恋環 (xiii)
三郎丸環は、自身に対して問いかける。
私は、午角力という男の子を意識している? なぜ? くだけた会話でやりとりをできたから?
そんなの、ほんの少しではないか。ほらここ。この『うまかど君って意外と難しい言葉知ってるんだね』という私らしからぬ失言からの、数回の(これまた私とは思えない、男子との親密な)やりとり。友達のように話したのはここだけだ。
たった数回の親しげな会話(というかメッセージ)で特別な感情を持ったとしたのなら、私はどれだけ男子に免疫がないのだという話になる。まるで、男性がひとりもいない世界からやってきた女性が、初めて男の人を目にしたかのような過剰反応ではないか。バカバカしい。私はそんなファンタジーみたいな夢見る乙女ではない。
正直なところ、環は男子への免疫がほとんどなかった。
クラス委員や生徒会役員など、立場上の必要があれば(校内で目にあまる生徒に
が、業務や立場(や制裁)といった理由づけがないと、どうも会話が弾まない。女子同士であれば、同性の気やすさがあってまだあたりさわりのない話はできる。
これが男子となると、異性が相手だ、と妙にかまえてしまっていけない。
気があると思われていないか、向こうがこちらに気があったりしないだろうか、かわいげのない女子だと見られていないだろうか、逆に色目をつかわれていないか、突然、告白を受けたりはしないだろうか、あるいは胸もとなどおかしなところに視線を向けられていないか――
そんなあれこれが頭のなかでぐるぐると渦巻き、そのこと自体も自意識過剰に感じられて、考えないようにするもうまくいかず、
認めたくはないが、やはり私は、女性しかいない異世界から、神様の気まぐれでこちらに迷い込んでしまった夢見る乙女なのだろうか。
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