第34話 process of growing
季節は過ぎ
この世界に降りてきて1年と8ヶ月
Rito Reila Seia Miku
最高学年の六年生、1月
卒業まであと2ヶ月足らず
Rito
気がつけば六年生
ここまでの道のりはなかなか険しかった
中学は地元の中学に行く予定だった
双子の弟Fumiyaは受験をして
このあたりでは有名な私立に通うことが
決まっている
相変わらずFumiyaの快進撃は続いている
俺はもう諦めた
対抗したところで勝ち目はないんだから
無駄なことに労力を使うぐらいなら
楽しいことに労力を使う
ようやく離れられるんだFumiyaと
Reila
季節は冬
この凍てつくような寒さにだけは
相変わらず慣れない
ハァハァ
手袋を二重にはめて耳あてをし
いわゆる保温効果が期待できるインナーを
二枚重ねにし、その上からセーターに
コートまで着ているのに芯は冷えたまま
どうしたってこの冷えには勝てない
やっぱり上から降りてきてるからかなぁ
何したって解消されない
これ以上何を着たらいいの?
あのスキー場の一件以来
おばぁちゃんとはさらに打ち解けて
絆が深まったと思う
そんなおばぁちゃんも今年で80才
私願いはただ一つ
おばぁちゃんが少しでも
長生きしますように
おばぁちゃんがいなくなったらなんて
考えられない
いや、考えたくない
おばぁちゃんは永遠にいてくれると信じたい
もうすぐ中学生
地元と言っても歩いて40分の距離に
学校はある
Seia
あれから林さんとは仲良くなったと思う
俺の中では
林さんと遊ぶ機会が増えたことで
次第に男子からドッジに誘われることも
めっきりなくなり
女子からは敬遠されるようになり
俺をとりまく環境は、一変した
でもこれで良かった
これを望んでいたんだから
だからあの時、強引にでも林さんに
話しかけて良かった
判断をよく間違える俺だけど
この判断は、この判断だけは
正しかったと自信を持って言える
シャカシャカ
シャカシャカ
今日も昼休みという一番長い休み時間を
漫画を描くことに費やす
「えっ」
今、林さん何て言った?
「私、地元の中学には行かないの」
嘘
「林さんどこの中学に行くの?」
「私立の中学に行くの」
胸が張り裂けるように痛い
「そ、そうなんだ
てっきり地元の中学に行くのかと
思ってたよ」
そんな大事なことを事がすべて済んでから
聞いた俺は
林さんからしたら俺はその程度の存在
だったということなのか
俺の中で何かが一気に崩れ落ちる音がする
仲良くなったと思ってたのは
俺だけだったんだね
Miku
村上くんを怒鳴りつけて以来
休み時間という休みがつく時間は
すべて図書館で過ごしていた
お陰で読書がすすむ、すすむ
ミステリー小説に限っては
読破しちゃうんじゃないかってぐらい
読み漁った
これは読んだし、これも.....
先月読んでるかぁ
貸し出しの履歴に自分の名前があるのを
確認してようやく思い出す
読みすぎてどの本を読んでて
どの本がまだなのかすら
もはや自分では分からない
えーっとこれは.....
案の定
貸し出し履歴に頼ろうとしていたら
「雨宮さん」
ドキン
そこには紛れもなく村上くん
言葉を交わすのは実にあの日以来だった
「何?」
「あのー.....」
相変わらずの冷たい反応を示す私に
緊張しているのがよく分かる
私だってこんな対応がしたい訳じゃない
黙って、本の貸し出し履歴を
手でなぞりながら確認をする
「俺、実はもうすぐ引っ越すんだ」
えっ、どこに
一瞬声が出てしまいそうになったが
必死に抑えて、平然を装う
「そうなんだ」
その言葉が精一杯だった
「だから、雨宮さんとは同じ中学には
行かない」
別に同じ中学に行く約束はしてない
「そう、元気でね」
「うん、最後にそのことだけ
雨宮さんに知らせたくて」
「......」
スタスタスタ
(彼が去っていく)
ガラガラ
村上くんは何で怒鳴りつけた私に
わざわざ伝えにきたの?
彼の中で私は憎い存在であっても
仕方ないのに
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