
Seia「えっ」
「えっ、じゃなくて答えは?」
Reila
Reila「Norikoさん、どう?」
Norikoさん「えっ、どうって」
Reila「嫌?」
Norikoさん「嫌....じゃないです
でも私は....その」
おばぁちゃん「Noriちゃんが嫌じゃなければ
そうしましょ」
Norikoさん「私....いいんでしょうか?」
Reila「もちろん
私とおばぁちゃんのわがまま
私たちのお願い
だからNorikoさんには
もちろん断る権利もあるから」
Norikoさん「私.....は
私で良ければお願いします」
Reila「やったー、決まり、家どうする?」
Norikoさん「私こっちに引っ越しますよ
でもあの家はどうしましょうか
たかしさんやみほさんやReiちゃんの
大切な思い出の詰まった家」
おばぁちゃん「私たちが引っ越そう
Reiちゃん」
Reila「えっ、おばぁちゃんでも体が」
おばぁちゃん「何言ってるの
まだまだ大丈夫だよ
さっき長生きするって
言ってたとこじゃない
Reiちゃんは転校することになるよ」
Reila「私は大丈夫
おばぁちゃんとNorikoさんが
いてくれるから」
Norikoさん「たかしさんも喜びますね
おばさんとReiちゃんが家に来たら
あとReiちゃんのお母さんも」
Reila「うん」
今日は久しぶりにいい日
Seia
Seia「えっ」
田中さん「えっ、じゃなくて答えは?」
「答え....」
田中さんと付き合うということは
その.....
「田中さんと付き合うってことは
その世間一般的にいう付き合うと
同じでいいんだよね?」
「何言ってるの?
付き合うっていったら
アメリカも日本も共通でしょうが」
「で、どうするの?嫌なの?」
嫌かと聞かれたら
「嫌....じゃないです」
「じゃあ、付き合うのねっ」
付き合う時って
こんなに怒られながら
付き合うもんなんだろうか
付き合ったことがないからよく分からない
そもそも俺に田中さんの彼氏が
つとまるんだろうか
「はい、お願いします」
「うん、よろしく!」
男らしい
「じゃあこれからもお迎えは来てよね」
「も、もちろん
か、彼氏になったわけだから」
「まだ彼氏というポジションまでは
たどり着いてないなぁ
付き合うとは言ったけど」
「えっ」
「あはは、冗談、冗談」
田中さんの場合
どこまでが冗談で
どこからが本気なのかが
いまいちよく分からない
でも一つ言えること
どうやら俺と田中さんは付き合うらしい
突然はじめての彼女ができた
もっと自分とよく似た性質の人と
付き合うのかと思ったら
なんとアメリカンいや、帰国子女の
彼女ができた
逆に違うからいいのかもしれない
うん、きっとそうだ
今日は久しぶりにいい日だ
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