犠牲者 (v)
『蚊取り線香を73秒で燃えつきさせよ』
黒板の問題文を聞いただけではまったく意味がわからなかったが、話によると、大量の蚊取り線香とそれを燃すためいくつかの皿、そしてライターが教卓に出現したそうだ。つまりそれらを用いてやってみせよと。
何十人が次から次へと焚くものだから教室じゅうが煙ってたいへんなことになっているらしい。5階の窓を見ると、なんとなく教室内が白っぽく感じられた。
「73秒て。蚊取り線香なんてどうやったら1分ちょいで燃えるんだよ」
征従は素振りをしながら疑問を呈する。タウはまだ動きを見せず、怠りなく征従たちをとらえていた。
「出てきた蚊取り線香は、燃えるのが超速くて1分半ぐらいで終わる」「えらいはえーな。でも、1分半かかるんじゃ無理くね?」「そこなんだよ。折って短くしたらいいんじゃね、って話になって、今、みんなでちょっとずつ微調整してんだけど、これが全然」「適当に当たりつけて、1cmとか数mmずつ削ってきゃいいんじゃねーの?」「大きさがばらばらなんだよ」「は?」「全部、別々のメーカーのやつかよっていうぐらいサイズが違くて、巻いてる数も一定じゃないから調整がめちゃムズい」「なんだそりゃ」
マスティーのやりそうないやらしい手口だな、と征従は声を潜めて教師の顔を盗み見た。枡田はきょとんとした顔で愛想笑いを見せた。
「唯一の手がかりは、燃え終わるまでの時間はどれもぴったり同じってとこ。時間計ったらだいたい1分40秒っぽい。たぶん100秒」
「それさ、あれじゃねーの? 円の長さがどーのこーの計算して正しい長さを割り出す的な」意外と俺も冴えてるだろう、と征従は内心、自賛し、友人からの「おまえ天才だな!」ぐらいのほめ言葉も期待した。
が、返ってきたのは「あーそれ、
「
リケジョの小分
「そもそも誰も
ああー、と思い出したように征従はモンスターを見た。「んじゃ、いったん切るわ」
切断ボタンを押して、征従は端末を尻ポケットに突っ込んだ。ぶんっ、と剣を大きく振りする。タウを見すえながら、ほかの2人に「ヒントがいるってよ」と言った。「りょーかい」「狩りの開始といきますか」
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