第20話 送り迎えD

「あーたた」


「なんだ、まだ痛むのか?」


「桶の金具がクリティカルヒットしたでござ

る」


輸送機の中、おでこをさする。


「まあ切れてないから大丈夫だろ。話を続けるぞ」


「どうぞどうぞ」


外の光は一筋も入らない、密閉された格納庫の状態でブリーフィングをしている。灯りはなく、記録するものもなく、地図もない。全ては闇の中に葬り去るための、闇の中のミッション。


「もうすぐ協力者領空になる。表向きスクランブル発進した戦闘機がいるが、案内役だから気にするな。お前は降下後、誘導に従い南下し武装組織の支配地域に侵入。目標は小型核ミサイルの奪取。場所はさっき伝えた通りだ」


「上手くいかない場合、可能な限り敵武装組織に被害を出すこと。撤退のサインは爆炎を上げること」


「よし、これを渡しておこう。武蔵野グループで開発してる通信機兼翻訳機の試作品だ。どこの国の言葉でも普通に会話できる。横にあるイヤーカップの青い上半分が通信、下の赤い半分が翻訳だ。触れば切り替わる。同時の場合は同時押しだ。通信についてはあくまでも念のためだから、本当に用がある時以外は使うなよ?」


「イエスマム」


通信機を左耳に掛ける。


「お二方、領空に入ります」


「おう。頃合いだ、始めよう」


「「変、身!」」


気合い十分。暗闇に浮かぶ発光。徐々に開く地獄への扉。要は思いっきり暴れてこいって話でござる。直接殺害することはなくとも、多少のことは致し方ないでござる。わざとらしい茶番劇を演じ、吾が輩をおびき出したのだ。その報いは受けてもらおう。


「クソバカ共に思い知らせてやろうぜ。アタシらに売った喧嘩がどれだけでけえ間違いだったかってのをよぉー!」


どこからか出した、対物キャノンに鉛の塊を装填するシューティングスター。


「さあ、鉛弾の嵐を始めるぜ!!」


バキバキと指を鳴らす。


「降下!」


どこの所属か、どこの国の軍人かも分からない兵士の合図で闇の空に身を投げる。すぐに戦闘機が迎えに来た。彼らが敬礼するから答礼する。南下後、戦闘機が離れていく。離れる直前、サムズアップしていった。


(戦闘機のパイロットは皆かっこいいでござる。少し巡り合わせが違えば、吾が輩にもあんな人生があったんかなー)


対空砲火の中でそんなことを考えていた。おびき出しただけあって、敵は準備がいい。なんでも飛んでくる。しかし鎧にかすり傷つけることはない。なぜならば、テンションMAXだからだ。今なら核ミサイルを食らっても平静と立っていられるだろう。


「身も心も恐怖で染め上げて、この先の人生毎晩お漏らしするようにしてあげるでござる。吾が輩、平和主義者だから殺しはしないお。殺しは、ね」


四時間後、破壊の限りを尽くし地上を地獄の楽園とした。


『オラオラオラ! 逃げんなよコラァ! 逃げるとケツの穴が増えるぞ! 逃げないイイコチャンには耳の穴増やしてあげましょうねええええええええええ!』


なんか変なの聞こえたでござる。気のせい、きっと気のせい。きっと凶悪な顔してるでござる。だって姉上がそうだから。


「じゃあ、改めてミサイルの場所を聞こうか? どこに隠した?」


そこにあるとされた小型核ミサイルは既に無かった。当初この地下施設に保管されているとのことだったが、いくら探しても壊しても何も出てこなかったのだ。今、この地下施設のリーダーらしき白衣の男の胸ぐらを掴んでいる。


「俺があなたを投げ飛ばせば、あなたは天に召されるでしょう。でもそれじゃ俺が困るんです。ミサイルはどこにあるのか教えてください」


「もう返したわバーカ! パクったはいいけどあんなもんウチじゃ扱えないわ! バーカ!バーカ!」


……………………………………、このクソジジイ舐めとんのか。


「お前の命も天に返してやろうか? ああ?」


「ひいいいい!」


通信のみONにし、シューティングスターさんに連絡する。


「もしもーし」


『よう、どうした?』


「ミサイルはありませんでした。扱えないから返品したとのこと」


『行き違いかよ。なんだよ骨折り損じゃねーか。それは誰に聞いた?』


「地下施設の一番偉そうな人」


『連れてこい、顔の形変えてやんなきゃ気が済まねえ』


「イエスマム」


かくして一方的なカタストロフィは終わった。


かこーん


「どはあぁー…、疲れたでござる……」


「おつかれさま」


サロンに戻ってきて時差ボケを治し、檜木の風呂に浸かる。リエッセさんはさっとシャワーを浴びてすぐにOL仕事へ戻っていった。湯船に浮かぶ、出迎えてくれたツツマシイ二つのメロンを眺めながらやはり平和が一番だなと痛感する。


「う~ん、マンダム」


「なにが『う~ん、マンダム』よこの変態ッ! 胸ばっか見ないでよ! どうせあなたリエッセさんみたいな巨乳がいいんでしょ!どうせ私は大きくないわよ!どうせD止まりよ! それがなにか問題が?!」


「いえいえDがつつましいなどとは微塵にも思っておりません、形がいいから美乳でごさるね(ニッコリ 透け透け巫女美乳とかちょっと見てみた「やかましいッ!!!」」


バコーンッ!

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