第p章 ―― 1428571

動揺 (ii) ――― ~

 真っ昼間の高校のグラウンドに、不穏な生き物がいた。

 丸っこい頭部、体表に走る縞模様、剣呑な面構えといかめしい太いヒゲ。その尾を踏むことはきわめて危険な行為にたとえられ、毛皮は人が名声を残すことと比較されるほどにりっぱな、アジアを中心に分布する、ネコ科最大の動物、虎。

 次なる解決クリアを要求される課題モンスターの姿だった。


 大きさはこれまでのモンスターのような異常なサイズではなく、一般に知られる本種のそれではある。が、数十メートルの距離を置いた高校生の男女に恐怖を覚えさせるには必要十分だった。

 色だけが、例によって石像のようなモノクロームで、縦縞はオレンジがかった黄色と黒に映えることを許さない。いっそ、その色あいのとおり石化状態であってくれればいいのに、と三宅みやけまどかは、ときどき遊ぶゲームアプリのことを思った。

 午角力は、震えあがりながらも内心で、牛に続いて虎とか関西の球団かよ、と妙に冷静な感想を抱いていた。

 そして、このグラウンドフィールド上で誰よりも理不尽な思いを、先のステージでの力と同じ憤りを覚えているのは、さわたいが

 ――これ、絶対にだろ。

 こんなことで生き死にを左右されてはたまらない。


 5階の窓から校庭フィールドを見下ろす生徒は、次はどの動物が現れるのだ、自分の名前に動物名は含まれていないだろうかと不安をつのらせる。

 もうすでにこうしてプレイヤーに選ばれている天戸あまとようは、ひつじが出てきたら僕はまた選ばれるのか、とめまいがしそうだった。

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