第28話 Each of the day to day

Rito


「Rito、放課後サッカーしよ」


「おー」


「放課後、グランドに集合な!」


「分かった、あとでな」





放課後サッカーをするっていう


新たな楽しい予定ができてしまったから


気分はもう放課後


実際は5時間目、しかも算数


この時間は給食も食べ終わって


一番眠たくてやる気がでない時間でもある





これが体育とか美術とか図工の時間だったら


もっとやる気が出るんだけどなぁ


いっそ先生に提案してみようかな


5時間目は集中力が途切れる時間だから


体育にしませんかって


きっと俺だけでなくみんなもそれを


望んでいると思う





そんな俺もちょっとした変化が

 

たまたま美術の時間に描いた絵が


先生の目に止まり


区のコンクールに申し込むことになった


もうすぐその結果が出る





できれば最優秀賞をとりたいけど


最低でも入賞はしたい


入賞して俺の家での株をここで一気に


上げておきたい





日頃から習い事の多いFumiya は


株が上がりっぱなしだ


水泳で進級したとか


英語のスピーチコンテストで入賞したとか


塾のクラスが上がったとか





仕方ない


俺は習い事を放棄したんだから


双子というのはその立場になって


大変さを痛感する


年が同じというだけで


顔が似てるというだけで


何かと比較対象にされる





親だけでなく先生、友達


ある時は親戚からも


これが年の離れた兄弟なら


ここまでは比較されないと思う





Reila


パラパラパラ


パラパラパラ


今日は休みの日


近くの図書館である記事を探してる


そう、私が引っ越す原因となった


お父さんとお母さんが亡くなったことに


ついて書かれている記事を探してる





おばぁちゃんにいくら聞いたって


私のせいじゃないからってはぐらかされるし


まさか学校の子に


私のお父さんとお母さんが


亡くなった理由を教えてなんて聞いたら


頭がおかしくなったと思われる





私の記憶は10才からだけど


その前に別の魂が上原Reilaとして


10才までをこの世界で


過ごしているんだから





ないなぁ


どこかにあるはず


ニュースになったぐらいだから


絶対新聞の記事にもなってるはず


パラパラ


パラパラ





あっ、これだ


こんなに大きく取り上げられてる


はじめは一家三人行方不明になってる


交通事故ではないんだ


北海道のスキー場で行方不明


この時、北海道にいたんだ


難しい漢字があって分かりづらい


さかのぼって読んでみよう


  



Seia


「は、林さん」


彼女がびっくりした顔で


ただ黙って俺を見ている


そりゃそうだよな


今までずっと同じクラスにいて


話しかけるチャンスは


いくらでもあったのに





いじめにあうかもしれないからなんて


そんな情けない理由で


今日の今日までタイミングを


逃してきたんだから


今さら何?と思われても仕方がない





「は....い」


返事がかえってきた


どうしよう


何の話をするかよく考えてなかった


俺の馬鹿





「あっ、いや、そのえーっと


漫画、すごく上手だね」


そうだ、漫画の話題があるじゃないか


俺だってここに来て漫画という存在を


林さんの絵から知って


今では漫画大好き人間だ





「別に、他にすることないから」


予想に反して林さんの反応は


冷めたものだった


いや、ここでひるんではいけない


せっかく話しかけたんだ





「いや、上手いと思うよ


漫画好きの俺が言ってるんだから


間違いない」


しまった


緊張のあまり今度は上から目線に


なってしまった





「フッ」


えっ、林さんが笑った


多分いや間違いなくはじめて笑った


「上原くんに褒められても」


確かに


ただの漫画好きな俺に褒められても


彼女からしたら


何のありがたみもないだろう





でもいける


彼女と仲良くなれるチャンス


「良かったら林さんの漫画見せ...」


「上原くん、私に話しかけない方がいいよ


いじめられるから」





えっ


「上原くんもいじめられるのが嫌で


今まで私に話しかけなかったんでしょ


だったらそれは正しいことだと思う」


ドキン





ガタッ


スタスタスタ

(林さんが歩く音)


ガラガラ


その言葉を言い残して


林さんは教室を出て行ってしまった





Miku


リタイアしたいけどリタイアはできない


来週最悪なことに遠足がある


何が最悪って


グループ決めをしなければいけない


普段誰とも関わっていないのに


どうやってグループを作ればいいの?





特に入りたいグループもないし


周りは日頃仲良くしている子たちと


当たり前のように固まって


グループがどんどん出来上がっていく





5人グループが最終的な形だから


人数が足りてないところに入るしかない


足りてなさそうなグループを見渡す


あそこはうるさい子たちの集まりだから


避けたい


あっちは男子しかいないし


あそこは真面目ちゃんグループかぁ


この中で決めるなんて無理





無事にきっちり


5人グループが作れた子たちが


いつもよりさらにはしゃいでいる





「雨宮は一人か?」


「.....」


「誰か雨宮を誘ってあげて」


誘ってあげてって


そんな気の毒な子みたいな言い方しなくても


グループが決まってないことは


別にどうでもいいの


それよりそもそもこの遠足自体が嫌





ヒソヒソ

(えー、Mikuちゃんいるとシラケる)


(ねー、いちいち注意とかしてきそう)


(何話していいか分かんない)





「じゃあ、先生が決めるぞ」


男子チームの一人がそ~っと手を挙げていた


「村上、お前マジかよ、あの雨宮さんだぞ」


「雨宮さん良かったら」


「雨宮、村上のグループでいいか?」


いいも悪いもそこしかないんだから










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