恋環 (iii)
またしても環は、自身の言葉に驚く。仰天したとさえいっていい。
意識した? 意識をした? 私は彼を意識した?
それはつまり、彼を、午角力を、異性として、という意味あいでのこと?
どうして? なぜ? だって私は、午角くんとろくに話したこともなかったのに。足が速いというぐらいで彼のことをよく知らなかったというのに。それがなぜ急に――
3年D組の教室内は各自がめいめいにすごしていた。
仲のいい者同士や席の隣り同士で席につき、あるいは立ち話で考えを交わし、気持ちを共有し、窓の外を見やり、もしくは力や一八、ほかあぶれ者3人組のようにひとり自席に座す。
あたかも始業前や授業のあいまのひとときのようにも見えるが、それぞれの心中は穏やかではなかった。
いつもどおりに登校し、普段と変わらない一日が始まり、日常を送り、そして下校するはずだった。ルーチンは明日も、あさっても、しあさってもその先も同じように、学年一の没個性なD組の日々は来年春の卒業の日まで繰り返されるのだと。誰もが漠然とそう考えていた。今朝までは。
今やあたりまえの日常は180度、完全に覆った。
誰ひとり、この教室を自由に出入りすることを許されず、
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そこここでもちきりなのは、この異常事態に関するあらゆるすべて。
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