第37話 ✕ホワイトドレス○ホワイトドS
「ね? ござるくん?」
なんだろう、このデシャヴ。最近もこんなことがあったようななかったような。え?なんでこの人吾が輩の口調知ってるの?
「あの、すいません、なんでソレのこと知ってるんでござる?」
「シューティングスターがござるくんって呼んでみたら面白いぞって言うから、どんな反応するのかな~って」
「いまさらなんですがもう一つ。日本語が大変お上手でいらっしゃるんでござる」
物凄くいまさらだがこの人は日本生まれでも日本育ちでもない。完全なる白人で東欧の人だ。しかしさっきからずっと日本語で喋っている。
「まあね。ちょっとやそっとならすぐに覚えられるし、実は内緒で何度も日本には来てるの」
「ええ、ああ、そうですか……」
日本のインタビューには必ず通訳さんがいるのはわざとなんですね…。喋れないフリしてすっとぼけていると…。
「じゃ、今日はよろしく頼むわよ?お侍さん♪」
この人もちょっと食えないでござる。つまり普段はなんにも知らないフリしてすっとぼけてるんですねファック!あれですか、日本語でニホンゴワカリマセンとか言っちゃうあれですか。
『あーあー、マイクテスマイクテス。聞こえてるな?今のところそれらしい不審者は発見できていない。アタシのセンサーにも引っ掛からない。気を付けろよ』
ライヴ開始5分後。リエッセさん能力に引っ掛からないとなると恐らくアンチマジカルが使用されているでござる。ノーベル物理学賞が早速盗まれている可能性が微レ存。M2なら吾が輩達の能力から逃れることなど造作もないでござろう。
『聞こえるござるくん?あなたはそのまま席から直接の襲撃に備えていて。敵が何人いてどんな手段を使ってくるのか分からない以上は水際で止めるしかないわ』
すいません、それミスったら一発アウトのパティーンですよね。
『こちらローズ。ステージ上の照明で変質者を一人確保。ほら、もっと踏んで欲しいならマイクに向かって詳しく、大きな声で』
『ハァハァ…人数は9人、スナイパーと遊撃に別れて行動している…。ああっ、ヒールで!そこはヒールでお願いします!』
『キモい』
『ああん! もっと! もっと罵倒して!』
………………せっかく世界初お披露目の新曲を生で聴いてるのに、耳元で男がハァハァしてる声なんて聞きたくなかったでござる。
『あと8人ね。スナイパーってことは上階席かセットか、それとも屋根か』
『こちらヘヴンズ・ミス。屋根裏で一匹クソ野郎を叩き潰した』
あと7人!
『こちらナリア。こっちはヘヴンズさんの反対側で二人いました』
あと5人!
『こちらシューティングスター。サーモカメラ着けたら普通にいたわ、こっちは客席に1人』
あと4人!
『こちらファントム。次の曲のセットの中に2人』
あと2人!
『こちらターミガン。奈落の中で1人黒焦げにしてあげたわ。雷属性ってこういうとき手加減しないといけないから不便ねえ』
あと1人!
『駄目だな……、もうサーモでも見つからねえな。忍者かコイツらは』
驚く爆音の中でペンライトを振りまくる。ライヴは今最高潮だ。突如始まった新曲【NO.NO.No.】を先頭に、様々な曲のシオン・アスターの歌声がアリーナを切り裂く。繰り返されるアンコールの訴えに再び新曲が掛かる。
『ワタシの声に酔いしれなさいっ!!!』
『死ね!』
『ヘシン!!』
ほんの一瞬の出来事だった。剣と剣がぶつかり火花が散る。背後の巨大なスクリーンに映し出されていたシオンの表情が不快に歪む。間に合って良かったでござる。
「キャ!」
「貴様!また貴様か!我々の邪魔をしやがって!八人目ぇ!」
「知ったことかあ!あんた達が始めたことだろ!!!」
ステージの脇から飛び出た影はサード・アイの構成員最後の一人。まさか本当に直接襲うとは!
「お前さえいなければぁ!」
「おおおおおお!」
二度、三度、四度。攻め、受け、つば迫り合い。
「カアアアアッ!!!」
「ぐあぁあ!」
鞘でステージ端までブッ飛ばし、後ろ手に縛り上げる。流石にこの大観衆の前でバッサリ斬り捨てることはできないでござる。しかし、こうなってしまった以上はライヴはもうお開きに…。
「申し訳無いけどライブは中止に……」
「ザケんじゃねーわよどけ!!!!」
ドゴッ
「ぐええ?!!!」
「今最高に一番盛り上がってるのよ?今やめるワケないでしょう!ねえみんな!!!」
『ウオオオオオオオオ!!!!』
なぬー?!
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