第116話 パンツ!
前回。
リエッセさんの突然の『皇女やめるわ』宣言から一転、オナホとローションを握りしめたままパンツ一丁で静岡県熱海市へと拉致られましたとさ。なに言ってるか分からない? 大丈夫、吾が輩もなに言ってるか分からないでござる。
「取り敢えずヘシン!」
熱海市と言ってもそう言われただけで実際熱海市のどこなのかは分からないでござる。熱海だって全然行ったことないし、さらに山奥とかここはどこ? 私は誰? 状態でござる。
「どうしよ、これ」
ヘシン! すればパンツ一丁はどうにかなるけどオナホとローションはどうにもならないでござる。
「こんなものはッ!」
「あ」
「そおいッ!」
「だー! お気に入りなのに!」
一瞬のうちに奪い取られ空の彼方へと投げ飛ばされてしまったでござる。
「あんなイヤらしいものフケツよフケツ!」
「なぁーにがフケツじゃー! 童貞ナメんなよ!」
「いいからなずなお姉ちゃんを出しなさい!」
「知るかぁ! あの人もう勝手に出たり消えたりしてるから吾が輩が出す出さないじゃないでござる。今もどこでなにしてんだか」
「えぇー…」
「呼んだ?」
「「うわっ、出た!」」
「傷付くなあ」
まさに呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃーん! いや飛び出てはないでござるな。パッと現れるあたり幽霊らしいと言えば幽霊らしい。いやそもそもこの人は幽霊なのかな?
「なんだっけ? 私の体が元に戻ってるから見に来て欲しいんだっけ?」
「うん。ここは私の実家の持ち物になってる山でね、この奥の洞窟にお姉ちゃんの体を隠してるの」
「へー、山が持ち物って本当にいるんでござるな。どおりで誰もいないワケだ」
「私の体を隠す理由は?」
「狙われてるから」
「誰にでござる?」
「サード・アイ。アイツらついにオリジナルの方の世界とつるむようになってこの世界の遺産を狙うようになったの。正確にはそれが秘める絶大な力ね」
うへえ。ロクでもないでござるなあの犯罪組織。リーマン魔術師さんと会って実は案外良い組織なんじゃないかと思ったけどそんなことはなかったでござる。
「行きながら話そ。洞窟で皆が待ってる」
ふっと変身を解いて歩き出すトモミン。それに続いて歩く。辺りは木々のトンネルで日差しが届かず、地面にはコケが生えている。皆が待ってるとは誰のことでござろう。
「お姉ちゃんはサード・アイって知らないよね?」
「だいたいなら知ってるよ。ござるくんに宿って意識が戻ってからは視界や記憶を共有できたから」
「ねえトモミン、ここ獣道じゃないでござる? ここひょっとして熊野古道みたいにちゃんとした道の上にコケが生えているのでは?」
「話の腰折らないでよ。そうよ、ここは昔の天乃宮家があった場所。その最奥に洞窟があって祠が祀られているの」
山の地肌の感触にしてはエラい固いと思ったらやはり。きっとこの道もコケを剥がしたら四角い石が並べられた参道のようになっているでござる。
「話を戻すね。サード・アイはどこから嗅ぎ付けたのか、最近熱海の周りもうろうろするようになったの。伝説の遺産【天照の朱玉】の手掛かりを探して」
「そうなんだ。つまり私も狙われてるけどござるくんも狙われているってことになるんだ」
ん?
「あれ、ひょっとして吾が輩命を狙われてるでござる?」
「気が付くのおっそ。はあ…、こんなのが次期当主だなんて…」
「え? なんの話でござる?」
「あなたが天乃宮家を継ぐのよ」
「すいませんもう一回」
「あ・な・たが、私の家を継ぐの」
…なんて?
いやはや最近はどうにも話のスケールが大きくていまいちピンと来ないでござる。
「吾が輩はあくまでも無職。絶対に働かないでござる」
「あのね、あなたの体にある【天照の朱玉】は本来私が取り込む予定だったんだから。正統継承者である私が。けどあなたが食べちゃったんだからあなたが継ぐしかないじゃない」
「理不尽でござる。吾が輩たまたま見つけちゃっただけですしおすし」
「というかわたしって見つかってなかったんだよね? 今まではどうしてたの?」
「もう一つ、模造品の勾玉作ってそれに皆の力を入れて代わりということにしてたの」
なるほどなるほど。青龍たんと似たようなケースでござるな。
「ところで皆の力をってどういうことでござる?」
「これは内緒の話なんだけど、天乃宮家に生まれる者は皆なんかしらの超能力者なの」
古代から伝わる家系は伊達じゃないでござるね。コイツラ人間じゃねえ。
「ほら、見えてきた」
熱海の山奥(らしい)で隠しているというなずなたんの本体の様子を見に来たでござる。見るのは去年の秋頃以来かな。崩落してしまった遺跡からなんとか出してもらったという石棺。
「ホントにミイラが元通りになるなんてことあり得るでござるか」
「私だって未だに信じられないけど、でも確かに体はみるみるうちに回復して温もりもあるのよ。傍から見ても眠っているようにしか見えないし…」
コケが敷きつまった獣道を行くと拓かれた場所に出て、正面の岩肌になんの飾りもなくただぽっかりと穴が開いていた。穴の前には何人か人がいるでござる。
「お待ちしておりました」
腰の曲がった老人が一歩前に出てきて挨拶する。つられて会釈で応える。しわくちゃの顔に穏やかな表情…。正直こういう人が一番なに考えてるか分からないでござる。
「お待たせおじいちゃん」
なんだこのマスターヨーダみたいなジジイ。おじいちゃんでござるか。
「紹介するね。左からおじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、お母さん、お兄ちゃん」
「改めまして、祖父です。そちらの鎧のお方は八人目のですな。そして、あなたが初代巫女・なずな様でいらっしゃいますか?」
「はい、そうです」
「イカにもタコにも八人目でござる」
「ちょっと、皆の前でくらい普通に喋ってよ。真面目な話をしに来てるんだから」
「いいって朋美。初めまして、兄の
兄と名乗る二枚目の優男がトモミンを制した。チッ、イケメン死ね。
「マッハババアの時のでござるな」
「誠にGJでした。僕はファングさんのファンでもあるんです。大変ありがとうございました」
「なるほど、なんとなく察したでござる」
前言撤回、このお兄さんはいい人。
「わしゃあ鼻血が止まらんかったわい。ワシらもロイヤルセブンの皆さんの素性は一通り聞いてはおるんです。ファングさんは気の強い娘だそうで、黒か紫じゃとばっかりおいでででで!」
「爺さんや、ブチ殺すぞボケ老人。朋子さん朋紀さん、松明を」
「初めまして、朋美の母の
「なずな様、羽織る物をお持ちしました」
おじいちゃんおもいっきりつねられたけど大丈夫でござるか。朋紀さんの案内で洞窟の中に入る。もう夏だというのにフルアーマーでも鳥肌が立ちそうなくらいひんやりしているでござる。
(こりゃなずなたんみたいな巫女装束じゃ風邪引くでござる。だから上着を用意していたと。よく見ればおじいちゃん達皆厚着でござる)
「こちらが遺跡にあった石棺です」
「おお、確かにあの時の石棺。しかし不気味でござる、傷一つ無いとは」
洞窟の最奥、暗闇の中に安置されている石棺。まるで最初からここにあったかのように静かに鎮座している。
「開けますね」
「うおっ」
「凄い…わたしだ…」
驚き隠せず思わず声が漏れた。ゴリゴリと重たい石の蓋がどけられると、中には今目の前にいるなずなたんとまったく同じ姿をした人が眠っていた。
(おお…、なんという生乳……! なずなたんの生のおっぱいが目の前に…! 早く揉みたいでござる…! 一刻も早く…!)
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