サイセン (v)

「はあ?」


 脈絡のない質問に力は怪訝な声をあげる。この状況でクラス委員はなにを言っているのだ。


「家の方角。どっち?」

「それがなんだよっ」

「だいじなことなの、答えて!」


 わけがわからなかったが、あまりに真剣な様子に気圧されて「西……だけど」と困惑しつつ答えた。


「西ね。西なんだ……、午の方角だから南に当たると思ったんだけど……」

「えぇ……?」

「あと誕生日はいつ?」

「はあ?」

「何年何月?」

「なんで聞くんだよ、そんなこと。しかもこんなときに」

「今だから聞いてるのよ。だいじなことなの、答えて」


 力は納得いかなかったが、すでに答えてしまった手前、不承不承伝える。「20年、6月27日」

「20年6月27日ね」環はうつむき加減に思考する。「午は五行では火……、時刻は正午を表すように昼の11時から1時……時間帯は該当する……」

「あー……、三郎丸さん?」

「今は11月だから午の月じゃない……今年の干支は……」

「なあ、いったいなにを言ってんだ?」

「黙っててっ。今、考えてるから」


 とまどう力を押しとどめるように手の平を差し出し、環は「九星気学では……」「四柱推命だと……」「紫微斗数の場合……」とぶつぶつつぶやく。もはや力にはなにがなにやらさっぱりだった。

 ただ、その挙動と発言から、ことだけは確かだった。


「だめだ、しろうとに診断なんてできない。ちゃんとした霊媒師せんせいてもらわないと」

「お、おい!」


 環の次の行動に力はぎょっとする。

 携帯端末を操作し電話帳をひらくと、『お母さん』『お父さん』『v SyainingsRedys vさん』『天之霊宮 崇神先生(事務所)』と並んでいる連絡先のうち、ひときわ怪しげな登録名をためらいなく押した。

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