第p章 ―― 141

ルール (ii) ――― r ∪ 1e

 3年D組は騒然としていた。

 5階の窓から見えた不穏当な光景は、その時点ではまだ、どこか絵空ごとのようにとらえていた部分があった。モンスターにやられてはいるようだが、「ゲーム」上の演出であり、戦いが終わればリセットされ、なにごともなかったように復活するのだろうと。どのような仕組みかはわからないが、教師が生徒を危険な目にあわせるはずがないと。


 しかし、教室に戻ってきた征従、真砂鉉、天祀の3人が語る真に迫った恐怖と、枡田が消滅のまぎわに彼らに託した言葉――隔絶された異空間内にあって、帰るにはゲームをクリアしなくてはならない――に異常さを覚えずにはいられなかった。

 どうも自分たちはそうとうまずい事態に直面しているぞと。


「とにかく職員室へ言いに行こう」


 瓜子うりこ歩弓あゆみがいつもの明るさを欠いた面持ちで言うと、私も行く、あたしも、と椢方くぬがた四季しき左木さき円月えるななど数人の女子が続く。

 連れだって教室を出ようとする彼女たちに誰かが言った。「やめたほうがいいと思う」


 クラスじゅうの目が三郎丸さぶろうまるたまきに集まった。


「なんでよ?」「人、死んでんだぞ」「こんなわけわかんないこと、早く知らせないと」


 いぶかしげに反発するクラスメイトに、別の男子生徒が「副委員長が正しい」と言った。


「どういうことだよ、委員長」


 クラス委員長の佐々田さざだ九十九つくもに今度は視線が寄せられる。

 常にどこか超然とした余裕のふるまいでいる彼が見せる、めずらしく硬い表情は、嫌な予感をクラスメイトに催させた。


「三郎丸さん、君もあれ・・を確認したんだね?」


 九十九に問われて環は無言でうなずく。あれとはなんだろう、といぶかしむ一同に、彼女は携帯端末の画面を見せ「みんな、アプリをよく見た?」と尋ねた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る