第57話 in the case of Rui

母親「混んでるね、平日なのに


結構待たされちゃうかもよ」


Rui「大丈夫だし、手術する病院が


ガラガラじゃ逆に不安だろ」


母親「まぁ、それもそうね」


Rui「この病院評判はいいんだよな?」 


母親「もちろんよ


特にお母さんの担当の三島先生は


この病院では有名な外科医なんだから」


Rui「話を聞いて判断する」


母親「判断するって


もう決めちゃったんだから


今さら変えられないわよ」


Rui「俺ももう一回調べてみるけど


もっといい病院があれば


そっちに移った方がいい」


母親「お母さんも色々調べたんだけど


テレビに出るような病院は


なかなか手術してもらえないのよ


早く切ったほうがいいっていうのも


あるから」





それもそうだ


はじめに病院を決める段階でできれば


参加したかった





看護婦「栗山さーん


診察室にお入りください」


母親「あっ、はい


思ったより早かったわね」


ガラガラ





母親「こんにちは」


先生「今日ははじめてご家族の方が


お見えですね


良かった、来てくれて


何度かご家族の方はと


お聞きしたんですけどね


一人だっておっしゃるから」


母親「あぁ、いや息子が一人います」


先生「そのようですね


良かった、色々と手続きとかあるので


手術の日程なんですが


なるべく早くした方がいいと思うんですよ


体のことを考えても」


Rui「母は、胃癌なんですよね?」





先生「そうですね」


Rui「ステージは?」


先生「お母さんの場合は、ステージ2です」


Rui「手術で治るんですよね?


そのちゃんと摘出してくれるんですよね?


俺今日はそのことを聞きにきたんです」


先生「はい、どんなことにも確実とは


言えませんが


もちろんそのつもりです」





Rui「そのつもりじゃ困るんですよ


確実と言ってもらわなきゃ」


母親「Rui、やめなさい」


先生「どうしても外科手術を伴う以上


リスクの説明をしなければなりません」


Rui「リスクはリスクとして聞くけど


手術しました、だめでしたでは


困るんですよ」


母親「先生、すみません


Rui、とりあえず先生の話聞きましょ」


先生「いえ、大事なことですから


良かったです、栗山さんに


こんなに熱心な息子さんがいて」


母親「あぁ、はい」





先生「ずっと一人って言ってたから」


Rui「何で呼んでくれなかったんだよ」


母親「いや、だから


親として心配かけたくなくて」


Rui「命に関わることだろうが」


母親「その話はあとでね


先生すみません、続きを」





先生「はい


まず手術ですが2週間後の


4月28日はいかがでしょうか」


母親「4月28ですね


分かりました、その日でお願いします」


Rui「それより前は空いてないんですか?」


母親「この日が一番最短なのよ


あなたは黙ってて」


先生「そうなんです、この日が最短です」


母親「はい、その日で大丈夫です」







母親「もうあの態度はなに?」


Rui「なんか頼りなかった」


「そんなことない、いい先生よ


いい先生といい外科医はまた違う」


「また屁理屈を言う


お母さんはここでって決めたの


Ruiまだお昼だから学校間に合うわ」


「あー、今日は休む」





「言うと思った


仕方ない、どっかでお昼でも食べて


映画でも見に行く?」


「遊ぶ気満々じゃねぇか」


「Ruiと二人でお出かけなんて


そうそうできないからね」


「どういう意味?」


「大学生になったら


彼女とかできてお母さんどころじゃ


なくなるでしょ」





彼女.....か


そこに関しては何とも言えない


母さんの手術が成功する確率よりも


うんと低い


よく分からなくなってしまってるから


どんな子が好きなのか


誰が好きなのか


全くモテないわけではない


ただその気がわいてこない




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