第22話 傘で殴り続ける男なのさ!
あるお店での話。
郊外のショッピングセンターにテナントとして入っているお店。
店長と副店長、そして、パートやバイトで構成する一般的なお店。
そこの40歳過ぎの店長が荒くれ者で、どこの店に転勤になっても直接暴力は振るわないが、部下に対して暴言を吐いたり、気に入らない事があるとゴミ箱を蹴りあげたり。
かなり偏差値の高い大学を出ていて、高卒が多い現場で、プライドがそうさせているのか?
こんな奴、何でクビにならないのかと誰しも考えるが、オーナー社長の友人の息子で縁故入社らしい。
そして、いいとこのお坊っちゃま。
問題児で自分から会社を辞めてくれるように通勤時間がかなりかかる郊外の店に飛ばされたという感じだった。
後から転勤してきた副店長。
彼は元ヤンキーというより本格的な悪をしていたような人だが、仕事に対しては責任感もあり真面目な男。
本部も荒くれ者の店長には彼くらいの男しか部下は務まらないと考え同じ店に転勤させたのだろう。
その店長はどんな人が部下に来ようが、暴言や暴力的な振る舞いをやめなかった。部下となった副店長は普段は我慢して接していたが、この店長がどれ程の輩かを見定めていたようだ。
数ヵ月過ぎた頃、その店長なんぞの暴言に対して反抗しても大したことない人間だと判断したのだろう。
ある日、狭い事務所でこと。
副店長の些細なミスにつけ込むように暴言を吐いたり、バカにしたり。
その時、副店長はおもむろに置いてある傘を手に取り、店長を殴り続けた。
傘の先端はかなりの凶器になるので使わず、傘が折れるまで店長の頭や体を殴り続け、また、傘の柄の固い所でもガンガン殴り続けた。店長の暴言に我慢の限界だったというより、いつかやってやろうというようなものだった。
事務所から店長の悲鳴が聞こえ、売り場から他の従業員が駆けつけたが、誰も副店長をとめなかった。
みんな、副店長が私たちの代わりに店長を懲らしめてくれているという雰囲気で売り場を気にしながら、殴り続けられる店長を見ていた。
店長は応戦しなかった。それは、店長として喧嘩してはいけないという認識よりも、単にビビって何も出来なかっただけ。
副店長は何もなかったように売り場へ。ほかの従業員からも絵顔で迎えらた。
事務所では半泣きで血まみれの店長が本部にSOSの電話をしていた。
自分にも非があると感じていたのか、110番通報はしなかった。
本部はこの件に関して副店長に口頭注意はあっても自宅謹慎や解雇などの処罰は下さなかった。
店長も副店長も他の店に転勤になった。
店長は副店長に降格され、古参の店長の部下となった。
その数年後、死んだ。
普段から辛いものが好きで、それが原因だったらしい。
辛いもの食って暴言吐いていたその店長は死んだ。
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