第20話 実質14時間労働の途中でね!

店の営業時間は年々長くなる。

平成も終わろうとしているが、昭和の時代には店の営業時間は10時から19時までがほとんどだった。

コンビニの台頭で、さまざまな小売り店舗の営業時間が延び始めた。大手GMSでは食品売り場だけ24時間営業になったり。

他の業態の大手小売りチェーンでも24時間化や深夜24時まで営業する店舗も当たり前になった。

中小企業の小売りチェーンも追随し、社員を低賃金で働かし、また、パートやバイトを最低賃金で使いながら長時間営業をしている。

社員に関しては店長や副店長、主任などの肩書をつけ管理職扱いにして残業代を支払わない。管理職手当の中に残業代も含まれるということになっている。経営者からすれば、「管理職手当を払っているのだから、残業してもらわないと困る!」という認識。

中小企業の小売りチェーンは賃金も低く、有給休暇をはじめ福利厚生も満足に得られず、離職率も高い。

日々、最低限の人員で店を運営している。

社員は店長と副店長ふたりで、他の従業員はパートやバイトという店も多い。

店長か副店長、どちらかが休日だと、どちらか一方が開店から閉店までを過ごすことになる。

店長が休日の日、副店長が8時半に出勤してきた。店のオープン時間が9時だから開店準備などで30分前の出勤でもギリギリ感がある。

店の近くに暮らしていればいいが、通勤に1時間半ほどかかるのであまり早くに出勤するのもつらい。

開店準備を手伝うパートと二人で店を開ける。

商品が大量に納品される日はもう一人パートを開店から加えるが、普段は社員とパートの二人でお客をさばく。

店の規模にもよるが、基本的にはどこの店も社員は最低限しかいない。

午前中の間に前日の売り上げ金を近くの銀行に入金しなけらばならない。

午後にずれ込むとすぐに本部から催促の電話がかかってくる。

自転車操業なのかと疑ってしまうほどだ。

売り上げ入金のついでに釣銭の両替も済ましておくが、パートに頼んでも「お金を持ち歩くのが怖い・・」などと断られることが常で、社員が急いで銀行へ行く。

お昼までのパートが帰り、入れ替わりで夕方までのパートが出勤してくる。

頃合いを見て狭い事務所で昼ご飯にする。昼ご飯も菓子パンやおにぎりで済ます。

店が忙しくなり、売り場から応援要請のベルが鳴ったらすぐに戻らねばならない。

カップ麺すら食べられない・・・・

だいたい昼ご飯は14時過ぎだ。

そんな時間帯に合わせたように、問屋やメーカーのセールスが訪店してくる。

対応に追われ、昼ご飯も休憩時間もウヤムヤになり、結局15分くらいしかお昼休みがなかった。

売り場に戻ると、若い主婦パートが「保育園から子供が熱をだしたと連絡があった」と言い、突然帰ってしまう。

夕方の学生バイトが出勤してくるまで、ワンオペだ・・・・

学生バイトが時間通りに出勤してくれることを願うばかりだ。

ゼミやサークルが延びて遅れてくることもある。

それでもいいから、休まないで!!と願うばかりだ。

時計を見るとまだ15時過ぎ。

閉店時間が22時、それからレジ清算や後片付けをしたら今日も退勤は23時前。

あと8時間もあるよ。

8時間ってこの国で基準となる一日の労働時間じゃないの??

既に6時間以上働いて、休憩も昼ご飯もろくに食べられず。

まだ8時間働くって何なのか??

自分はこの国の一員ではないのだろうか??などと考えてしまうが、ワンオペの忙しさにそんな思いもかき消されてしまう。

17時。

学生バイトが定刻に出勤してくれた。

ありがとう・・・


閉店後、今夜も終電に間に合うように駅へ走る。

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