ファクトリアル (ii) ――― !
女子の複数の悲鳴が、教室とグラウンドに響いた。
眼下の転倒したクラスメイトに、数トンか数十トンかしれない灰色の魔獣がのしかかる。
ぎゅっと目をつぶり、手で顔を覆い、硬直して凝視し、窓枠を無意識に握った。
ザッ。
そんな光景を今まで見たことのある者があっただろうか。
あきれるほど異常に長い刃が、あきれかえるほど大きな弧を描いて横ざまに斬りつけ、重たげな獣をまるでビーチボールかなにかのように弾き飛ばす瞬間を。
20mだか30mだか、ごく短時間だけ体重が消失したかのようにすっ飛んだミナスは、鈍重な地響きをたてて転げる。軽いのか重たいのか、見る者の感覚を混乱させるでたらめな挙動だった。
一八の視野から、暗雲のようなモノトーンが瞬く間に払われ晴れわたる。
その向こうに立ちつくす男子生徒の姿。
「ギューカク……」
一八の脳内ではすっかり裏切り者の認定を受けている彼は、教室にいて、サングラス姿でビーチチェアにふんぞり返り、トロピカルドリンクにさしたストローをくわえ、一八を指さしげらげら腹を抱えているはずだった。
そうだ。あいつだけが教室に戻れるような都合のいいバグやアイテムなんてあるわけがない。
「立てっ、カズ! ドリブルだっ」
力は一八に呼びかけ、ミナスに向く。
少し呆然としていた一八は「お、おう!」と我を取り戻し起き上がった。
人間のなかでは大柄な
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