第94話 燃え尽きるほどニートォ!ひきこもるぞラードォ!

最初からそのつもりだったのか。喋ってはいけないであろう裏を明かし、利用されていると注意する魔術師さん。ロイヤルセブンの過剰なスキンシップに騙されているのではと感じ始めた吾が輩。


「まいっか」


「なん…だと…?」


予想外の反応に狼狽えている。確かに普通なら利用されたり騙されたりしたら憤慨するでだろう。でも良い思いさせてくれてるから吾が輩はそうでもないでござる。おっぱい! おっぱい!天然温泉のお風呂入りに行けば常に混浴だしお触りし放題だし。


「イマジネーションリアルは【IR】と略すでござる? いいんじゃない?イマジネーション・リンクなら【IL】かな?理想の自分になれるって素晴らしいことだと思うでござる」


「キミはそれでいいのか?」


「いいもなにも、フルダイブでゲームできるなら早く出して欲しいでござる。お金ならあるから」


「いや、そうではなくてだな…」


眉間を押さえ頭痛が痛いご様子。半ば呆れている。それに、それでいいのかも何も引き返せないですしおすし。


「間違っている!間違っているぞ!頭痛が痛いは間違っている!」


「繰り返すことによって痛いを強調してるからいいんでござる」


「なんなのだキミは…」


「大丈夫でござるよ」


目をまっすぐ見て、はっきりと言い放つ。


「もし彼女たちが敵として前に立つというのならば、そのときは倒すまででござる」


「それが世界を滅ぼす結果になっても、か?」


「モチのロンでござる。破滅するつもりもないでござる」


「…余計なお世話だったか」


「いえいえ、そんなことはないでござる。お話しできてよかったでござるよ」


「私もいい退屈しのぎになった」


どうにもレイミさんは秘密やら隠し事があって食えない。ちょっとあの人は本当に信用できないでござる。普段が普段軽いだけに。


「じゃあこれお見舞いに」


「なんだこれは」


持ってきていたボストンバッグから入院中これ以上退屈しないようにと見舞いの品を出した。


「な○は、ク○ガ、ア○ト、ファ○ズのTVシリーズと劇場版のBD。ク○ガは劇場版ないけど。あとノートPCと天使ちゃんマジ天使でござる」


「ふざけているのかキミは」


「吾が輩はいつでも大真面目でござる」


病院を後にし、帰宅する。今日は珍しく呼び出しがない。それだけ平和ということですなあ。平和万歳。たとえカッコよく変身して戦えるようになったとしても吾輩は平和主義者でござるからして、拳を振らずに済むことはこれ以上ない喜びでござる。


「ただいまでござる」


「おかえりー。お昼は?」


「外で済ませたでござる。母上は?」


「あなたが食べたかどうかなんて聞いてないわよ。早く作ってって言ってるの!」


「これはひどい」


相変わらずの母上。一体父上殿はこんなダメ人間のどこが良くて結婚したでござろう。外見?いやいや、美人なら他にも沢山いるでござる。美人でなくてもちゃんと家事が出来て子どもの面倒が見ることだって出来る人は沢山いるでござる。というかもうとっくにお昼なんて時間じゃないのに食べてないって、この人、人がなんにもしなきゃ何もできないでござるか?


(トイレ…)


夜中に尿意で目を覚ます。ベッドから降りると突然目の前に青い透け透け巫女痴女が現れた。


「でェッッッッ…!」


「大声はやめなさい、迷惑になるわよぅ」


「すいません夜這いなら間に合ってるでござる。って、透けてない…」


「夜這いじゃありません。あなたが透けてるとうるさいからですよ。ねえちょっと、露骨に残念そうにしないでもらえますか?」


なんということだろう。これではただの青いだけの巫女さんでござる。それならいっそのこと元の龍に戻ればいいのに…。


「私もいるよ?」


「おお、正統派」


青龍たんの後ろからヒョコっと顔を出したのはハワイで会った幽霊な正統派普通の巫女さん。なんと今宵は二人もか。一度に二人も女性が夜這いに来るとは吾が輩もいよいよモテモテでござるなあ。


「ま、取り敢えずちょっと失礼」


「待って、どこ行くんですか?話があるから出てきたんですよ」


「ちょっ、トイレくらい行かせて欲しいでござる。…まさか青龍たんはそういうプレイがお好き?」


「やだ、あなたそうだったの?ド変態」


「違います!」


激しい反抗にあったものの、トイレから帰ってきてベッドに腰掛ける。促して中断された話とやらを再開する。


「で、話ってなんでござるか?」


深夜、どんな生き物も静まり返る丑三つ時に部屋を明るくして離れて見てね!突然の夜這いに放尿プレイを誘う青い巫女。ドン引きする正統派の赤い巫女。


「↑私は放尿プレイなんて誘ってません。あなたは戦士としての自覚が足りません。自分が利用されているだろうことを『まいっか』とはなんですか。軽率です、軽蔑します。それでもあなたは剣士ですか?」


「違います。悪いことさせられてるワケでもないし、流されてもいいかなって。世界がどうのこうのは興味ないでござる。そもそも吾が輩自ら戦士と名乗ったことはないし」


「でもあなたは私を食べちゃったから戦士だよ?」


「そういえばまだお名前聞いてないでござる」


「なずなと言います。不束者ですがどうかよろしくお願いします」


なずなと名乗ったこの正統派の、いわゆる普通の巫女の格好をした少女は、その顔にやはり見覚えというか、面影というか、そんな感じがするでござる。色白で透き通る肌にこれでもかと黒く自然に流れる長い髪、整った目鼻立ちに慎ましいおっぱい。


「これはこれは丁寧にこちらこそよろしくお願いします。失礼ですが、なずなたんの正体も聞いていいでござる?」


「私?私はね、天と地、未来と過去の刻を結ぶ巫女なの。なんであそこにいたかっていうと、力を授かって人と神様を繋ぐための神様へのお供え物かな。あの祭壇にあったのは石ではなくて勾玉。私の魂を形にした、神の力の器」


「おお、人をお供え物に……。伝承や神話でそういう話は聞いたことがあるでござる。まさか本当にやっていたとは。つまり吾が輩はあなたの魂ごとを神様の力食べてしまったと」


神様の力と同化してしまったということは吾が輩は既に半神半人ということなのか。こりゃーますます人の道から外れていくでござるね。


「私なんて人から龍になった巫女ですから、えっへん!」


「「へー、そう」」


「興味無さそうにするのやめてくれませんか?傷付きます。だいたいあなたは私達という絶大な力を得て何故それほどまでにやる気がないんですか?やろうと思えば彼女達ロイヤルセブンどころか、その気になれば世界を掌握することだって不可能ではないのに」


「燃え尽きるほどニートォ!!ひきこもるぞラードォ!!!」


「もうやだこの主」


顔を両手でふさぎしくしくと泣き始める青龍たん。うん、まあ人生長いしそんなこともあるでござるよ。青龍たんの方がめっちゃ長生きで歳上だと思うけど。


「私はずっとこの子のそばにいるから。というか居ざるをえないけど」


「あ、すいまそん……」


「ううん、いいの。ベッド座っていい?」


「どーぞどーぞ。きれいな生足でござるね」


「触ってみる?」


「おお…、傷一つない玉のような美少女のスベスベなふくらはぎ…」


立っていることに疲れたのか、吾が輩の隣にぽすんと座ったなずなさん。誘われて、すかさず足下に跪き袴を翻し脚を撫で上げる吾が輩。


「あなたは騙されたりして怒らないんですか?!利用されたりして怒らないんですか??!はらわた煮えくり返る思いになったりしないんですか?!」


「煮えたぎる豚汁ならすぐに出来るでござるが?」


「チクショウ!!!!」


長く激しい夫婦漫才にぜいぜいと肩で呼吸をする。やがて佇まい整えるといつもの調子に戻ったでござる。そういえば、なずなたんはハワイのときと違って透けてない、実体があってお触りできるでござるのな。


「真面目な話をしようと思った私が愚かでした」


「分かってくれたでござるか」


「分かりたくないですし、女の子の脚を触りながら真面目な顔しても説得力ないですから。私はそろそろ戻ります。ああ、最後に一つ。最近妙なのがうろうろしてますから気を付けてください」


謎の忠告をして足からすうっと消えていく青龍たん。足から消えるとかマジ幽霊。


「ねえねえござるくん、今日はベッドで寝ていい?抱きついていい?」


「ええ、どーぞどーぞ」


「やった。んー、キミはホントにふかふかね。お義母さんや妹ちゃんが抱きついてるの見てちょっとやってみたくなっちゃって」


「お義母さん?そういうなずなさんも柔らかくて良い匂いでござる」


「えへへ、だって女の子だもーん」


「転職しようかな……」


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