第138話 変身
「息子よおおおおお! 炭に火を放てえええええ!」
「父上仕事はどうしたでござる?!」
「栄転決まって帰ってきた。いや栄転というか移籍というか転職というか」
ウェ?!
「お義父さんウチの取引先だったからこの際だしいいかなって」
「ちょっ、レイミさん?!」
毎度お馴染み定番のそれ字が違うでござる! いや将来はその予定のつもりだけど! 今はまだ違うでござる!
「何も起こすなって言ったのにあの始末だから仕返しよ仕返し」
「おお、我が息子がご迷惑をお掛けしたようで申し訳ない」
「いえいえ結果オーライでした」
「父上そういうの恥ずかしいからマジでやめてくださいでござる!」
「あれ? 一人足らなくない? リエッセさんは?」
「あー、連絡着かなかったわよ? 電話掛けてもLIMEしても返事来ないから諦めた」
「ああ、こんな時に一番呼びたいお方がおられないとは悲劇でござる…」
白いツンデレ狂犬の思いつきによって皆で浴衣で集まりバーベキュー大会になってしまったでござる。リエッセさんの浴衣姿見たかったなあ。
「息子よ、リエッセさんとは誰だ?」
「吾が輩のお付き合いしてる人でシュー」
「あのシューティング・スターだって。あのロイヤルセブンの一員なんだって!」
「にーちゃん全部言われてる」
「妹君ーー!」
「なんなら私達も正体バラしちゃっていい?」
ウェェェェェ?!
「私達全員ロイヤルセブンでーす! 私リーダーの【天雷】ターミガンことレイミ・シルフィ・ムサシノでーす!」
ちょおおおおおお! この人マジで言った!!!
「副リーダーの【見えざる影】ファントムこと天乃宮朋美でーす。お兄ちゃんとお姉ちゃん、妹の4兄妹でーす」
「イエーイ! 【氷結の野獣】ファングことシオン・アスター!」
「隠れ家サロン副店長、【森の妖精】ナリアことリーシャ・エリシオンでーす」
「
フランス貴族になった覚えはないんでござるが!!!!!!
「はいはーい! 【鋼鉄姫兵】ヘヴンズ・ミスことスカイ・アルストロメリアでーす!」
「おまけのスターチス・アルストロメリアでーすー」
「やる気なさすぎー!」
「だってオレはロイヤルセブンじゃねーし」
「あらやだ勢揃いねえ」
「みんなお兄ちゃんのお嫁さん?」
「そうでーす!」
「あと今日欠席の【硝煙の貴婦人】シューティング・スターことリエッセ・ダリア・アルシオーネがいまーす!」
ああもうやだ誰かどうにかして欲しいでござる…。なんなのもうこの人達。世界の秘密じゃなかったの? 国家機密だったんじゃないの?
「皆さん!!!」
おお! 父上! 一言喝を入れてくれるでござるか!
「サインください!!!!!」
期待した吾が輩が馬鹿だったッ!!!!!!
「さ、そろそろ焼けてきたから音頭取って」
「ええいこうなりゃヤケでござる! 皆さんお手を拝借、カンパーイ!」
「「「「「カンパーイ!」」」」」
ブバァァァァー! これお酒でござる?!
「引っ掛かったわねバカが! ウーロン茶じゃなくてウーロンハイでしたー!!!」
「ちょっ、妹君もスーさんも飲んじゃダメでござる!!!」
「え? おいひいよ? ひっく」
あかーん!!
「ござるくん大丈夫よ! ウチのコネでなんにもなかったことになるから」
「100インチテレビ持ってきたから映画見ましょー」
いやいやいやリーシャさん人んちの庭になに持ち込んでんでござるか!! なんか植物がツタがウニョウニョしてるんでござるが!!
『突然の記者会見ではありますが、我が皇国、第五皇女であるリエッセ・ダリア・アルシオーネは隣国の皇太子殿下と婚約することになりました。つきましてはかねてより参加していたロイヤルセブンは脱退しこれからは皇務を…』
あんじゃこりゃあ!!!!
『突然の記者会見ではありますが、我が皇国、第五皇女であるリエッセ・ダリア・アルシオーネは隣国の皇太子殿下と婚約することになりました。つきましてはかねてより参加していたロイヤルセブンは脱退しこれからは皇務を…』
な、なにいいいいいいいいい!!!
「ちょっ、聞いてないわよ? 大使館に電話してみるわ…切られた!」
「やられたでござる…。リエッセさんは皇族を抜けるために説得しているけど上手くいってないと…」
「んで電話じゃラチが明かないから直接話をしに帰ったら取っ捕まった、か」
記者会見にリエッセさんの姿はない。スポークスマンが質問を許さずただ一方的に話しているだけでござる。
「お、お兄ちゃん…」
「リエッセさんは必ず取り返すでござる」
バキッと右手に持っていた割り箸が折れる。
「バカ言わないでよ。相手は国家なのよ? しかもロイヤルセブンのメインスポンサーの内の一つよ? そんなところと喧嘩なんか出来るワケないじゃない」
「たった今電話切られたでござる」
「そうだけど…、でもあなたやる気マンマンでしょ!」
「知らぬ!!」
「いきなり乗り込むつもりでしょ!」
「存ぜぬ!!」
「それだけは絶対にダメよ!」
「思い出せぬ!!」
「ボケ老人ね」
「じゃあこのまま指咥えて見てろとでも言うか!! 我慢ならんぞ!!」
「そんなこと言ってない!」
「やめなさい二人とも。すぐにでも結婚式って話じゃなさそうだし、タケちゃんは口調戻ってるわよ。ねえレイミちゃん連絡だけでもどうにか…」
『なお挙式は一週間後執り行う』
「あら?」
「オレァクサムヲムッコロス!!」
もう許さんでござる! リエッセさんの国ってことは八人目の正体が吾が輩だってことも知ってるはずなのに! そんなに吾が輩が気に入らないでござるか!
「やめんか小僧」
こめかみに入る青筋が破裂してしまいそうなほど頭に血が上がり、吠える吾が輩を何者かが抑えたでござる。
「なにこの黒猫。どっから入ったの?」
「だから言うたじゃろ、調子に乗るでないと」
「織田信長…」
「ワシの懸賞金30兆円渡しに来たのじゃ」
「カードと通帳の発行に手間が掛かりました。どうぞ」
黒猫に…真っ黒い浴衣を着た女性が立っていた。なんなんでござるかこの人。長い髪や肌どころか、伸びている爪や目まで真っ黒い…。唯一虹彩が金色で蛇みたいな瞳をしているでござる。
「おねえさん、だーれ?」
「側近のハルフェティと申します。以後お見知りおきを」
「こんなもの…!」
渡されたカードと通帳を握りしめる。こんなものがあったって、使ってあげたい人がいないんじゃ意味がないでござる。
「お主、使い道決めとったんじゃろ」
「…皆で過ごそうって。もっと大きい家建てて皆で過ごそうって。ホントに法律も倫理も何もかも振り切って皆と一緒になれるんなら…一緒にいようって」
「30兆の家? それウチより広くない?」
「どんな家建てるつもりなの?」
「そっか…。お狐さまー?」
「はーい…」
庭の隅からお師匠さまが現れたでござる。しかも九本の尻尾を出したままで、ちゃっかり肉ととうもろこしを食べてるでござる。
「お師匠さま?! なんでここに?!」
「結界張ってください、お兄ちゃんここから出せないので」
「はーい…」
「くっ、雷霆の槍!」
「青龍さん!」
レイミさんが武器を呼び出し、お師匠さまの結界を破ろうとしたところで妹君が青龍たんでそれを防いだでござる。
「妹君?! 青龍たん?!」
「だからバレそうだって言ったじゃないですか…。あなたが留守の間に私達正座させられて尋問されたんですから…」
そっか…。ここまでバレてバラしちゃったんじゃ、もう何も隠すことなんてないでござるな。
「父上、母上、妹君。今まで黙ってて申し訳ないでござる」
大きく深呼吸して三人に正面から向かい合った。
「よく見てて欲しいでござる。吾が輩の、変身」
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